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「瞳孔間距離(PD)って何?」と疑問に思う方もいるのではないでしょうか。瞳孔間距離(PD)とは、左右の黒目の中心間の距離のことで、メガネを作る時に重要な情報です。
この記事では、瞳孔間距離(PD)について説明します。ぜひ参考にしてください。
メガネにおける
瞳孔間距離(PD)とは何か
瞳孔間距離(PD)は、左右の瞳孔(黒目)の中心同士の距離を指します。PDは、英語の「Pupillary Distance」の略称で、ミリメートル単位で測定されます。メガネを製作する際に欠かせない重要なデータです。
適切な視界を得るためには、左レンズの中心と右レンズの中心の距離は装着者の瞳孔間距離(PD)に合わせて作ります。両者が合っていないと、視界がぼやけたり、長時間使用する際に不快感を感じるなど、かけ心地の良いメガネにはなりません。
瞳孔間距離(PD)が重要な理由
瞳孔間距離(PD)は、メガネを作製する際に欠かせない基礎的な情報です。自分に合う快適なメガネを選んだり、作ったりするためには、瞳孔間距離(PD)を正確に測定しなければなりません。
以下に、瞳孔間距離(PD)が重要とされる理由を3つあげて説明します。
クリアな視界に影響する
メガネやVR(仮想現実)デバイスを使用する際、レンズの光学中心と瞳孔の中心が一致していないと、プリズム効果により光が歪んで目に見えることがあります。この歪みによって、目が疲れやすくなったり、めまいがしたりする可能性があります。瞳孔間距離(PD)のズレは視界の歪みが生じる原因です。
例えば、瞳孔間距離(PD)が合っていないメガネを使用すると、階段の段差が実際とは違って見えたり、物の距離感が正確に掴めなくなったりする可能性があります。このような視覚のズレは不快感を引き起こし、クリアで快適な視界を妨げます。
正確な瞳孔間距離(PD)に基づいて選んだメガネは視界がクリアになり、安全に日常生活を過ごすことができます。瞳孔間距離(PD)が合わないメガネによる目の負担は気づきにくい場合がありますが、目の健康を守るためにも軽視しないよう注意しましょう。
目の健康へ長期的な影響を及ぼす
瞳孔間距離(PD)の合わないメガネやVRデバイスは、目の筋肉に負担を与え、視機能に悪影響を及ぼす可能性があります。負担がかかり続けると、慢性的な頭痛や首・肩のこりなどの症状を伴う場合もあります。
また、子供の場合、両眼視機能の発達が阻害されたり、斜視や視力低下などの問題が起こることが危惧されます。そのため、特に成長期の子供は、正確な瞳孔間距離(PD)の測定と定期的な見直しが必要です。目の健康は一生の財産のため、早めに対応し瞳孔間距離(PD)が適切なメガネを使用することが大切です。
デジタルデバイスが性能を発揮できる
VRヘッドセットやスマートグラスなどのデジタルデバイスでは、瞳孔間距離(PD)の正確な設定が機器の性能を最大限に引き出すために大切です。瞳孔間距離(PD)が合っていないと、3D映像が正しく重なり合わず、立体感が感じられなくなったり、没入感が下がってしまったりします。
また、AR(拡張現実)デバイスでは、デジタル情報の表示位置が実際の視界とズレてしまい、製品本来の機能を十分に活用できなくなってしまうのです。これは、ゲームや教育、業務用途など、様々なシーンでの使用体験に影響を与えます。正確な測定が重要です。
瞳孔間距離(PD)の平均値はどれくらい?
