目の病気
最終更新日:2025.03.03

内斜視とは?原因や治し方、予防方法を解説

この記事の監修者

原 修哉

原眼科クリニック 院長

内斜視とは?原因や治し方、予防方法を解説

目次

内斜視による「視線が合わない」「左右の目がまっすぐ向いていない」といった症状は、見た目として気になることもあるでしょう。それだけでなく、ものが二重に見えたり、立体的にものを見ることができなくなったりなど視機能にも影響します。
できるだけ早期に発見し、治療につなげることが重要です。この記事では、内斜視の原因や種類、治療法、予防法についてご紹介します。内斜視を疑っている方、内斜視がよくなるのか不安な方は、ぜひ参考にしてください。

内斜視とは何?

内斜視イメージ図

内斜視は、左右どちらかの目が内側に寄った状態を指します。片方が「寄り目」になったような状態です。生まれつきの場合(先天性)と、後から発症する場合(後天性)があり、後天性の内斜視ではものが横に二重に見えることがあります。

子供の内斜視の多くは、遠視のためにピント調節に過剰な負荷がかかっていることが原因です。一方で、逆に近視が強すぎて生じることもあります。脳の異常やケガ、ストレスなどで後天性の内斜視を起こす方もいます。原因によって、発症のスピードも異なるため注意が必要です。

内斜視を放置するとどうなる?

内斜視を放置していると、二重に見える「複視」の状態が続き、遠近感がつかみにくくなります。そして、徐々に立体的に見ることも難しくなっていきます。
また、乳幼児や幼少時に発症した場合には片側だけがメガネでも視力の上がらない「弱視」になることもあるため、早いうちに眼科医の診察を受け、適切な対処をとることが大切です。

内斜視の主な原因

内斜視の原因は、子供と大人で異なります。

子供に多い原因は、次の3つです。

  • 生まれつき
  • 遠視
  • デジタル機器の長時間使用

子供の場合、両眼視機能の発達のため早期の対処が重要になります。

一方大人では、次のような原因が多くみられます。

  • 強い近視
  • 脳の病気、ケガ
  • 高血圧
  • 糖尿病

脳の病気やケガ、高血圧、糖尿病などによって眼運動神経に栄養が十分に行き渡らなくなり、斜視を引き起こします。この場合、自然な回復は難しいです。

内斜視が近年増えている背景

スマートフォンを使用する子ども

近年、内斜視は増加傾向にあります。その背景には、長時間のスマートフォン使用や3D映像・VR映像の視聴などが考えられています。「小さい画面や目と近い距離の画面を、眼球を動かさずに見続ける」という習慣が原因の一つです。

子供の場合、こういった習慣に注意しなくてはなりません。幼少期は、目の筋肉や視力が発達途上です。特に立体視するための細胞が未熟で瞳孔間の距離も短いため、大人に比べて斜視を発症するリスクが高くなります。

内斜視の種類と原因

内斜視は、大きく次の4種類に分類されます。

  • 先天内斜視
  • 後天内斜視
  • 調節性内斜視
  • 部分調節性内斜視

それぞれ発症時期や斜視の程度、調節性の有無、治療法などが異なります。ここでは、4種類の内斜視について特徴をご紹介します。

先天内斜視

生後6ヶ月以内、特に多くは生後1ヶ月以内の赤ちゃんに発症する、生まれつきの内斜視です。両眼視機能の発達のために、早期の手術が望ましいとされています。目に異変を感じたら、できるだけ早めに眼科を受診することが必要です。放置していると、弱視になる可能性があります。

また、特定の片眼が内側によるのではなく、時によって左右どちらの目が内側によるか異なる場合も多いです。両眼ともに外向きへ動きにくく、両眼が内側によっているように見える子供もいます。ほかの種類の内斜視と比較すると、眼位ズレが大きく、矯正メガネでもほとんど眼位が改善しません。

後天内斜視

生後6ヶ月以降に発症する内斜視で、子供から大人まで幅広い年齢層の方に起こります。スマートフォンの長時間使用によるスマホ内斜視も、後天内斜視の一種です。急激に発症する急性内斜視、近視による近視性内斜視、片眼の失明や弱視で生じる感覚性内斜視など、様々な種類があります。

眼位のズレは、大きい場合もあれば軽度な場合もあり、人それぞれです。突然の発症では複視の症状を感じやすいですが、徐々に進行した内斜視では、目の見え方の異常に気づかないこともあります。

