目の病気
最終更新日:2025.03.28

アイフレイルの予防法とは?症状や進行する原因について解説

この記事の監修者

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

アイフレイルの予防法とは?症状や進行する原因について解説

目次

「アイフレイル」という言葉を聞いたことはありますか? 年齢を重ねると、目の健康状態も徐々に変化していきます。アイフレイルとは、視機能の衰えが始まり、日常生活に支障をきたすリスクが高まっている状態のことを指します。適切な対応をしないまま放置すると、視機能障害が進行し、生活の質が大きく低下してしまう可能性もあります。

本記事では、アイフレイルの症状や原因、予防策など、目の健康を維持するためのポイントをご紹介します。

アイフレイルとは何か?

フレイルとは、健康な状態と介護が必要な状態の中間の状態を示す概念です。フレイルの中でも目の機能に着目した「アイフレイル」は、加齢に伴う目の機能低下を示します。

アイフレイルを放置していると、徐々に現れ始めるのが視機能障害です。進行して高度な視機能障害になると日常生活が制限され、「健康寿命」(健康の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間)を短くすることが知られています。アイフレイルを早期に発見し、適切に治療・対処を行うことで、重度の視機能障害への進行を予防することが重要です。

アイフレイルの症状

目の見え方に違和感を感じている女性

加齢によってアイフレイルの状態に陥ると、以下のような症状が見られます。

  • 視力の低下
  • 視野の狭まり
  • ぼやけやかすみ
  • コントラスト感度(明暗の識別)の低下
  • 眩しさを強く感じる
  • 夜間視力の低下
  • 目の疲れや乾燥

アイフレイルは、早期に発見し適切な対策を講じることで進行を遅らせることができます。気になる症状がある方は、早めの眼科受診をおすすめします。

視機能障害を持つ人の割合

視機能障害を持つ人の割合は、年齢とともに増加します。少し古いデータですが、2007年時点で日本には推定164万人の視覚障害者が存在し、このうち約18.8万人が失明者、145万人程度が弱視者であるとされています。視覚障害者の男女比は男性:女性=52:48でやや男性に多く、視覚障害者の半数は70歳以上、60歳代は22%と、60歳以上で全体の72%を占めています。

高齢化に伴い視覚障害を持つ人の割合は増加すると予想されていて、2007年に約164万人(人口の1.3%)だった視覚障害者数は、2030年には200万人(同2.0%)近くまで増加すると予測されています。

アイフレイルを早期発見し、視機能障害を予防することが大切

アイフレイルを早期発見し、視機能障害を予防することが大切

アイフレイルは、早期に発見し適切な対策を講じることで、重度の視機能障害への進行を遅らせることができます。視力の低下など気になる症状がある場合は、放置せず早めに眼科を受診しましょう。

アイフレイルは、単に見えにくさの問題だけではなく、そのほかのフレイルにもつながり、健康寿命に影響を与えることが知られています。例えば、白内障によって視力が低下することで、転倒のリスクが高まるなどです。また、視力が悪いと体を動かすことや人と関わることが億劫になってしまい、社会とのつながりも希薄になります。家に閉じこもってしまうことで、足腰のフレイルにも影響を与える場合もあります。

アイフレイルが進む原因

アイフレイルが進行する原因は、大きく分けて「内的要因」と「外的要因」の2つに分類され、複数の要因が複雑に絡み合いながら視機能の低下を引き起こします。

内的要因

内的要因とは、体の内部に起因する要素のことで、以下のようなものが知られています。

遺伝的要因

一部の眼疾患は遺伝によって発症リスクが高まるとされています。例えば緑内障は、遺伝的要因が強く関与し、家族歴がある場合は早期の検査と管理が重要です。

全身疾患の影響

糖尿病、高血圧、動脈硬化などの全身疾患は、眼の血流や神経に影響を与え、視機能の低下を引き起こす可能性があります。特に糖尿病は、網膜の血管に障害が起こり「糖尿病網膜症」を引き起こし、重度の視力低下をもたらすことがあります。

眼の疾患の影響

白内障イメージ

アイフレイルの進行に直接関与する眼疾患として、以下のものがあげられます。

  • 白内障:水晶体が濁り、視界がかすむ、眩しく感じるなどの症状が現れる。進行すると視力が大幅に低下する。
  • 緑内障:視神経が障害され、視野が徐々に狭くなる疾患。自覚症状が少なく、発見が遅れることが多い。
  • 加齢黄斑変性:網膜の中心部(黄斑)が変性し、視界の中心がぼやける、歪んで見えるなどの症状が出る。進行すると失明のリスクもある。
  • 糖尿病網膜症:糖尿病によって網膜の血管が損傷し、視力が低下する。重症化すると失明の原因となる。

外的要因

外的要因とは、環境や生活習慣に関連する要素のことで、以下のようなものが知られています。

紫外線の影響

長年にわたり紫外線を浴び続けると、水晶体や網膜にダメージが蓄積され、白内障や加齢黄斑変性のリスクが高まります。紫外線対策を怠ると、目の老化が速まる可能性があります。

長時間のデジタルデバイス使用(眼精疲労)