メガネフレームは、平均値に合わせて製作される場合が多いです。瞳孔間距離(PD)には個人差があるものの、平均と自分の値を比べると、フレーム選びに役立ちます。
ここでは日本人男性、日本人女性、子供の3つの瞳孔間距離(PD)の平均値をご紹介します。
日本人男性の場合
日本人男性の瞳孔間距離(PD)の平均値は63.6mmです。個人差はありますが、目安として60mm以下がやや狭め、60〜70mmが普通、70mm以上がやや広めといってよいでしょう。
ご自身の数値と比較して参考にしてください。
日本人女性の場合
日本人女性の瞳孔間距離(PD)の平均値は59.9mmです。こちらも人によりますが、56mm以下ではやや狭め、58〜64mmで普通の距離、65mm以上でやや広めといえます。
子供の場合
子供の頭蓋骨は大人よりも小さいため、瞳孔間距離(PD)も狭くなっています。成長するに従って少しずつ広くなり、約10歳までに決まるといわれています。
年齢によって瞳孔間距離(PD)が異なり個人差も大きいため、子供のメガネは成長に合わせて調整や交換が必要です。
瞳孔間距離(PD)を
測定する方法
瞳孔間距離(PD)を測定するには、器械を使う方法とメジャーを使う方法があります。ここでは、専門家が行う代表的な方法を2つご紹介します。
これらの測定方法は、いずれも専門的な知識を持つ検査者によって正確に瞳孔間距離(PD)を測定できます。自分で測定する方法もありますが、遠近両用メガネの作製などの場合は、特に専門家による測定をおすすめします。
器機で測定する
眼科医院や眼鏡店では「瞳孔間距離計(PDメーター)」という専用の器械で測定します。器械の測定窓をのぞき込むと黒目の部分が光ります。それを検査者が接眼レンズで観察、内蔵メーターで測定する仕組みです。両眼を開けたままでも、片眼を閉じても測定可能で、測定値がデジタル表示されます。
測定時には、姿勢はまっすぐに前を見て、顎台にあごを当てて動かないようにします。精度を高めるために測定は複数回行われ、その平均値を使います。近見用(近くを見る)と遠見用(遠くを見る)では異なる値が出ることもあり、用途に応じて測定されます。
メジャーで測定する
眼鏡店で用いられる正式な方法です。被測定者に遠くをじっと見てもらい、検査者は向かい合う眼を見て、以下のように測定します。
- 瞳孔中央部から12mmの鼻根中央にメジャーを置く
- 検査者の左眼で、被検者の鼻根部中央から右眼の瞳孔中心までの距離を測定する(a)
- 検査者の右眼で、鼻根部中央から被検者の左眼の瞳孔中心までの距離を測定する(b)
a+bが瞳孔間距離(PD)です。片眼ずつ測定することにより、精度を高めています。
瞳孔中心が見えにくい場合には、右眼の角膜輪部外縁から左眼角膜輪部内縁の距離を測定する方法もあります。
自分で瞳孔間距離(PD)を
測定する方法
自分に合ったメガネを選んだり、作ったりするためには、瞳孔間距離(PD)の値を知ることが必要です。
- メジャーによる測定
- アプリによる測定
正確な測定には眼科や眼鏡店がおすすめですが、参考にするためにも、ここからは自分で測定する方法を説明します。
メジャーによる測定
上記の「検査者のメジャーによる測定」を自分で行う方法です。自分で測定する場合には、鏡とミリメートル単位の定規を用意し、以下の手順で行います。
- 鏡の前に立ち、定規を眉毛のラインと平行に、鼻の端に合わせる
- 右目を閉じ、鏡の中でまっすぐ前を見て、定規のゼロ点を左の瞳孔の中心に合わせる
- 定規を静止させたまま、左目を閉じ右目を開く
- 右目の瞳孔の中心にある数字を読みとる。この値が瞳孔間距離(PD)の測定値
- 精度の高い測定結果を得るため、先に左目を閉じて同じ手順で再度測定する
左右の瞳孔中央距離を直接測定することもできます。瞳孔中心が見えにくい場合には、右眼の角膜輪部外縁から左眼角膜輪部内縁の距離を測定する方法もあります。
測定は必ず明るい場所で行い、瞳孔がはっきりと見える状態で実施しましょう。また、測定値は1回だけでなく、2~3回測定して平均値を出すことで精度が高まります。姿勢を正し、定規がぶれないよう注意してください。目と鏡との距離は30~40cm程度を目安に、定規の値が正確に読みとれる位置に設定しましょう。
アプリによる測定
スマートフォンには瞳孔間距離(PD)を測定できるアプリがあります。スマートフォンが使える場合には、アプリを検索して利用するのも良いでしょう。スマートフォンやウェブカメラを備えたコンピュータ、磁気カードを準備し、アプリの測定手順に従って測定します。
磁気カードはカードの上部に帯状の黒い磁気が記載されたもので、世界的に同じサイズで統一されているため、瞳孔間距離(PD)測定では便利です。
現実を認識して連動するバーチャル情報を重ねて表示するARグラスや 仮想現実(VR)を体験するために使うVR ヘッドセットを購入した際、瞳孔間距離(PD)を設定する場合も参考になるでしょう。
しかし、アプリは英語表記だったり、測定する際にスマートフォンから一定の距離が必要だったりと、難しいと感じる方もいるでしょう。場合によってはスマートフォンを立てるスタンドの使用や、うまく測定できない場合にはアプリを第三者に持ってもらうなど工夫が必要です。
メガネフレームPDとは何か
