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最終更新日:2023.03.01

色覚検査とは?具体的な検査内容などを画像つきで徹底解説!

この記事の監修者

原 修哉

原眼科クリニック 院長

色覚検査とは?具体的な検査内容などを画像つきで徹底解説!

目次

子供が学校の健康診断で色覚異常の疑いがあると告げられたり、年齢を重ねるごとに色の見え方が変わったりしたら、不安になりますよね。

今回は、そもそも色覚異常とは何か、色覚検査とはどういう検査なのかについて画像つきで詳しく解説します。

また、色覚異常がある方が進学や就職について考える際のポイントや、日常生活で気をつけるべきこともご紹介します。

そもそも色覚異常とは?

色覚異常の方の見え方との比較の図

「色覚異常」とは、一般的に正常とされる方とは異なる色の見え方や感じ方をする状態を表します。
色を判別する目の機能「色覚」に異常がある場合に、特定の色の識別機能が弱くなったり、微妙な色の区別がつきにくくなったりといったことが起こります。

見え方の一例をあげると、次の画像の左側が正常な見え方で、右側が色覚異常の一種である「先天赤緑色覚異常」と診断された方の見え方のイメージです。

色覚異常には、原因が遺伝的なものである先天色覚異常と、加齢や他の眼病の症状の一つとして色覚に異常をきたす後天色覚異常があります。
先天色覚異常と後天色覚異常について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。

色覚異常を調べる
「色覚検査」とは?

「色覚検査」には、色覚異常の有無を調べるスクリーニング検査と、色覚特性の異常の程度を測る詳細検査の二つのタイプがあります。

ここでは、学校の健康診断でも行われる色覚検査表を用いた検査から、詳細な色覚検査まで詳しく解説します。

色覚検査① 石原式色覚異常検査

石原式色覚異常検査は、明度や彩度が異なる多数の丸模様を無作為に配置した検査表を用いたスクリーニング検査です。
図の中にある文字や形を被検者に読み上げてもらい、誤読数で色覚異常の有無を調べます。

色覚検査表には、色覚に異常がある方にとって見分けにくい組み合わせの数字と背景が使用されています。
そのため、色覚が正常な方には容易に判別できる図も、色覚に異常があると判別できなかったり、反対に色覚に異常がある場合には濃淡が強調されて判別されたりします。

実際に、石原式色覚異常検査表の一部の例を見てみましょう。

石原表1類表の例

石原表1類表の例

石原表1類表は、色覚の正常・異常に関わらず数字を読むことができます。

石原表2類表の例

石原表2類表の例

石原表2類表は、色覚が正常な場合と異常な場合で判読できる数字が異なります。
この場合色覚が正常であれば74と読め、異常があると21となります。

石原表3類表の例

石原表3類表の例

石原表3類表は、色覚が正常であれば6と読め、異常があると判読不能となることが多いです。

石原表4類表の例

石原表4類表の例

石原表4類表は、色覚に異常があると色覚特性で2となり、正常だと判読できないことが多いです。

こうした色の見え方の特性を利用することで、被検者がどの色を識別しにくいのか、大まかに判定します。

(画像出典:池袋サンシャイン通り眼科診療所 / 石原式色覚異常検査表 https://www.ikec.jp/inst/i_shikikaku/

※この記事に掲載された写真は参考資料です。検査に使用することはできません。

色覚検査② 色相配列検査(パネルD-15)

色相配列検査(パネルD-15)

色相配列検査は、スクリーニング検査で色覚に異常があると判定された被検者の、色覚異常の程度を分類する検査です。

色相配列検査に使用する検査用具「パネルD-15」は、左端に固定された基準色のパネル(色票)と15色のパネル、ケースと記録用紙から構成されています。

検査では、固定された基準色パネル以外のパネルをケースの外にばらばらにして置き、基準色のパネルの隣に、最も近いと感じる色を順に並べるよう被検者に指示します。

以降はこれを繰り返し、すべてのパネルを並べ終えたらケースの蓋を閉めて裏返しにし、パネルの裏側に記載された数字を記録用紙に写します。

1から15までのパネルが正しく並んでいるか、1つから2つ前後が間違っている程度であれば色覚は正常と判断されます。

明らかに順序が乱れている場合は、記録用紙の下にある図中の点を、基準色のパネルから番号順に線で結びます。
引かれた線の形により、被検者の色覚異常の種類を判定することができます。