スマートフォンやパソコンを長時間使用すると、目の筋肉が疲労し、ピント調節機能が低下します。

喫煙

喫煙は血管を収縮させ、目の血流を悪化させることで視機能の低下を引き起こします。特に加齢黄斑変性の発症リスクを高めることが知られています。

アイフレイルを予防するためには、内的要因と外的要因の両方に対して適切な対策を講じることが重要です。生活習慣の改善や定期的な眼科検診を行い、視機能の低下を防ぎましょう。

アイフレイルの進行を
予防する方法

アイフレイルの進行を予防するためには、日常生活の中で目の健康を意識した習慣を取り入れることが大切です。ここからは、具体的な予防策について詳しく解説します。

生活習慣の見直し

アイフレイルの予防には、紫外線対策などの生活習慣の見直しが大切です。
長期間にわたる紫外線の影響は、目の老化を加速させ、白内障や加齢黄斑変性のリスクを高めることが知られています。紫外線は年間を通じて降り注いでおり、曇りの日でも目にダメージを与えるため、適切な対策を行うことが重要です。外出時にはUVカット機能のあるサングラスを使用するほか、つばの広い帽子を被ることで紫外線の影響を軽減しましょう。
また、メガネやコンタクトレンズを使用している場合は、UVカット機能のあるレンズを選ぶことで、日常的に目を守ることができます。

そのほか、喫煙は血管を収縮させ、目の血流を悪化させることで視機能の低下を引き起こします。アイフレイルの進行を予防するためにも、禁煙は大切です。

定期的な眼科受診

定期的な眼科受診

アイフレイルの原因となる緑内障や糖尿病網膜症、加齢黄斑変性などの病気は、初期には無症状なことが多く、ある程度進行しないと発症に気づきにくいという特徴があります。そのため、アイフレイルの早期発見のためには、定期的な眼科検診が効果的です。特に高齢者や主婦の方など、職場で健康診断や人間ドックなどを受ける機会のない方は、かかりつけの眼科を持ち、定期的に検診を受けるようにしましょう。

アイフレイルの予防に
おすすめの食べ物

アイフレイルの予防におすすめの栄養素と、それらを多く含む食品をご紹介します。

【ビタミンA】

含まれる食品 : にんじん、レバー、卵

【ルテイン】

含まれる食品 : ほうれん草、ブロッコリー、ケール

【オメガ3脂肪酸】

含まれる食品 : 鮭、マグロ、くるみ

【ビタミンC】

含まれる食品 : オレンジ、いちご、ピーマン

これらの食品を日常的に摂取することで、目の健康を維持し、アイフレイルの進行を遅らせることができるとされています。特に、抗酸化作用のあるビタミンCやルテインは、目の細胞のダメージを軽減する働きが知られているため、積極的に取り入れたい栄養素です。

アイフレイルのチェックリスト

アイフレイルを早期発見するためには、自分の目の状態を定期的にチェックすることが重要です。以下のチェックリストに当てはまる症状はないか、チェックしてみましょう。

  • 目が疲れやすくなった
  • 夕方になると見えにくくなることが増えた
  • 新聞や本を長時間見ることが少なくなった
  • 食事の時にテーブルを汚すことがたまにある
  • メガネをかけてもよく見えないと感じることが多くなった
  • 眩しく感じやすくなった
  • はっきり見えない時にまばたきすることが増えた
  • まっすぐの線が波打って見えることがある
  • 段差や階段が危ないと感じたことがある
  • 信号や道路標識を見落としそうになったことがある

チェックが0の人:あなたの目は今のところ健康です。今後、目の調子に変化を感じたら再度チェックしてみましょう

チェックが1つの人:目の健康に懸念はありますが、直ちに問題があるわけではありません

チェックが2つ以上の人:アイフレイルかもしれません。眼科専門医に相談してください

まとめ

アイフレイルは、加齢とともに進行する目の機能低下を指しますが、早期に発見し適切な対策を行うことで進行を遅らせることができます。

視機能の低下は生活の質に直結するため、紫外線対策やバランスのとれた食事など、できるだけ早い段階で予防に取り組むことが大切です。また、視力の衰えを自覚した際には、放置せずに早めに眼科を受診し、適切な治療や生活習慣の見直しを行うことがアイフレイルの進行を防ぐ鍵となります。

アイフレイルを予防し、できる限り長く健康な視力を維持できるよう心がけていきましょう。

監修者プロフィール

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

HP:https://www.keishin-eye.com/

山梨医科大学 医学部卒業後、慶應義塾大学 眼科学教室入局。米・ハーバード大学 公衆衛生学修士取得。慶應義塾大学 眼科学教室 特任講師。
眼科のなかでも「ドライアイ」を中心にした角膜の疾患を専門とする。日本におけるドライアイについての疫学研究の第一人者であり、近年増えている長時間のパソコン作業によるVDT(Visual Display Terminal)症候群などの研究を行っており、日本のドライアイの有病率、パソコン使用時間とドライアイとの関係について世界で初めて証明した。ドライアイにつながる危険因子を研究し、ドライアイ診断に関する国際的な基準づくりにも携わる。
予防医療の啓蒙活動にも力を入れ、『しまじろうとEye Care Book』幼稚園や保育園の先生の目の教科書となるような『子どもの目見守りサポートBook』を作成。
目の健康について学び、セルフケアができるよう、『ナカナイ涙』などのWebサイトの監修も手掛ける。

【所属学会】
日本眼科学会 / 日本眼科医会 / 日本角膜学会 / 小児眼科学会 / 日本弱視斜視学会 / ドライアイ研究会

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