
この記事の執筆者
眼とメガネの情報室
みるラボ編集部

目次
楽しみにしていた新しいメガネが不快に感じられると、残念な気持ちになりますよね。その症状、もしかしたら「メガネ酔い」かもしれません。
メガネ酔いは、新しいメガネに慣れる過程で起こり、多くの人が経験する可能性がありますが、その原因は様々です。度数やフレームの形状、レンズの種類が合わない場合など、原因が分からず不安に感じる方もいるでしょう。
この記事では、新しいメガネで歪みを感じる「メガネ酔い」の主な原因と、症状に応じた具体的な対策、メガネに慣れるためのコツを詳しく解説します。ぜひ参考にしてください。
新しいメガネが歪んで見える?
メガネ酔いの3つの原因
新しいメガネをかけた時に感じる歪みや不快感、いわゆる「メガネ酔い」の主な原因は、大きく分けて3つ考えられます。
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原因1 : 度数が大きく変化した
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原因2 : フレームがフィットしていない
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原因3 : レンズの設計や種類が変化した
ここでは、それぞれの原因について、なぜメガネ酔いを引き起こすのかのメカニズムについて詳しく解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、原因を探る手がかりにしてください。
原因1 : 度数が大きく変化した
最も一般的なメガネ酔いの原因は、メガネの「度数」が大きく変わったことです。以前のメガネと比べて、近視や遠視、乱視の度数が大幅に変化した場合、目から入ってくる映像の鮮明さや大きさ、形がこれまでと異なるため、脳がその変化にすぐに対応できず混乱します。
特に注意が必要なのが「乱視」の度数や「乱視軸(角度)」の変化です。乱視は、目の角膜や水晶体に歪みがあるために、ものがぼやけて見えている状態です。これを矯正するため、レンズには特定の方向の歪みを打ち消す度数が入っています。この乱視度数や矯正する角度(軸)が大きく変わると、これまで脳が補正していた空間認識との間にズレが生じ、物が歪んで見えたり、遠近感が掴みにくくぼやけるといった現象が生じることがあります。
また、40代以降で遠近両用メガネや中近・近々メガネなどをはじめて使用する場合も、視線移動に伴う見え方の変化に慣れが必要です。このように、度数の変化は脳の適応力に大きく関わっており、慣れるまでに時間を要する場合が多く、メガネ酔いを引き起こしやすい要因の一つです。
原因2 : フレームがフィットしていない

メガネの度数が適切でも、フレームが顔にきちんとフィットしていないと、歪みや不快感の原因になります。メガネの「フィッティング」は、快適な見え方にとって非常に重要な要素です。
まず考えられるのが「目とレンズの距離」です。特に度数が強い場合、この距離が適切でないとレンズを通して見える物の大きさが変わったり、度数の効き具合が変化したりします。レンズが目から離れすぎると、近視の場合は度数が弱く感じられ、遠視の場合は強く感じられるでしょう。
また、「レンズの傾斜角」も重要です。顔に対するレンズの傾き具合や、顔のカーブに沿ったフレームの湾曲具合が適切でないと、レンズの周辺部で歪みが発生しやすくなります。正しい角度でないとレンズ本来の性能が発揮されず、視界がクリアに見えなかったり、物が斜めに見えたりすることがあります。
さらに、フレームの横幅が顔に合っていない・鼻パッドの位置がずれている・耳にかかる部分(テンプル)の調整が不十分などが原因でメガネがずり落ちたり、片方に傾いたりします。これも、目とレンズの位置関係を不安定にし、見え方の違和感につながります。
デザインを優先して選んだフレームが、ご自身の顔の形や骨格に合っていない場合も、適切なフィッティングが難しくなりがちです。購入時にはデザインだけでなく、フィッティング調整が可能かどうかも確認し、専門知識のある店員さんにしっかりと調整してもらうことが大切です。自己流での調整は、かえって見え方を悪化させる可能性があるため避けましょう。
原因3 : レンズの種類や設計が変化した