メガネフレームPDは、レンズの中心同士の距離を示す重要な数値です。この値は、フレーム内側に記載されている「47□22 148」といった形式の数字から計算できます。それぞれの数字は以下を表しています。
- レンズ幅(例:47mm)
- ブリッジ幅(例:22mm)
- テンプル長(例:148mm)
メガネフレームPDは、以下の式から計算できます。
【メガネフレームPD計算式】
メガネフレームPD=レンズ幅+ブリッジの長さ
上記「47□22 148」の例の場合、以下の式で計算できます。
【上記のメガネのメガネフレームPDの計算】
メガネフレームPD=47+22=69
ご自身の瞳孔間距離(PD)とフレームPDとの差が2mm以内であれば、フィットしやすいフレームといえます。フレーム選びの際には、この計算方法を活用し、自分に最適なサイズのものを選びましょう。
瞳孔間距離はVRにも大切
VRヘッドセットでは、瞳孔間距離(PD)の設定が見え方に重要な役割を持っています。瞳孔間距離(PD)が適切でないと、目の疲れや頭痛、3D映像のぼやけなどが生じる可能性があります。
VRヘッドセットでは左右の目にそれぞれ異なる映像を映し、脳でそれらを合成して立体視を実現する仕組みです。そのため、瞳孔間距離(PD)が実際の目の間隔と合っていないと、映像が正しく重ならず、違和感を感じます。
多くのVRヘッドセットでは、ソフトウェアやレンズを調整することで瞳孔間距離(PD)設定する仕様になっています。快適にVRを視るには、事前に自分の瞳孔間距離(PD)を正確に把握し、適切に設定する必要があります。
VRデバイスを購入する際は、自分の瞳孔間距離(PD)に合う機種かを確認しましょう。
海外製のVRデバイスは子供の瞳孔距離を調整できないことがある
海外製品の中には瞳孔間距離(PD)の調整ができない機種も多くあります。特に瞳孔間距離(PD)が小さい子供には合わないことがしばしばあるため、購入前の確認が重要です。また、子供が使用する場合には、安全に使えるように必ず保護者が注意して使いましょう。
子供に合わないVRデバイスを使う危険性
子供が自分の瞳孔間距離(PD)に合わないVRデバイスを使うと、以下のような健康上のリスクがあります。
- 目の疲労や頭痛が起こりやすくなる
- 両眼視機能や立体視の発達に悪影響を与える恐れがある
- 視力低下や斜視などの問題につながる恐れがある
左右の映像が子供の目の位置と合っていないと、脳が映像を正しく処理できないため、余分な負担がかかり、不調を生じます。長時間使うと、VR酔いとも呼ばれる吐き気やめまいなどの症状を起こすことも少なくありません。
子供の視覚は発達段階にあります。両眼視機能や立体視への悪影響のみにとどまらず、長期的には視力低下や斜視などにつながる恐れもあります。特に、7歳以下の子供の使用は注意しましょう。仮想空間での不適切で違和感のある体験は、実生活での空間把握能力に混乱をきたす恐れがありまう。
これらのリスクを避けるため、子供用のVRデバイスを選ぶ際は、必ず瞳孔間距離(PD)が調整可能な機種を選び、適切に設定しましょう。使用時間の制限や定期的な休憩も必要不可欠です。子供の健全な視覚発達のため、慎重な対応を心がけましょう。
VRの仕組みとは
VR(バーチャルリアリティ)は、左右の目に少しずつ異なる映像を見せ、立体的な仮想世界を作り出します。これは左右の目で見える映像のズレという、人間の両眼視差を利用した仕組みです。
VRヘッドセット内には、左右それぞれの目の前に専用の小型ディスプレイが配置されています。各ディスプレイには、視点を少しずつずらした映像が表示されますが、これらの映像は特殊なレンズを通して目に届きます。映像を広角化しより自然な視野を作り出すのが、このレンズの働きです。
また、ヘッドセットには動きを検知するセンサーが搭載されているため、頭の動きに合わせてリアルタイムで映像が変化します。これにより、あたかも仮想空間の中にいるような没入感のある体験が可能です。
このように、VRは人間の視覚特性をうまく使った技術なのです。
VRデバイスを使う際は年齢制限を守ろう
多くのVRデバイスには、以下のような年齢制限があります。
- 7歳以上
- 12歳以上
- 13歳以上など
人は6歳まで立体視の発達期にあり、合わないVRデバイスを使い目に負担をかけると、斜視になったり視力が落ちてしまったりする恐れがあります。落ちてしまった視力や、歪んでしまった立体視は、戻るとは限りません。
子供のVRデバイス使用は親が管理し、年齢制限を守りながら楽しむことが大切です。視力の健やかな成長のために、正しい使用ルールを家族で決めましょう。
まとめ
今回は、瞳孔間距離(PD)について説明しました。瞳孔間距離(PD)は左右の黒目の中心と中心の距離を指し、メガネを作製する時に重要な情報です。正確な瞳孔間距離(PD)に基づいて作られたメガネは視界が良好で、目の健康のためにも安心です。自分でも測ることはできますが、正確な測定には眼科や眼鏡店での測定がおすすめです。
また、瞳孔間距離(PD)はVRデバイスを使用する時にも大切です。特に海外製品は子供向きに瞳孔間距離(PD)を調整できないことがあるため、注意が必要です。仕組みを知り、子供に使う場合には年齢制限を必ず確認し、目の健康も守りましょう。