メガネレンズ
最終更新日:2025.01.30

乱視用メガネの選び方は?乱視用レンズの仕組みや特徴も紹介

この記事の監修者

佐藤 香

アイケアクリニック本院院長、アイケアクリニック東京 院長

乱視用メガネの選び方は?乱視用レンズの仕組みや特徴も紹介

目次

「乱視用メガネってどう選べばいいんだろう?」とお悩みの方もいるかもしれません。

乱視とは、角膜や水晶体のゆがみのためにものが歪んで見えたり、ぼやけて見えたりする状態のことです。放置すると気づかないうちに目の負担が蓄積し、重症化してしまうかもしれません。気になる症状がある場合は、我慢せずに専門医に相談しましょう。

この記事では、乱視の見え方の特徴や原因、種類について詳しく解説します。また、見え方をチェックする方法、対策、眼鏡処方箋に記載される項目、メリットやデメリットなどについてもご紹介するため、乱視を矯正するためのメガネ選びの参考にしてください。

乱視とは何か

乱視は、角膜や水晶体のゆがみによって生じます。本来、何の問題もない完全な状態の角膜や水晶体では、光が網膜上の一点に集まります。しかし、現実には、多くの人は大なり小なりゆがみを持っており、焦点は一点には集まらずに像がぼやけてしまいます。

ほとんどの人の乱視は、近視や遠視と同じように矯正可能ですが、角膜の病気などが原因で起こった乱視は、完全に矯正することが難しい場合があります。

乱視には主に「正乱視」と「不正乱視」の2種類があります。

正乱視のイメージ

●正乱視:水晶体や角膜が一方向に歪んでいる状態です。水晶体や角膜のゆがみ方によって、見え方が異なり、ある方向からは問題なく明確に見えても、直行する線はクリアに見えないという特徴があります。

不正乱視のイメージ

●不正乱視:水晶体のゆがみ、または角膜の不均一なゆがみのために、網膜上に正常に像が結ばれない状態です。ものが何重にもぶれて見えるのが特徴です。不正乱視の原因には、角膜の損傷や、白内障初期に水晶体の一部が硬くなること、円錐角膜や翼状片などの角膜の病気などがあげられます。

乱視の主な症状

乱視の主な症状は以下のとおりです。

  • ものが歪んで見えたり、ぼやけて見えたりする
  • 目の疲れや頭痛、肩こりなどの身体的な不調を引き起こすことがある
  • 集中力の低下や作業効率の低下につながることもある
  • 遠くのものを見えにくく感じる
  • 極端に眩しく感じたりする

角膜のゆがみ方によって見え方は違います。縦方向に歪む人もいれば、横方向に歪む人もいます。乱視が進むと、ピントがまったく合わなくなる可能性もあります。また、乱視は視力低下につながるリスクを持つため注意が必要です。

乱視は徐々に進行することもあり、気づかないうちに目の負担が蓄積し、重症化してしまう恐れがあります。さらに、乱視は近視や遠視を併発していることも多く、複合的な視力の問題として現れることがあります。
このような場合、早期発見・早期治療が重要です。定期的に眼科で検査を受け、気になる症状がある場合は、我慢せずに専門医に相談してください。

乱視の見え方の特徴

乱視の見え方には、暗いと見えにくい、近くの小さい数字や文字が見えにくい、はっきり見えないなどの特徴があります。パソコン操作や自動車の運転など、実生活上でも影響があるため、知っておくことは大切なことです。

1.暗いと見えにくい

暗い場所では、乱視があると特にものがぼやけて見えにくくなります。これは、瞳孔が開いて多くの光が入ることで、乱視によるゆがみの影響がよりはっきりするためです。夕暮れ時や夜間の歩行時に特に注意が必要です。

2.近くの小さい数字や文字が見えにくい

乱視では、文字や数字が歪んで見えるため、「3と8」「1と7」「6と8」のような似た形の数字を見間違えやすくなります。読書や新聞、スマートフォンの操作時、また書類作成時などに苦労することが多く、目の疲れも感じやすくなります。

銀行ATMで暗証番号を間違えたり、レシートの細かい数字が二重に見えて合計金額の確認に時間がかかるなど、生活の中で困る場合もあるでしょう。

3.パソコン画面の線の太さが違って見える

角膜のゆがみによって、パソコン画面上の縦線と横線が異なる濃さや太さに見えることがあります。これは、ある方向の光がほかの方向より強く屈折するためです。長時間のパソコン作業で疲れやすくなるため、注意が必要です。

