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親の目が悪いと、子供も遺伝で目が悪くなるのでは?と心配する人は多いのではないでしょうか。
視力の低下は遺伝の可能性もありますが、それだけとは言い切れません。また、視力が低くなりつつあっても、早めの対策で進行を遅らせることが可能です。
この記事では目が悪くなる原因の説明と、視力を低下させないための対策をご紹介します。子供の視力低下が気になる方は、子供の出すサインや、子供向けの対策も紹介していますので、参考にしてください。
※本記事内で以下「目が悪い」というのは、矯正視力が出ない疾患のことではなく、「裸眼視力が低い」ことを指します。
子供の視力は低下している
近年、子供の裸眼視力は低下傾向にあるといわれています。
文部科学省が実施した令和3年(2021年)の「学校保健統計調査」の結果、裸眼視力1.0未満の児童の割合は、小学1年生で4人に1人、小学3年生で約3人に1人、小学6年生では約半数でした。
小学6年生で50%に達した後、増加割合はゆるやかになりますが、いずれにせよ年齢が高くなるにつれおおむね増加する傾向にあります。
また、小学生全体の比較では、1979年の調査では裸眼視力1.0未満の者は17%だったのに対し、2021年では36%にまで上昇し約2倍になりました。
文部科学省でも子供の視力の低下は問題視されており、その多くは近視であるため、近視への対策が必要とされています。
( 出典 : 【R3学校保健統計】確報値公表1130 https://www.mext.go.jp/content/20221125-mxt_chousa01-000023558.pdf )
視力が悪化する原因は遺伝?
視力が低下する原因には、遺伝によるもの(先天的)と環境によるもの(後天的)があります。
先天的要因による視力低下
先天的な視力低下の原因は遺伝による影響が多く、元々の眼球の大きさによって視力が悪化しやすい場合があります。親子は顔や骨格が似るように眼球もよく似た造りになるからです。
生まれつき眼球が大きいと、目の焦点が網膜の手前で合わさるため近視の目になり、これを軸性近視といいます。親が強い近視の場合、子供の眼球も大きいことが多く、同じような近視になることがあります。
軸性近視は、遺伝以外にも成長によって起こることがあります。成長期の子供は眼球も発達して大きくなるため、ピントが合いにくく近視になる場合もあります。成長が止まる20代後半までは、視力は変動するといわれています。
一方、生まれつき眼球が小さく、焦点が網膜の後ろにいく軸性遠視によって、視力が低下している可能性もあります。
視力が低下する原因は様々であり、遺伝だけが関係しているとは言い切れません。近年の大幅な視力低下者の増加は、むしろ環境による後天的要因が関係している可能性があります。
後天的要因による視力低下
前述のように子供の近視の割合が増えています。これにはスマホやパソコンなどのデジタル機器の使用頻度や時間の増加など、以前と変化した生活環境が影響していることが考えられます。これらの生活環境の変化によって、目の使い方も変わり、視力低下につながっている可能性があるとも言えます。
生活環境が原因で
目が悪くなることも
視力低下の原因は後天的な環境によるものが多いことが分かりました。では、具体的にどのような環境が影響しているのか詳しくみていきましょう。
長時間の近距離作業
現代人は子供から大人まで、スマホやテレビ、パソコン、ゲームなど何かを近くで見ることが多い生活を送っています。
近くを見る時の目は、水晶体(目の中でレンズの役割をするもの)や毛様体という目の筋肉を使って近くにピントを合わせています。目を長時間緊張させている状態になるため、眼精疲労を引き起こし、ピントの調節ができない状態になります。
暗いところで物を見る
暗いところで物を見ていると、目が疲れて視力低下の原因になります。
目は暗いところでは瞳孔が開き、明るいところでは瞳孔は閉じます。これは目に入る光の量を瞳孔が調整しているからです。瞳孔が開いている状態では近くにピントを合わせることは難しいため、目の筋肉はそれでもピントを合わせようとします。その結果、目が疲れてしまうのです。
上記のような生活を送っている人は、目を疲労させない環境や生活習慣を普段から意識してみましょう。
遺伝でも諦めないで!視力を低下させないための対策を紹介
もしも「自分の子供の目が悪い原因は、遺伝かもしれない」と思っても、諦めることはありません。たとえ近視であっても、現在の視力を維持し、進行を軽減する方法があります。
今からでもできる視力低下対策をご紹介しますので、是非取り入れてみてください。
近距離作業を減らす
視力の低下を防ぐためには、生活環境を見直すことが有効です。
裸眼視力低下を防ぐために、以下のことに気をつけましょう。
- テレビやスマホを使う時間を決める(40分以上は続けない方がおすすめ)
- 目が疲れたら休憩を取り、体を動かすか、遠くを見る
- 正しい姿勢を意識し、本などは30~40cm、テレビは2~3m程度離すようにする
- 読書やパソコン作業は背筋を伸ばして作業する(左右どちらかの目の距離が近くならないように均等な位置になるようにする)
- 部屋は適度な明るさを保つようにし、直射日光はカーテンなどで遮る
- 定期的に眼科での診察を受ける
目が疲れていると感じたら、遠くを見るようにしましょう。遠くを見ることは、目の筋肉の緊張がほぐれ、ピント調節機能を回復させることができます。