度数やフレームに変化がない場合でも、レンズの設計や種類が変わったことが原因となるケースもあります。
近年主流となっている「非球面レンズ」や「両面非球面レンズ」は、従来の「球面レンズ」に比べてレンズ周辺部の歪みが少なく、薄く軽く仕上がるというメリットがあります。しかし、球面レンズに慣れている方が非球面レンズに変更した場合、特に視線を動かした時に独特の揺れや歪みを感じることがあります。これは、レンズ中心から周辺部への度数変化の仕方が異なるために起こる現象です。
また、遠近両用などの「累進屈折力レンズ」は、レンズメーカーによって、視野の広さや歪みの感じ方が大きく異なります。より歪みを抑え、視野を広くした最新設計のレンズに変更した場合でも、以前のレンズの見え方に慣れていると、かえって違和感につながるケースもあります。
違和感の症状別に対策を紹介
新しいメガネに慣れない時に生じる違和感には、「周辺部がぼける」「全体的に小さく見える・揺れる」「物が歪む」など様々です。ここでは、代表的な3つの症状について、それぞれの考えられる原因と実践したい対策を具体的にご紹介します。
1 : 周辺部がぼやけ、視野が狭くなった
【原因】
原因としてまず考えられるのは、レンズの種類・設計の変化です。特に、球面レンズから非球面レンズに変更した場合や、累進レンズ(遠近両用など)をはじめて使用した場合、あるいは異なる累進レンズに変更した場合に起こりやすい傾向があります。
非球面レンズは周辺部の歪みが少ない反面、設計によっては周辺部の度数変化が球面レンズと異なるため、ぼけを感じることがあるタイプです。累進レンズでは構造上、レンズの左右に歪み(非点収差)が発生しやすい部分があり、そこを通して見るとぼやけや揺れを感じます。
また、度数の変化が大きい場合や、目とレンズの距離・傾斜角などのフィッティングが不適切な場合にも、周辺視野の見え方に影響が出ます。
【対策】
まず「慣れ」が必要です。脳が新しい視覚情報に順応するまで、一定の時間が必要です。意識的に「顔ごと動かして見る」習慣をつけましょう。慣らし方として、視線だけを動かすのではなく、見たい方向に顔全体を向けることで、レンズの中心部(最もクリアに見えるエリア)を使うことができ、周辺のぼけを軽減できます。
2 : 同じ度数なのに、物が小さく見えたり揺れを感じたりする
【原因】

近視用レンズで「物が小さく見える」場合、主な原因はレンズの種類や設計の変更です。特に、球面レンズから非球面レンズへ変更した場合、設計上の特性によって物がより縮小して見えることがあります。また、レンズの前面カーブが浅い(フラットに近い)設計も、縮小感を強く感じさせる要因です。さらに、目とレンズの距離が以前より離れている場合も、近視では物が小さく見える傾向があります。
一方、視界が揺れて感じる原因も、同様に「レンズの種類・設計」の変化による光の屈折の違いが関係しています。視線を移動させた時の像の揺れは、脳が新しい光の入り方に慣れていないために生じるものです。
【対策】
基本は「慣れ」が重要です。多くの場合、1~2週間程度使い続けることで、脳が新しい見え方に適応し、揺れを感じにくくなります。物が小さく見える感覚も、次第に気にならなくなることが多いです。
3 : 柱が曲がって見えたり、地面が浮いて見えたりする
【原因】
直線が歪んで見える、地面が浮いたり傾いて見えるといった空間認識の違和感は、乱視矯正の大きな変化によって起こることが多いです。最も大きな原因として考えられるのが、乱視レンズの大幅な変更です。
乱視は方向によって見え方が異なるため、その矯正度数や角度が変わると、脳が認識している空間の形状と、目から入ってくる映像情報との間にズレが生じます。これが、直線が曲がって見えたり、遠近感が狂ったりする原因です。
また、以下のような条件でも空間が歪んで見える場合があります。
- 近視・遠視の度数が強い
- 左右の度数差が大きい
- 累進レンズの周辺部の歪み
- フレームが傾いていたり、左右の高さが合っていないなどのフィッティング不良
【対策】
この症状に対しても「時間をかけて慣れる」ことが基本です。特に乱視矯正は脳の適応に時間がかかるため、数日〜数週間は使用を続けて様子を見ましょう。その際「視線の使い方」を意識することも有効です。例えば、足元を見る時は、視線だけを下げるのではなく、あごを引いて顔全体を下に向けるようにすると、累進レンズの歪みの影響を受けにくくなります。
メガネ以外が理由で見え方に
違和感があるケース
新しいメガネの見え方に違和感がある時、原因は必ずしもメガネだけにあるとは限りません。ご自身の体調や、目の健康状態が影響している可能性も考えられます。メガネを何度調整しても違和感が続く場合や、ほかにも気になる症状がある時には、以下のようなメガネ以外の原因も視野に入れて対応することが大切です。自己判断に頼らず、必要に応じて専門機関への相談を検討しましょう。
1 : 体調不良