4.標識や看板がハッキリ見えない

道路標識の文字や遠くの看板がぼやけて見えたり、二重に見えたりします。特に運転に支障をきたす可能性があり、適切な視力矯正が必要です。車線変更のために道路標識を見た時、文字がハッキリ見えず、車線変更のタイミングが遅くなったり、距離感の把握も難しくなったりすることがあります。

例えば、高速道路の出口案内が二重に見えてしまったために出口を通り過ごしたり、駅のホームで電光掲示板の時刻表示がぼやけてよく見えず、電車の発車時刻を確認するのに近づかないと見えないなどが起こるかもしれません。

5.夜間の看板や街灯、車のヘッドライトが眩しい

夜間の看板や街灯の光がぼやけ、全方位に広がって見えたり、星のような光の帯として見えたりして眩しく感じます。このために、目印の看板を見つけられずに苦労した経験はありませんか。また、雨の日の夜間運転では、対向車のライトが特に眩しく感じられ、運転に集中しづらくなることもあります。

乱視を引き起こす原因

乱視を引き起こす原因には、以下があります。

  • 先天的なもの
  • 加齢
  • 外傷
  • 角膜の疾患

若年層では乱視の度合いが軽いと自覚されにくいことが多いですが、加齢により目の調整力が低下すると乱視を顕著に感じるようになります。このような場合は、たいていメガネで矯正可能です。一方で、目の外傷などの原因で角膜表面に起伏があると、ものがぶれて見えてしまいます。このような場合はメガネでの矯正は困難な場合が多いです。

乱視の5つの種類

先述した通り乱視は大きく「正乱視」と「不正乱視」の2つに分けられます。正乱視は、角膜が左右対称で特定の方向に歪んでいる状態で、メガネで矯正しやすいのが特徴です。不正乱視は、角膜のゆがみが不均一な状態で、正乱視に比べて矯正が難しい場合があります。さらに、正乱視は歪む方向によって3種類(直乱視・倒乱視・斜乱視)、不正乱視はゆがみのある部位によって2種類(角膜不正乱視・水晶体不正乱視)に分けられます。

直乱視

直乱視は、角膜の縦方向の屈折が強い乱視です。若年層に非常に多く見られるタイプで、メガネやコンタクトレンズによる矯正が比較的簡単です。遠くのものがぼやけて見えたり、縦線が強調されて見える特徴があります。乱視の分類の中では最多です。

倒乱視

角膜の横方向の屈折が強い乱視です。高齢者に多く見られ、年をとるにつれて直乱視からシフトする人も多いタイプです。倒乱視では横線が強調されて見えますが、メガネやコンタクトレンズなどの標準的な視力矯正で対応可能です。

斜乱視

斜乱視とは、斜め方向に歪んで見える乱視です。斜めの線は見えやすいけれども、直行する斜めの線は見えづらく、しかもものが二重にぶれて見える傾向もあります。通常の方法で矯正は可能ですが、度数の調整には特に慎重な対応が必要です。

角膜不正乱視

角膜の形状が不規則に歪んでいる状態です。外傷や手術後、角膜疾患などが原因で発生することが多く、乱視の片眼で見ると、いくつにもぶれてしまうという特徴があります。通常のメガネやコンタクトレンズでは十分な矯正が難しい場合もあります。

水晶体不正乱視

水晶体不正乱視とは、水晶体の形状や位置によって屈折の不均一な異常が起こる状態です。先天的な要因や加齢、白内障の初期のような水晶体疾患などが原因の乱視です。特殊なコンタクトレンズや手術による治療が必要になることもあります。

乱視の見え方をチェック

乱視は程度の差はありますが、大半の人が持っています。軽度であれば矯正する必要のない状態です。乱視をチェックするための方法として、ここでは、直乱視、倒乱視、斜乱視の見え方をご紹介します。以下の放射状に描かれた線がどう見えるかを片目ずつチェックしてみてください。

直乱視

直乱視の見え方イメージ

正視では均等に見える線が、直乱視では垂直の線はハッキリしているけれど、水平の線がぼやけて見えます。

「縦書きの文字は読みやすいのに、横書きの文字は読みにくい」と感じることがあるかもしれません。このような症状がある場合は、眼科で検査をしてください。

倒乱視

倒乱視の見え方イメージ

正視では均等に見える線が、倒乱視では水平の線がハッキリと見え、垂直の線がぼやけるという状態で見えます。

「横書きの文字は読みやすいのに、縦書きの文字は読みにくい」というのが特徴です。加齢とともに直乱視から倒乱視に変化することもあります。

斜乱視

斜乱視の見え方イメージ

斜乱視では斜めの線がハッキリと見えるのにもかかわらず、その線に直角に交わる線は見えにくいという状態です。

文字や画像が斜めに歪んで見えたり、二重に見えたりすることがあります。特定の方向の線がくっきり見え、それと直角に交わる線がぼやけるのが特徴です。

乱視になった時の対策

「乱視かな」と感じた場合には、眼科を受診しましょう。乱視の検査は、上記でも述べた放射状に描かれた線の見え方や機械を利用して実施します。矯正はメガネではなく、コンタクトレンズを用いる方が良い場合もあるため、専門医への相談が必要です。

