目の病気
最終更新日:2024.08.30

眼底出血の症状が出たらどうする?原因・治療法までご紹介!

この記事の監修者

原 修哉

原眼科クリニック 院長

眼底出血の症状が出たらどうする?原因・治療法までご紹介!

目次

眼底出血と聞くと「目の中の出血」「何か深刻な状態」というイメージがあるかもしれません。

眼底出血は原因や程度によっては、未治療で経過観察をするケースから緊急手術を行うケースまでさまざまです。原因となる疾患の治療も含め、他科と連携しながら解決していく必要があります。

本記事では眼底出血の原因や初期症状、繰り返さないための予防法などを紹介します。

眼底出血とは?主な症状について

眼底出血

眼底出血は、網膜の血管が閉塞して血液が血管から漏れ出したり、脆くなって破れてしまい、網膜内に出血をすることです。硝子体に出血が及ぶと飛蚊症が増えたり、視界が遮られるなどの症状が出ます。飛蚊症とは、視界に小さな虫か糸くずのような影が動くように見える症状のことを言います。

原因は糖尿病や高血圧といった全身疾患や、何らかの理由で網膜に穴が開いて生じるなどがあり、いくつもの要素を抱えています。

眼底出血には、点状のわずかなものから放射状のわかりやすいものまであり、出血の量や箇所によっては視力にほとんど影響はありません。一方、眼内で出血が広がると硝子体出血となり、写真を撮っても眼底が見えないほど濁ってしまうこともあります。

眼底出血は自然に吸収され消えていくはずですが、眼内をきれいにする働きが弱って、硝子体出血が自然に吸収されない場合、手術によって出血を取り除く必要があります。

眼底出血の原因は?
偏った食生活やストレスに注意!

眼底出血を引き起こす疾患の原因

眼底出血を引き起こす疾患の原因に、暴飲暴食による血糖値の上昇や、脂っこい食事による血中悪玉コレステロール値の上昇、ストレスといった生活環境が関係するものがあります。

血圧が上がると、血管の内側に負荷がかかり、出血しやすくなります。特に動脈硬化が進んでいる場合、血管の内側はかなり傷つきやすくなっているため、眼底出血が起こりやすくなることもあります。

また極度のストレスにさらされていると、交感神経が優位な状態が続き、血管が収縮して高血圧の原因となります。眼底出血には高血圧が深くかかわっているため、ストレスによる網膜血管からの出血は十分考えられることです。この強いストレスは緑内障や心筋梗塞を誘発することもあります。

このように、眼底出血は生活習慣を見直すべき理由にもなるのです。
眼底出血の原因はさまざまですが、高血圧や加齢、新生血管に伴うことが多いです。

原因① 網膜静脈閉塞症

発症者の8割が高血圧である網膜静脈閉塞症は、特徴的な眼底出血を起こしやすい眼疾患です。高血圧によって血管が硬くなると、静脈が詰まり、あふれ出た血液が網膜の中に溜まります。

静脈は中心と枝部(末端)に分かれており、枝部の出血では一部の視野欠損が起こり、出血の影響による浮腫がどれだけ黄斑部に及ぶかによって視力が変わります。一方、中心から出血すると網膜の全範囲に広がり、黄斑部も浮腫が起こりやすくなるため視力低下は深刻です。

原因② 網膜細動脈瘤

高血圧によって動脈硬化が進むと、血管が詰まりやすくなり、行き場を失った血液が瘤となって溜まり、血管壁を壊してしまいます。この出血が網膜で起これば眼底出血となり、頭蓋内で起これば脳梗塞、心臓で起これば心筋梗塞となります。

脳梗塞や心筋梗塞と違い、眼底出血は痛みやしびれなどを感じることはありません。その代わり、漏れ出た血液が影響して黄斑部に浮腫が生じると、歪みや中心部の視力低下が起きます。また、血液が硝子体の中に入り込めば、視界全体がかすむような視力低下を引き起こします。

原因③ 糖尿病網膜症

糖尿病網膜症は眼底出血が非常に起こりやすい疾患の一つです。血糖コントロールが悪かったり、糖尿病が発症してから10年以上経っていたりすると出てくる網膜の病気を指し、内科との連携をとらずに放置していると失明に至ることもあります。

酸素を運ぶヘモグロビンに糖がくっついてしまうと、血管の中が酸素不足になります。酸素不足になった組織は死んでしまうため、血管は何とか酸素を作り出そうと、とても脆い「新生血管」を生み出します。