(画像出典:的場眼科クリニック / 色覚異常・色覚検査について https://matoba-eye-clinic.jp/

色覚検査③ アロマノスコープ検査

アノマロスコープ検査は、被検者に特定の光を提示して簡単な等色法(色合わせ)を行い、色覚異常の型や程度を判定する色覚検査です。

スクリーニング検査では色覚異常の医学的な診断を下すことはできません。
対してアノマロスコープ検査は、色覚検査の中で唯一確定診断が可能とされる検査です。

アノマロスコープを覗き込むと、上半分の円に赤色と緑色の混ざり合った光が、下半分の円には黄色の光が見えます。

検査は、被検者にアノマロスコープを覗き込んでもらい、上半円の赤色と緑色の混合比を調整し、下半円と同じ黄色になるポイントを探します。
その時の赤色と緑色の混合比や光の強さ、同じ色に見える範囲などから色覚異常の型や程度を判定します。

アノマロスコープ検査の際に注意すべき点は、目の色順応です。
アノマロスコープをしばらく覗いているうちに、上半分の赤・緑色と下半分の黄色の光に対して色順応が起こると色味が徐々に薄くなり、上下の円の色が均等になることがあります。

そのような状態になると、正確な検査結果が得られません。
スムーズかつ的確に検査を実施できるよう、高度な検査技術と豊富な経験が求められる検査です。

色覚検査④ ランタン・テスト

ランタン・テストは、色覚異常の程度を判別する検査です。
色相配列検査の結果中等度以下と判定された方に対して、更に中等度か軽度かを判別するために実施されます。

鉄道や船舶、航空など、信号灯の色を間違いなく識別しなければならない職業において、色の適性検査が必要であることから作られました。

検査器具には信号灯のような小さな光が上下に配置されており、その光が赤・緑・黄色の2色ずつの組み合わせでランダムに9回切り替わります。
提示された光の色の名前を被検者に回答してもらい、その正誤で判定します。

色の名前を回答する必要があるため、他の色覚検査とは異なり、被検者がどの色をどのように認識しているのかを明確に知ることができる点が特徴です。

また、色覚に異常がある方にとってランタン・テストは難易度が非常に高く、相当軽度でなければパスすることができません。
そのため、比較的軽度の色覚異常をさらに細かく分類するためにも用いられます。

色覚異常による
業務への支障の目安

色覚異常の方は、色覚正常とされる方と比べて色を見分けることが困難であるため、一部の職業において業務に支障をきたす可能性があるとされています。

車の運転を例にあげると、信号灯の色を見分けるために色覚異常の方が要する時間は、色覚異常の程度にもよりますが正常な方よりも長くかかります。
色を見誤ると危険に直結することから、警察・防衛省・自衛隊・消防・航空・船舶に関する職種は、たとえ軽度であっても色覚異常の方に適しません。

他にも、強度の色覚異常の場合には、“色”そのものを扱う専門職や、血液や肌の色などで患者の健康状態を図る医療関係の職種などは、円滑に業務を遂行することは難しいでしょう。

ですが色覚異常の方でも、一般事務などの色の識別が必要とされない職業であれば問題ありません。

色覚特性に異常があると
いわれたら?

色覚異常があっても生まれつきであればその見え方が当たり前であるため、日常生活上に不自由を感じることはほとんどありません。
ですが将来的に、色覚特性が原因で希望の職種に就けないといったこともあり得ます。
色覚検査を受けて色覚特性に異常があるといわれた時に、取るべき対策を解説します。

1:進学について

受験勉強する学生

2002年までは小学校4年生全員に対して色覚検査が実施されていましたが、「差別につながる」という理由で、2002年に学校保健安全法施行規則の一部が改正され、健康診断の必須項目から除外されました。

以前は入学を制限していた大学や専門学校もありましたが、近年ではほとんど見られなくなりました。とはいえ、色覚特性に異常がある方でも問題なく学習できると保障されているわけではありません。

自分の色覚特性を知らずに進学して、就職活動をする時になって色覚異常があるため希望の職種に就けないと分かった場合、そこから進路を変更するには大変な労力が必要です。人生の目標を失うことにもなりかねず、精神的なダメージも大きいでしょう。

色覚異常があると診断されたら、仮に日常生活で困っていなくても詳細な検査を受け、色覚特性をきちんと把握した上で進路を決めましょう。

2:就職について

色覚異常がある方の雇用に関する制限は緩和されていますが、その分、本人が自身の識別能力を把握して業務上の失敗回避の対策を講じなければなりません。

色覚異常があっても、色以外の情報で確認を行うなどすれば大抵の業務は遂行できるとされますが、断続的な緊張状態と不断の努力を強いられる可能性があります。

万が一、色の識別が困難であったことから事故が起きてしまったとしても、本人の不手際とされる可能性もあります。
それでも継続して勤めるのか、転職するのかといった判断も本人次第です。