通常の正乱視では、一般的にメガネ、コンタクトどちらも円柱レンズで矯正することができます。メガネは目への負担を最小限に矯正できるため、安全に矯正したい場合にはメガネがおすすめです。

乱視用のメガネと言うと、レンズが厚くなる印象がありますが、現在は薄いレンズなどさまざまな選択肢があります。軽度の乱視であれば、ソフトコンタクトレンズを使って矯正することも可能です。しかし、角膜や水晶体の表面がデコボコしている不正乱視の場合、メガネやソフトコンタクトレンズを使った矯正は難しく、ハードコンタクトによる矯正が必要となります。さらに、乱視の症状が重症化した場合には、手術が必要な場合もあるでしょう。

また、進行性の疾患で乱視をきたしている場合もあるため、定期的に検査をすることが重要です。特に子供の場合、乱視による視力低下が学習に影響を与える可能性もあり、早期発見・早期治療が望ましいとされています。矯正方法の選択は、生活スタイルや仕事内容、スポーツ習慣なども考慮しながら、眼科医と相談して決めることをおすすめします。

乱視の場合、眼鏡処方箋に
記載される項目

乱視で眼科を受診した場合に、発行されるメガネの処方箋には、CYL(Cまたは円柱)とAXIS(AXまたは円柱軸)という2つの項目が記載されています。合わないメガネでは、見え方に違和感を覚えることがあるため、メガネ作製には注意が必要です。ここでは、CYLとAXISの2つについて、詳しく説明します。

CYL(Cまたは円柱)

CYLは乱視の矯正に必要な度数を表しており、乱視矯正が必要な場合にのみ記載されます。近視は「-」もしくは「凹」、遠視は「+」もしくは「凸」と表されます。乱視の程度が大きい程、0から離れた大きい数値になります。大半の人には軽重の差はあっても乱視があり、軽度であれば矯正しなくても良いため、記載されません。中度の乱視だと「±1.25〜2.00」、強度の乱視では「±2.25~3.00」となります。

AXIS(AXまたは円柱軸)

AXISは乱視の角度を表し、0~180の数値で記載されます。乱視軸は人により様々です。しかし方向を間違えると見えづらくなります。AXISはCYLと必ずセットで記され、矯正が必要ない場合は記されません。

乱視があると、視界がぼやけたり、文字が二重に見えたりするばかりでなく、パソコン作業や夜間運転時に疲れやすく、頭痛の原因にもなることがあります。適切な矯正でこれらの症状は改善可能です。また、乱視の程度は個人差が大きく、軽度の場合は自覚症状がないこともあります。

乱視用レンズの
メリットとデメリット

乱視用レンズには、縦方向に円柱を切り取った形「円柱レンズ」を使います。近乱視メガネに使うのが凹円柱レンズ、遠乱視の場合は凸円柱レンズです。乱視用レンズには光が入ってくる方向によって屈折させる力が異なるため、2つの焦点を持つ特徴があります。

乱視用レンズのメリット・デメリットは以下のとおりです。

メリット

  • 固定レンズのためはっきりとした快適な見やすさが続く
  • 矯正すると頭痛や肩こりが減るなど体調が良くなる

デメリット

  • 距離感がつかみにくい
  • 慣れるまでの間はものの形が歪むなどはっきり見えないことがある
  • 不正乱視の場合は矯正できない

乱視用レンズのメガネは、慣れるまでに時間のかかる場合があります。使い続けても見え方に満足できない場合には、医師に相談するほか、乱視用コンタクトレンズに換える方法もあります。

乱視用レンズを選ぶ際は、フレームの形状も重要な要素です。レンズの中心から目の位置がずれると矯正効果が低下するため、顔の形に合ったフレームを選び、適切な位置に調整してもらうことが大切です。乱視用メガネを作る時には、実際に度無しのフレームをかけてみて、形状を確認しましょう。また、度数が強い場合は薄型レンズを選択すると見た目の違和感を軽減できます。

乱視用レンズの種類

乱視用レンズでは、乱視の矯正のために円柱レンズが使われます。

  • 凸レンズ:「2つの円柱側面」で囲まれたレンズを通った光を収束するレンズ
  • 凹レンズ:「円柱側面と平面」で囲まれた拡散するレンズ
  • 乱視用コンタクトレンズ