この新生血管が壊れて出血すると眼底出血や硝子体出血を起こすのです。

原因④ 加齢黄斑変性

加齢黄斑変性

老化によって黄斑部に異常が起こり、深刻な視力低下を引き起こすこともあるのが加齢黄斑変性です。加齢黄斑変性は日本人の失明原因の上位に位置し、直接的な原因は不明なものの、紫外線や喫煙、遺伝的な理由によることが多いようです。

加齢黄斑変性には2つのタイプ、委縮型と滲出(しんしゅつ)型があり、委縮型は徐々に進行して黄斑部に障害を与えていき、歪みやゆっくりとした視力低下を引き起こします。滲出型は脈絡膜からの異常な血管「新生血管」が発生し、新生血管が破れると急激な視力低下が生じます。

原因⑤ 強度近視に伴う脈絡膜新生血管

近視とは眼球が大きくなるものですが、病的な強度近視は眼球の奥行きの長さが異常に伸びてしまう状態です。網膜が薄く引き伸ばされてしまうと、網膜の後ろにある脈絡膜から新生血管が入り込み、眼底出血や浮腫を起こしやすくなります。

出血や浮腫は黄斑部付近に起こりやすく、発症すると視力低下や視界の中心部に歪みを生じます。治療の第一選択は白目から硝子体内に薬剤を注射することですが、一度収まっても繰り返すことが多いのも特徴です。

原因⑥ 網膜剥離

網膜剥離

何らかの原因で網膜がはがれてしまい、傷ついた網膜血管から出血し、眼底や硝子体に広がってしまうことがあります。

加齢によって硝子体が縮み、網膜が引っ張られてはがれてしまう、外傷によって網膜が裂けてしまう、もともと網膜の組織が弱く、穴が開きやすいなどが考えられます。

網膜剥離は緊急性の高い疾患であり、患者さんの年齢やはがれた箇所、範囲によっては緊急手術を行うこともあります。飛蚊症が増えるなど違和感があればすぐに眼科を受診しましょう。

原因⑦ 眼球打撲

物にぶつかったり殴られたりして起こる眼球打撲は衝撃の加わり方によって、眼球のさまざまな組織に傷害を与えます。強い衝撃によって網膜に亀裂が入り、血管が破れたりするとその部分から出血することがあります。

そのほか、眼球打撲による視力低下にあるのが、血管が豊富な虹彩が切れて出血が溜まる「前房出血」や、水晶体を支えるチン小帯が切れて水晶体が外れてしまう「水晶体脱臼」、網膜への衝撃で黄斑に穴が開く「黄斑円孔」などです。

眼底出血の初期症状
普段と違った見え方に注意!

眼底出血の初期症状は、物を見るために重要な「黄斑部」付近に出血があるかどうかで感じ方が変わります。

虫が飛ぶ

飛蚊症

出血の位置がどこにあっても自覚しやすい症状が飛蚊症です。わずかな出血でも硝子体の中に入り込んで漂うと、視界にちらちらと虫や髪の毛のようなものが見えるようになります。

歪んで見える

黄斑部の近くに出血が起こると、見ている物の中心付近に小さな歪みを感じます。両目で見ていると気づかないことも多いです。

視界の一部がかすむ

視界の一部がかすむイメージ

黄斑部近くに出血が起こると、出血部分に相当する視界の一部がかすむ、色が変わって見える、消えるといったことがあります。

初期症状に気づいたら病院へ!
放置すると視力低下や
失明の恐れも

飛蚊症や見え方の違和感を放置すると、低下した視力が戻らなくなり、最悪の場合には失明にまで至る可能性があります。いつもとおかしい、急に飛蚊症が気になりだしたら、迷わず眼科を受診しましょう。

最初に受診するのは近隣の眼科でかまいません。眼科では「散瞳検査」といって点眼薬で瞳孔を開き、眼内をしっかり診てもらうことが多いです。散瞳すると数時間は見え方が悪くなるため、車や自転車で受診するのは控えてください。

飛蚊症は眼底出血や網膜剥離の予兆でもありますが、健康な人でも生じる生理的な飛蚊症もあります。生理的か病的か自己判断は難しいため、放置せず医師に相談しましょう。

眩暈や視界不良の場合は慌てず安静に

眩暈

眩暈や視界が暗くなる感じがあった場合、まずは落ち着いて安静にしてから病院へ行きます。
慌てて走ったり激しい動きをすると、眼内の出血が増えたり網膜の傷みが悪化したりする可能性があるためです。