就職後のミスマッチを防ぐためにも、色覚異常があると診断された後に職業を選択する際には、まずは自身の色覚異常の程度と特性を把握することが大切です。

その上で希望の職種の業務内容や求められるスキルなどを入念に調べて、継続して業務の遂行が可能であるか判断しましょう。

色覚異常の方が
日常生活で注意すること

色覚に異常があっても、どのような状況で問題が発生するのかを理解していれば、対策を講じることができます。
ここでは、色覚異常の方が日常生活で注意すべきことを解説します。

色で内容を理解しなければならない時

色覚異常の方の見え方との比較の図

色覚に異常がある方は、色で判別しなければならない路線図が読めなかったり、注意書きの赤文字が黒文字に見えて見落としたり、色が発する情報を正しく理解することが難しい場合があります。

料理をする際に肉などの焼け具合が分からないといったこともあるでしょう。
いずれの場合も注意を怠ると、事故や食中毒を起こしかねません。

色以外の情報から内容を読み取れるよう、注意深く物を観察する必要があります。

近年は多様な色覚に配慮して、情報が正しく伝わるようにデザインする「カラーユニバーサルデザイン」という考え方が普及しています。対策として、そうしたデザインの製品やサービスを選択するのも手でしょう。

加齢から起こる色覚異常

加齢から起こる色覚異常の方の見え方との比較の図

加齢から発症する白内障が原因で色覚異常になることがあります。
病状の進行はゆるやかで、日常生活に支障をきたすことは少ないですが、事故の原因となることもあるため注意が必要です。

例えば、高齢者宅で発生する火災事故の原因の多くは、炎の色を見分けられなかったことであるといわれています。
ガスコンロなどを使用中に青白い炎を正しく識別できず、火が弱いと勘違いして強くしたことで、衣服や周辺に置かれたものに引火して、火災事故を起こしてしまうのです。

また、暗い部屋では色の識別能力がさらに低下します。足元にある小さな物を見落として踏んでしまったり、転倒してしまったりしてケガをするといったこともあります。

部屋の照明を明るい「昼光色」にするなどの対策で、実際の色と見える色との差が少なくなるよう工夫しましょう。

色覚異常の方にできる工夫

色覚異常の方は色が発する情報を、正常色覚とされる方と同様に認識することが難しい場合が多いです。
ですが近年は、多様な色覚に配慮したカラーユニバーサルデザインによるバリアフリー化が進んでいます。

カラーユニバーサルデザインイメージの例 オレンジや青を使用

文字を強調したい時は、赤や緑を使用するのではなく、オレンジや青を使用するといった対策が考えられます。
色覚異常の方にとって、赤や緑は識別しづらい色です。そのため、強調していることに気づいてもらえない可能性があるためです。

色だけでなく、太字や下線などの文字装飾を併用することも効果的でしょう。

カラーユニバーサルデザインイメージの例 塗りのパターンを変えたりする

そもそも「色に頼らない」ことも重要です。

色だけで分類されていると、色覚異常の方は種別を見分けることができません。
その場合、棒グラフであれば折れ線のマーカーを変えたり、塗りのパターンを変えたりすることで対策することができます。

このような「カラーユニバーサルデザイン」は、色覚異常の方だけでなく正常色覚の方にとっても見やすさが向上するなどの利点があります。
情報をより多くの人に正しく平等に伝えられることは社会全体にとっても大きなメリットです。是非日々の生活に取り入れてみてください。

まとめ

今回は、色覚異常と色覚検査について画像つきで詳しく解説しました。

健康診断などで色覚検査を受けて、色覚異常の疑いがあると告げられたけど、これからどんな検査を受ければいいのか分からないといった不安も解消されたのではないでしょうか。

また、色覚に異常がある方の進学や就職、日常生活についてもご紹介しました。
色覚異常であっても日常生活に不便はないという方もいらっしゃいますが、進学や就職などで困難に直面することも考えられます。

ご自分の色覚特性と程度をしっかり把握して進路を選択できるよう、是非参考にしてみてください。

監修者プロフィール

原 修哉

原眼科クリニック 院長

HP:https://www.haraganka.jp/

名古屋大学医学部卒業後、名古屋市の中京病院へ入局し13年勤務。その期間中に、ハイデルベルク大学(ドイツ)へ留学。
大雄会第一病院 診療部長として7年の勤務を通じて、地域の重症例、難疾患、専門性の高い疾患などの医療に携わり、白内障手術、緑内障手術、角膜移植、屈折矯正手術、結膜手術など10,000件以上執刀。
現在は、原眼科クリニックを開業し、地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

【所属学会】
日本眼科学会 専門医 / 日本眼科手術学会 / 日本緑内障学会 / 日本角膜学会

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