全身の健康状態は、目の見え方にも影響を与えることがあります。
例えば、以下のような場合です。
- 睡眠不足
- 発熱や風邪
- 二日酔い
- ストレスや自律神経の乱れ
- 糖尿病による血糖のコントロールの状態
体調に起因する見え方の変化は、一過性であることが多く、体調が回復すれば自然に元に戻ります。新しいメガネの違和感が体調不良の時期と重なっている場合、まずは十分な休息をとって体調を整えることが大切です。
2 : 目の疲れ
現代人に多い目の疲れも、メガネの見え方に影響を与える要因です。目の疲れは悪化すると、目の痛み、かすみ、充血、乾燥感といった目の症状に加え、頭痛、肩こり、吐き気などの全身症状を伴うこともあります。
目の疲れは、以下のような習慣が原因です。
- 長時間のパソコン作業
- スマートフォンの使用
- 細かい手元の作業
- 暗い場所での読書
目の疲労が続くと、目のピント調節を担う毛様体筋がこり固まってしまい、ピントが合いにくくなったり、遠くも近くも見えにくく感じたりすることがあります。そのため、新しいメガネをかけても、視界がクリアにならない、すぐに疲れてしまう、といった違和感につながる可能性があります。
3 : 目の病気

最も注意しなければならないのが、見え方の違和感の背景に「目の病気」が隠れているケースです。メガネを新調したタイミングで、たまたま目の病気が進行していたという可能性もゼロではありません。
代表的な目の病気には、以下があります。
- 白内障 : 水晶体が濁る
- 緑内障 : 視野が徐々に欠けていく
- 加齢黄斑変性 : 視界の中心が歪んで見えたり、暗く見えたりする
- ドライアイ : 目の表面が乾きピントが合いにくくなる
- ぶどう膜炎などの炎症性疾患
- 糖尿病網膜症
どの疾患もかすみ目などの症状を招き、緑内障のように初期段階では自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行している病気もあります。これらの目の病気は、メガネの調整で解決するものではなく、放置すると視力低下や失明につながる可能性もあります。気になる症状がある場合には、眼科を受診しましょう。
新しいメガネに慣れるためのコツ
新しいメガネに違和感がある場合、多くは「慣れ」によって解決します。脳が新しい見え方に適応するには、少し時間が必要です。ここでは、新しいメガネに慣れるための3つのコツをご紹介します。焦らずに少しずつ慣らしていきましょう。
1 : 2〜3週間を目安に待ってみる
個人差はありますが、新しいメガネの見え方に脳が適応するには、一般的に1週間から2週間、場合によっては約1ヶ月かかるといわれています。特に、度数が大きく変わった時や乱視矯正を始めた時、遠近両用などの累進レンズを使い始めた場合などは、慣れるまでにより時間が必要です。
最初の数日は違和感が強くても、毎日少しずつ装用時間を延ばしていくうちに、徐々に脳が新しい映像情報に慣れ、歪みや不快感が軽減していくことがほとんどです。焦ってすぐに「合わない」と決めつけず、まずは2~3週間を目安に様子をみてください。
2 : 顔ごと動かして見る
非球面レンズや累進レンズを使用している場合や、度数が変わった場合に有効なのが「顔ごと動かして見る」方法です。メガネのレンズは中心部分が最も光学的に優れており、周辺部にいくほど歪みが生じやすくなっています。物を見る時には無意識に目線だけを動かすことも多く、目線だけをキョロキョロ動かすと、レンズの歪みが大きい部分を使ってしまい、ぼやけや揺れ、歪みを感じやすくなります。
見たいものがある方向に、視線だけでなく顔全体を向けるように意識することで、常にレンズの中心に近い、最も見やすい部分で物を見れ、歪みを感じにくくなります。
3 : こまめに休憩する
新しいメガネに早く慣れようとして、長時間かけ続けるのは逆効果になることがあります。脳が新しい見え方に適応しようと頑張っている状態は、目にとっても脳にとっても通常より負担がかかるため、こまめに休憩するのがおすすめです。
特に慣れないうちは、1時間に5~10分の短い休憩を挟むように心がけましょう。休憩中はメガネを外し、窓の外の遠い景色を眺めたり、軽く目を閉じたりして、目の筋肉の緊張をやわらげることが大切です。また目元を温めるのもリラックス効果があります。
最初は短い時間から装用を始め、徐々に装用時間を延ばしていく方法も有効です。まずは午前中だけ装用し、慣れてきたら終日にするなど、ご自身のペースで進めましょう。
しばらくしても新しいメガネに
慣れない場合の対処法
上記のような慣れるためのコツを試しても、改善しない、あるいは我慢できないほどの症状が続く場合は、無理せず次の対応に進みましょう。
考えられる対処法は、主に以下の2つです。
- 購入した眼鏡店への相談
- 眼科の受診
1 : 眼鏡店に相談する