調節性内斜視

遠視を伴い、矯正メガネをかけることで眼位のズレが消失するものを調節性内斜視と呼びます。1歳半ごろから3歳までの発症が最も多いです。矯正メガネをかけることで、斜視とならずに視力の発達を維持できる状態を目指します。

遠視とは、遠くよりも近くが見えにくい状態のことで「目が良い」状態とは異なります。一定以上の強い遠視があると、近くを見る時にピント調節の負担が大きくなります。過剰にピントを調節しようとすることで内斜視が生じることを、調節性内斜視と呼びます。
初期の段階では、両眼がまっすぐ視線の先を向いている状態と内斜視の状態が混在しますが、やがて常に内斜視の状態となります。

部分調節性内斜視

調節性内斜視の一種ですが、矯正メガネを使用して3ヶ月以上が経っても内斜視が残る状態を、部分調節性内斜視と呼びます。遠くを見る時も近くを見る時も眼位がズレているため、部分調節性内斜視の状態が続くと、両眼を使ってものを見る両眼視(立体感・奥行きを感じる機能)の機能がうまく発達しないことがあります。

両眼視は、1歳頃からできるようになり、その機能は6歳頃までに完成します。この期間に両眼視の機能が発達しなければ、後から機能を獲得することは困難です。視機能を保つためには、早期の手術が必要になります。

内斜視の可能性がある
要注意な症状

ものがぼやけて2つに見える

ものがぼやけて2つに見える

両眼視の機能のある方が後天的に内斜視になった場合、右目と左目で別のものを見ている状態となり、結果としてものが二重に見える「複視」になります。内斜視によって、遠くを見ようとしても眼球が外側へ向かず、ピントが合わないことが原因です。場合によっては、右目と左目で見ているものが重なり合って見える「混乱視」という状態になることもあります。

一方で、幼い頃から内斜視がある場合、脳が複視に順応して片眼の情報を消してしまう「抑制」が起こり、複視や混乱視は感じなくなります。ただし、複視の症状は内斜視以外にも脳や神経の疾患で引き起こされることがあります。迅速な対処が必要なことも多いため、複視の症状が現れた場合は、早めに眼科を受診しましょう。

遠くのものが見えにくい

通常、近くを見る時は両眼が内側に、遠くを見る時は両眼が少し外側へ向きます。しかし、内斜視のある方が遠くを見ようとした時、内斜視を起こしている目は外側へ向かないため遠くのピントが合いにくくなります。

「近視が進行した」「視力が下がった」と思っている方の中には、実は内斜視を発症しているケースがあります。メガネの度数を調整しても見えにくい、片眼ずつなら見えるのに、両眼では見えにくいなどの特徴に当てはまる場合には内斜視の可能性を考え、眼科で検査をしましょう。

歩行時のふらつきがみられる

両眼を使って一つのものを見ることで、脳でその情報を統合し、立体感や距離感を感じる機能が「両眼視機能」です。内斜視になると、両眼視機能が障害されるため、ものの遠近感が掴みにくくなり、ふらついたり、周囲のものにぶつかったりしやすくなります。

歩く時にふらつく、まっすぐ歩けないなどの症状がある場合、足の筋力、脳や耳(三半規管)の異常などが問題となることが多いですが、一部には内斜視が影響しているケースも考えられるでしょう。

まばたきの回数が増えている

瞬きをする男性

内斜視では、視線が合わずにものが見えにくくなるため、それを解消しようとまばたきが増える方が多いです。また、片目をつぶって見ようとした行動がまばたきのように見える場合もあります。

内斜視の方は、両眼視が困難で見え方を補正するために片眼の筋肉に負担がかかっている状態です。そのため、通常よりも眼精疲労を生じやすく、疲れを解消しようとまばたきを繰り返す方もいます。まばたきが多い原因として、ドライアイを疑い目薬などで対処しようとする方がいますが、原因はそれだけではありません。まばたきが多い、目の疲れがとれないという方は、眼科での検査をおすすめします。

ものを見る際に顔を斜めにしている

横目でものを見る女の子

内斜視によってものがズレて見えたり、遠近感が捉えにくくなったりする症状を緩和しようと、顔を傾けたり、横目で見たりするくせがつくこともあります。これは無意識のうちに、内斜視のない片方の目で見ようとしてしまうために起こり、子供の内斜視によく見られます。

内斜視が原因の場合、最初は時々しか見られないかもしれませんが、次第に顔を傾ける行動が状態化してきます。ものを見る時に顔を傾けている、または横目で見ていることに気がついたら、早めに眼科を受診してください。0歳でも目の検査は可能です。

