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家の中では老眼鏡、屋外ではサングラスと、2つのメガネを用意してもそのたびにかけ替えるのは面倒なもの。そんな悩みを解決してくれるのが、「調光レンズ」です。
この記事では、老眼鏡とサングラスを兼用できる調光レンズの便利な機能と、老眼鏡をかけたまま運転することの危険性、そして安全な運転に適したメガネの選び方について詳しく解説します。
老眼鏡・サングラスを共用できる
調光レンズとは
調光レンズとは、紫外線の量に反応してレンズの色の濃さが自動的に変化するレンズです。室内や夜間など紫外線のない場所では、ほぼ無色透明のクリアなレンズで通常のメガネとして使用できます。一方、日中の屋外など紫外線の強い場所に出ると、レンズがある程度発色します。
そして、老眼鏡に調光機能を加えることにより、室内では「老眼鏡」として、屋外では紫外線から目を守る「サングラス」として使えるようになります。1本で2つの役割を果たし、メガネのかけ替えが不要になるため、様々なシーンで快適に過ごせる点が大きなメリットです。
調光レンズの仕組み

調光レンズには、紫外線に反応して性質が変化する特殊な素材が使われています。代表的なものとしてハロゲン化銀があり、レンズに練り込まれている場合や表面にコーティングされている場合があります。この素材が紫外線エネルギーを吸収すると化学構造が変化し、レンズが色づく仕組みです。
色の変化に影響を与えるのは「紫外線量」や「気温」です。一般的に、気温が低いほど色が濃くなる傾向があります。カラーバリエーションもグレイ、ブラウン、グリーン、ブルーなど複数あり、ファッションや用途に合わせて選べます。
老眼鏡(リーディンググラス)
とは

老眼鏡(リーディンググラス)とは、加齢によって目のピント調節機能が衰え、近くのものが見えにくくなる「老眼(老視)」のためのメガネです。一般的に、新聞やスマートフォンの文字など、手元から30cm~50cm程度の近距離にピントを合わせた「近用単焦点レンズ」が使われます。
老眼鏡をかけたまま遠くを見ると、景色がぼやけてしまうため非常に危険です。特に、老眼鏡をかけたままの運転は絶対にしてはいけません。
また、老眼鏡の印象をやわらげたい、室内での軽い眩しさを抑えたいといった場合に、ごく薄い色のカラーレンズを入れる選択肢もあります。
運転に適したメガネの特徴
安全な運転のためには、遠くの道路標識や信号、歩行者などがはっきり見える、遠方視力が不可欠です。老眼が始まっている方で、遠くの景色と手元のカーナビや計器類の両方をスムーズに見たい場合には「遠近両用レンズ」が非常に有効です。
遠近両用レンズは、1枚のレンズの中に遠くを見るための度数と近くを見るための度数が設計されており、視線を動かすだけで遠方と近方の両方にピントを合わせられます。
また、フレーム選びも重要です。死角を減らし広い視界を確保するために、レンズの上下幅(天地幅)が30mm以上あるフレームが推奨されます。快適なドライブのためには、長時間の運転でも疲れにくい軽量素材を使用し、顔にしっかりフィットするフレームを選ぶようにしましょう。
夜間運転可のカラーレンズ
夜間の運転では、対向車のヘッドライトや街灯の光が眩しく感じることがあります。この眩しさを軽減するために開発されたのが、夜間運転用のカラーレンズです。特定の波長の光をカットすることで、光のギラつきやにじみを抑え、コントラストを高めて物が見やすくなる効果が期待できます。
ただし、夜間にサングラスを使用する際は注意が必要です。日本産業規格(以下JIS規格)では「可視光線透過率75%未満のレンズは、薄暮または夜間使用禁止」と定められています。そのため、夜間運転のためのレンズを選ぶ際は、必ず基準をクリアしているのを確認しましょう。
可視光調光の調光レンズ

従来の調光レンズは、紫外線に反応して色が変わる仕組みでしたが、近年、多くの車にUVカット機能付きのフロントガラスが備わっているため、レンズまで紫外線が届きにくくなっています。このため、車内では色が変化せず、眩しさを抑えられなくなってきました。
この弱点を克服したのが「可視光調光レンズ」です。このレンズは紫外線だけではなく、可視光線にも反応して色が変化します。そのため、UVカットガラスの車内でも日差しの強さでレンズ濃度が自動で調整されます。
眩しさ対策に偏光レンズ

日中のドライブで、路面からの照り返しや対向車のボディの反射光が特に気になる方には、「偏光レンズ」がおすすめです。
特に、日差しの強い夏場や、西日が厳しい時間帯の運転、また釣りやスキーなどのレジャーシーンでその効果を大きく発揮します。ただし、偏光レンズはカーナビやスマートフォンの液晶画面を見ると、角度によって暗くなったり虹色に見えたりすることがあるため、購入前に見え方を確認するのが大切です。
運転に不向きなメガネの特徴
運転に最も不向きなメガネは、手元専用の老眼鏡(近用単焦点レンズ)です。老眼鏡をかけて運転すると、遠くの景色が全く見えず、重大な事故につながる可能性があり非常に危険です。
また、レンズの色が濃すぎるサングラスも運転には適しません。特に、可視光線透過率が8%未満のレンズは、日中であってもトンネル内など暗い場所に入った際に視界が著しく悪化するため、運転用としては使用できません。夜間は、可視光線透過率75%未満のレンズは不適合です。
その他、非常に小さい円形や長方形のレンズを持つフレーム等、デザイン性を重視した視界の狭いフレームも危険なため避けましょう。
運転用のメガネが見えにくい場合
運転用のメガネが見えにくい原因は、主に次の2つです。
- 度数が合っていない
- 遠近両用レンズに慣れていない
視力は生活習慣や体調によっても変化します。特に自覚がなくても視力は少しずつ変化している場合があるため、「見えにくいな」と感じたら、まずは眼科や眼鏡店で視力測定して、現在の目の状態に合った度数に調整することが重要です。
また、遠近両用レンズは1枚のレンズに複数の度数が入っているため、特有の視野の歪みや揺れを感じることがあります。使い始めは戸惑うことも多く、慣れが必要です。家の中など安全な場所で装用時間を少しずつ延ばしていき、目を慣らしていくことが大切です。運転で使う際は、左右の安全確認やバックミラーを見る時に、目線だけでなく顔ごとしっかりと向けるように意識すると、違和感が少なくなりやすいでしょう。
これらの方法を試しても改善しない場合は、ほかの原因も考えられるため、購入した眼鏡店や眼科医に早めに相談してください。
まとめ
今回は、1本で老眼鏡とサングラスの役割を果たす「調光レンズ」と、運転時のメガネ選びについてご紹介しました。
メガネをかけ替える手間が省ける調光レンズは非常に便利ですが、老眼鏡をかけたままの運転は大変危険です。遠近両用レンズや、運転環境に特化したレンズなど、現代のメガネ技術はあなたの生活をより快適で安全なものにしてくれます。この記事を参考に、ライフスタイルや目の状態に合った最適な一本を見つけましょう。