外での活動を増やす、目安は1日2時間以上
「小学生の視力低下と規定要因に関する分析」の論文によると、外での活動が多い子供は目が良い傾向があることが分かりました。
また、外遊びは近視の進行を抑制する可能性があるという研究結果が多数あり、1日2時間以上の外遊びが効果的とされています。
外で遊ぶことで、スマホ使用などの近距離作業を減らせる効果もあります。子供にとって、外で思いっきり体を動かすことは、身体的にも目にとっても大切なことです。
目の健康維持はもちろん、スポーツなどをすることで動体視力を養うことにもなります。慶応義塾大学医学部の研究チームによると、太陽光に含まれる「バイオレットライト」が近視の進行を抑える可能性があることが分かりました。
バイオレットライトは日陰や曇りの日でも浴びることが可能ですので、すでに近視といわれている子供は積極的に効率よく浴びることをおすすめします。ただし、暑い時期は熱中症対策やこまめな水分補給を忘れず野外活動を行いましょう。
定期的に視力をチェックする
子供は成長期に身長が伸びるとともに目も大きくなり、近視が進みます。
小学生の視力低下のスピードは、大人よりも早いため、気づいた時にはかなり悪化していたということがないように、定期的な視力検査が必要です。
現在、学校の視力検査では数値ではなくABCDで表すように検査が簡略化されています。
視力Bは「0.9〜0.7」、視力Cは「0.6〜0.3」と幅があるため、視力の変化に気づきにくくなっています。
子供は自分では目が見えにくくなっていることにあまり気づかず、親にも言わないことがあります。そのため、視力の低下だけでなく、斜視や弱視など早期発見と対処が必要な症状にいち早く気づくためにも、定期的に眼科で視力検査を受けることをおすすめします。
視力検査について詳しく知りたい方は「視力検査とは?やり方から適切な頻度、考えられる病気まで解説!」の記事も参考にしてください。
子供の視力低下のサインを見逃さない
学校の視力検査が簡略化されたことで、数値での変化が分かりづらくなっています。子供を持つ親御さんは、子供の出すサインを見逃さないことが大切になります。
以下のような子供の動作は、視力低下のサインかもしれません。
- 目を細めて見ている
- テレビとの距離が近い
- 落ち着きがない
- 頻繁に目をこする
- (よく見えていないことで)物にぶつかったり、つまづいたりしてケガをする
子供に学校の様子を聞く際に、授業中に黒板が見づらくないか、ぼやけて見えることはないか、と見え方も聞いてみましょう。
今までは目が良かった子供でも、成長と共に近視になる可能性が高いため、子供のサインを見逃さず、目の健康を守ることも大切です。
適切にメガネをかけて目をサポート
視力が低下してもメガネをかけずに生活し続けると、さらなる視力低下につながる可能性があります。
ぼやけた物を見続けていると眼球が伸びてしまい余計見えにくくなります。見えにくい物を見ようとすることで、目の筋肉は緊張し、近視の進行につながる場合があるからです。
また、目に対してメガネの度数が強すぎると、目はより緊張を強いられることになり逆効果になります。目に合った適切な度数のメガネを使用するためには、必ず眼科で検査・測定しましょう。
子供のメガネは視力0.7未満、大人は生活環境による
視力が低下したことで遠くの黒板が見えづらかったり、ぼやけて見えたりすると、学校での勉強や生活に影響が出てきます。授業についていくことが難しくなったり、ケガなどしたりする前に問題がない程度の視力に矯正しましょう。
学校では授業に必要な視力は、両眼で0.7といわれています。裸眼視力が両眼で見ても0.7未満になり、授業中に不自由を感じてきたら、メガネをかけた方が良いでしょう。視力がさらに低下して、普段から目を細める傾向があるようなら授業以外でもかけることをおすすめします。
大人の場合は、視力がどのくらいならメガネをかけ始めるべきか、という明確な基準はありません。0.4以上の視力があれば、普段の生活には問題がないといわれていますが、その人の職業やライフスタイルによって、必要な視力が異なります。
メガネをかけ始める視力の目安が気になる方は「視力がどのくらい下がったらメガネをかけるべき?目安や正しい矯正方法を知ろう」の記事で詳しく解説しています。
子供は視力が変化しやすいため、眼科で視力検査を受けましょう
子供が遠視で視力が低下している場合、メガネの装用は特に大切です。小さな子供が遠視の場合、目の発達そのものが妨げられて良い矯正視力を得られなくなる可能性があるからです(弱視といいます)。
成長期の子供は度数が変わりやすく、また成長に伴ってメガネのかけ心地が悪くなり、ズレやすくなることがあります。1年に1度は眼科で矯正視力の検査をし、適切な度数のメガネに調整し、きちんとフィッティングしてもらいましょう。
まとめ
今回は、視力低下の原因には、遺伝による先天的な要因と、環境による後天的な要因があることを解説しました。目が悪くなる原因は決して遺伝だけではなく、むしろ生活環境の影響が大きいことが分かりました。
年齢が高くなるにつれて、近視による視力低下は進行する傾向にありますが、対策することで低下の速度をゆっくりにすることが可能です。
子供の視力低下が気になる方は、親だけが対策を取り入れようとするのではなく、親子で一緒に行うことでコミュニケーションをはかりつつ、視力低下を予防していきましょう。
この記事を参考に生活環境の見直しをして、子供の目の健康を守ってください。