内斜視の主な4つの治療方法

デジタル機器等の使用を中断する

デジタル機器の仕様を中断

後天性内斜視の一部では、スマートフォンや携帯型ゲーム機などのデジタル機器の使用が原因となっている場合があります。「小さい画面や、目と近い距離の画面を、眼球を動かさずに見続ける」という行動が目に負担をかけ、内斜視を引き起こすのです。

特に子供の場合、大人と比べて手が短いため、自分で手に持って画面を見るタイプの機器は、どうしても距離が近くなってしまいます。テレビなどの大きい画面で離れて見るようにする、使用を一時的にやめるなど、習慣を改めてみましょう。

自分に合ったメガネを着用する

メガネを掛けた女の子

調節性内斜視の場合、矯正メガネをかけることが治療になります。寝る時や入浴する時以外は、常に矯正メガネをかけ続けることが重要です。

遠視を完全に矯正できれば、過剰なピント調節をする必要がなくなり、結果として内斜視にならなくなります。個人に合った矯正メガネをかけることで目の負担が減り、視機能の発達も期待できます。治療として、しっかりと矯正メガネをかけ続けることが重要です。子供の場合、状態によっては自宅でのトレーニングの併用が有効な場合もあります。

ボツリヌス注射での治療

ボツリヌス注射による治療は、2015年から保険適用となった治療法で、12歳以上が対象です。「ボツリヌス毒素」を目の筋肉に注射することで、過度の調節ができないようにし、内斜視を軽減します。投与量を調整することで、眼位の微調整も可能です。

注射後、数日で効果が現れはじめ、1〜2週間で最大となります。ただし、数ヶ月で毒素の効果がきれ斜視が戻るため、必要に応じて注射を続けなければなりません。なお、ボツリヌス注射での治療が向かないタイプの内斜視もあるため、治療の適応については医師と相談しましょう。

手術での治療

調節性内斜視以外の内斜視では、基本的に手術が治療の選択肢となります。一般的に、高校生以上は局所麻酔の日帰り手術ですが、子供は全身麻酔で実施します。

眼球には、それぞれ6本ずつ眼を動かすための筋肉がついています。手術によって筋肉の位置をずらしたり、張りを調節したりすることで、眼の位置を矯正します。手術後は、しばらく眼の充血が起こります。また、感染予防のため、プールや温泉、スポーツなどを控えるなど一時的に生活の制限が必要ですが、斜視の戻りの程度は少ないです。

内斜視を予防する方法はある?

内斜視を予防する方法イメージ

予防できる内斜視としては、スマホ内斜視があげられます。
デジタル機器を使用する場合は、目との距離をできるだけ離して、定期的に遠くを見て目を休めるようにしましょう。米国眼科学会議は、「20-20-20」ルールを推奨しています。20分間デジタル端末を見たら、20フィート(6m)離れたところを20秒眺めるというルールです。
このルールを参考に、子供の場合は、保護者がスマートフォンや携帯型ゲーム機などの使用時間と使用方法をチェックしてあげましょう。

また、高血圧や糖尿病といった生活習慣病が斜視を引き起こすケースもあります。生活習慣病を指摘されている方は、適切な治療を行いましょう。

まとめ

今回は、内斜視の原因や治療についてご紹介しました。
内斜視にはいくつかの種類があり、原因や治療法が異なります。目の見え方に異常を感じた場合や、目の向きが左右でズレていることに気がついた場合には、早めに眼科へ行き相談しましょう。

後天的な内斜視の一部は、スマートフォンなどデジタル機器の使用が原因になっていることもあります。医師の指示の元、生活習慣を改めることも大切です。
内斜視の予防・早期発見のため、今回の記事を参考にしてみてください。

監修者プロフィール

原 修哉

原眼科クリニック 院長

HP:https://www.haraganka.jp/

名古屋大学医学部卒業後、名古屋市の中京病院へ入局し13年勤務。その期間中に、ハイデルベルク大学(ドイツ)へ留学。
大雄会第一病院 診療部長として7年の勤務を通じて、地域の重症例、難疾患、専門性の高い疾患などの医療に携わり、白内障手術、緑内障手術、角膜移植、屈折矯正手術、結膜手術など10,000件以上執刀。
現在は、原眼科クリニックを開業し、地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

【所属学会】
日本眼科学会 専門医 / 日本眼科手術学会 / 日本緑内障学会 / 日本角膜学会

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