近視用乱視レンズ(凹レンズ)

近視用の乱視レンズである凹円柱レンズは、直方体(長方形の立方体)の長方形部分を円でくり抜いた先のような形をしています。

遠視用乱視レンズ(凸レンズ)

凸レンズと凹レンズの違い

遠視用の乱視レンズである凸円柱レンズは、円柱を切り取ったような形をしています。
通常、乱視用レンズは一般的なレンズより厚めになりますが、近年の技術進歩により薄型化が可能になっています。

乱視用コンタクトレンズとの違い

乱視用のコンタクトレンズも、乱視用レンズである凸円柱レンズ・凹円柱レンズと同じ仕様になっています。乱視でないコンタクトレンズはまばたきで回転しますが、乱視用コンタクトレンズの場合は、上下があるため、まばたきで回転しない設計になっているのが特徴です。
装着時は目印を目安に向きを合わせる必要がありますが、慣れれば簡単に装着できます。また、メガネと比べて視野が広くなるメリットもあります。

乱視用眼鏡で疲れる理由

乱視には2つの度数があるため、一つのレンズの中に異なる度数を組み込まなければなりません。多くの眼鏡店で販売されている種類の片面非球面レンズに2つの度数を加えると、混ざり合って歪んでしまい、見えにくさや疲れを感じる原因になります。度数を下げることで見えにくさを解消している場合もありますが、低矯正状態となり、快適な視界が得られないことがあります。

こういった状況を改善するために考案されたのが「両面非球面レンズ」です。レンズの両方が非球面になったこのレンズは、「両面非球面レンズ」と呼ばれています。両面非球面レンズは、ゆがみを軽減しより快適な視界を提供する設計ですが、取扱店が限られており、価格や見え方にも違いがあります。購入の際には、取扱店を探し、専門家に相談して詳しい説明を受けることが大切です。

よくある質問

ここでは、乱視用メガネに関するよくある質問への回答を掲載します。参考にしてください。

乱視は矯正する必要がありますか?

乱視があっても軽度で日常生活に支障がなければ、矯正は必ずしも必要ではありません。しかし、見えにくさが原因で、頭痛がする、肩こりがひどいなどの問題がある場合には、矯正した方が良いでしょう。また、乱視が軽くても視力自体が低くハッキリ見えない場合には、つまずいて転ぶなど生活に支障をきたす可能性があるため、矯正がおすすめです。

乱視メガネは慣れるまでにどのくらいかかりますか?

乱視用メガネでは、物体のサイズや距離感が変わるため、かけ始めは脳の認識が整うまでに時間がかかり違和感を覚えがちです。人間は目で見た情報を、脳へ伝えて認識しています。そのため慣れるまでには2〜3週間程度を目安に待ってみましょう。特に、階段の昇り降りや運転時は慎重に行動し、徐々に使用時間を増やしていくのがおすすめです。

まとめ

乱視の見え方の特徴や原因、種類、見え方をチェックする方法、対策、眼鏡処方箋に記載される項目、メリットやデメリットなどについて解説しました。

乱視は、角膜や水晶体のゆがみが原因で起こる状態で、放置すると気づかないうちに目の負担が蓄積し、重症化してしまうかもしれません。気になる症状がある場合は、我慢せずに専門医に相談し、メガネやコンタクトレンズで矯正しましょう。

監修者プロフィール

佐藤 香

アイケアクリニック本院院長、アイケアクリニック東京 院長

HP:https://www.eye-care-clinic.jp/

著 書

『年間2,000件の白内障手術を手掛けるスゴ腕ドクター佐藤香院長の白内障治療Q&A』(幻冬舎)/ 『スゴい白内障手術』(幻冬舎) / 『目は若返る 50歳からの眼科治療』(幻冬舎)

年間2,000件以上の手術を行う。 とくに最先端の多焦点眼内レンズの豊富な知識を駆使して、多焦点眼内レンズと白内障レーザー手術において抜群の治療実績を誇る。その他、網膜硝子体や緑内障の手術も担当。
まぶたの手術やボトックス注射など、眼科医としての視点を活かした目周りの美容にも注力。また、校医を務めるなど、地元住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。日々のちょっとした悩み相談から高度な治療まで、総合的な目のケア一「トータルアイケア」の提供を目指す。
現在、注目の眼科女医として、テレビやラジオ、新聞、雑誌など、さまざまなメディアに取り上げられている。

【所属学会】
日本眼科学会 / 日本白内障屈折矯正手術学会 / 日本眼科手術学会 / 日本緑内障学会 / 日本近視学会

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