眼底出血から硝子体出血が引き起こされると、物の動きしかわからないくらい視界不良になるので、片目だけ見えなくなって距離感がつかめなくなると転倒しやすくなります。

特に緊急性があるのは網膜剥離で、頭部の振動や向きによって網膜のはがれがさらに進行することもあるのです。

見え方に違和感があったら、走ったり頭を振ったりはせず、落ち着いてすみやかに眼科を受診しましょう。

自己判断で目薬を使うのはやめよう

見え方に違和感があっても眼科を受診せず、市販の目薬で対処しようとしてしまうことがあります。「目薬を使っても治らなければ眼科に行こう」と思っていると、その間に病状が悪化する可能性があります。眼底出血は点眼薬では治りませんので注意してください。

病院で診断のもと適切な治療を受けよう!治療法をご紹介

眼底出血の治療法は次の3つがあります。

レーザー治療

出血の原因が網膜の血管が詰まったことによる場合には、血流が途絶えた部分に新生血管という悪い血管が生えてこないようにする為に病変部にレーザー治療を行うことがあります。焼かれた部分の網膜は機能を失い、視界が暗く感じるようになることもあります。

網膜は一度焼かれると再生しませんが、再出血を防いだり網膜剥離の進行を止めるのに有効です。

硝子体注射

黄斑部の浮腫を軽減させたり黄斑部の新生血管の発育を抑えるために、硝子体内に薬剤を注射する方法です。病状に応じて、1〜3ヶ月おきに硝子体に注射をしますが、1回のみの注射で効果が弱い場合には複数回にわたり注射が必要になる事があります。使うのは点眼麻酔のみですが、注射は一瞬で傷みはほとんどありません。

手術療法

緊急性が高い場合や自然に出血が吸収されない場合は硝子体手術を行ないます。ゼリー状の硝子体を取り除き、人工の液体に置き換え、出血の原因となっている部分の網膜を直接治療します。
安全性が高くなっているとは言え、手術による患者さんの負担は少なくありません。手術時間は以前と比べると短くなってきており、十数分から1〜3時間に及ぶものまでさまざまです。

繰り返さないための予防法

再発を予防するためには、原因となる疾患の治療を行ないます。他科と連携して糖尿病や高血圧の治療、加齢黄斑変性や強度近視による新生血管の増殖を抑える治療などを継続します。

食生活の見直しや運動不足の解消など、生活習慣そのものを根本的に改める必要もあります。発見時の状態にもよりますが、改善のための努力は少なからず目に良い影響を与えるでしょう。

眼底出血は原因の治療や定期的な経過観察、適切な処置を行なわないと、頻繁に繰り返してしまいます。「治った」と思い、治療を中断してしまうと、取り返しがつかなくなる可能性もあるので、必ず医師の指示に従って通院してください。

眼底出血に関連する
その他の疾患について

眼底出血に深いかかわりのある疾患の一つが網膜剥離です。網膜剥離は失明にも至る怖い病気ですが、早期発見で悪化を防ぐこともできます。詳しくは『網膜剥離とは?原因・症状・治療・予防方法等をご紹介』もご覧ください。

その他眼とメガネの情報室 みるラボでは目の病気や眼鏡についてのさまざまな情報が掲載されています。目の病気の一つ一つには連鎖的に起こるものもあり、複数の視点から治療のアプローチが必要なことがあります。

予防法や疾患同士の関連性を知っておくと、病気の発症を抑えられたり早期の発見に役立ったりして、大切な目の健康を守ることができます。本記事で触れている加齢黄斑変性糖尿病網膜症などの目の病気、視力低下の原因についてもサイト内の記事で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

まとめ

眼底出血はさまざまな疾患が原因で起こります。生活習慣で引き起こされることもあれば、もともと眼球の組織が弱いために起こることもあります。

もしも見え方に違和感があるなら、放置したり市販の目薬で対処しようとしたりせず、近隣の眼科にご相談ください。また、受診の際には散瞳検査がある可能性が高いため、ご自分の運転で来院するのは控えましょう。

100%防ぐ方法はありませんが、普段から健康管理をし、健診などを利用して眼科受診をすれば、眼底出血の早期発見につながります。

監修者プロフィール

原 修哉

原眼科クリニック 院長

HP:https://www.haraganka.jp/

名古屋大学医学部卒業後、名古屋市の中京病院へ入局し13年勤務。その期間中に、ハイデルベルク大学(ドイツ)へ留学。
大雄会第一病院 診療部長として7年の勤務を通じて、地域の重症例、難疾患、専門性の高い疾患などの医療に携わり、白内障手術、緑内障手術、角膜移植、屈折矯正手術、結膜手術など10,000件以上執刀。
現在は、原眼科クリニックを開業し、地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

【所属学会】
日本眼科学会 専門医 / 日本眼科手術学会 / 日本緑内障学会 / 日本角膜学会

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