購入した眼鏡店に相談するのが、最初の選択肢です。多くの眼鏡店では、購入後の一定期間内であれば、見え方に不具合があった場合に調整やレンズ交換に応じてくれる眼鏡店も多いです。
相談に行く際は、以下の情報を詳しく伝えましょう。
- いつから、どのような状況で、どんな違和感(歪み、ぼやけ、痛み、疲れなど)を感じるか
- 以前使っていたメガネがあれば持参する
- 可能であれば、メガネの処方箋も持参する
これらの情報をもとに、フレームのフィッティングが適切かどうかを再確認し、必要であれば鼻パッドの位置や角度、テンプルの曲がり具合などを微調整してくれます。調整によって、見え方が大きく改善することもあるでしょう。
2 : 眼科医を受診する

眼鏡店での調整でも違和感が解消されない場合や、メガネの不具合だけでなく以下のような症状がある場合は、眼科医の診察を受けることを強くおすすめします。
- 目の痛み・強い充血・多量の目やになど、明らかな目の異常
- 視界の一部が欠ける、暗く見える、物が歪んで見える(メガネを外しても改善しない)
- 急激な視力低下を感じる
- 強い頭痛や吐き気が続く
眼科では、視力検査だけでなく、眼圧検査、眼底検査、視野検査など、目の状態を詳しく調べるために様々な検査ができます。
見え方の問題がメガネによるものなのか、隠れた目の病気なのかを正確に診断してもらうことが可能です。
受診する際は、現在使用している新しいメガネと、以前のメガネ、そしてメガネの処方箋を持参し、いつからどのような症状で困っているのかを具体的に医師に伝えましょう。
新しいメガネが歪んで見える
メガネ酔いを防ごう!
新しいメガネに変えた時に感じる視界の歪みや不快感、いわゆる「メガネ酔い」は、決して珍しいことではありません。その原因は、度数の変化、フレームのフィット感、レンズの種類や設計の変更など様々です。多くの場合、歪んで見える症状は、時間とともに脳が順応することで自然と解消されていきます。
まずは2~3週間を目安に、顔ごと動かして見る、こまめに休憩するといった方法を取り入れながら様子を見てください。しかし、それでも改善しない場合は、早めに購入した眼鏡店に相談することが大切です。フィッティングの再調整や、度数・レンズの見直しで解決することも少なくありません。
しかし、その見え方の違和感が、単なるメガネの問題ではなく、目の病気のサインである可能性もあるため注意しましょう。目の痛みや充血、急な視力低下、視野の異常など、メガネ以外の症状を伴う場合は、自己判断せず必ず眼科を受診するようにしてください。