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最終更新日:2022.07.25

色覚異常とは?見え方・原因を解説

この記事の監修者

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

色覚異常とは?見え方・原因を解説

目次

私達は普段モノを見る時に距離や形だけでなく色も自然に認識していますが、ある種の色を認識できない場合があります。この症状を色覚異常と言い、以前は色盲や色弱と呼ばれていました。男性に多く、女性に少ない傾向があります。
色覚異常の症状の原因やテスト方法、診断される型や見え方などを解説します。

色覚異常とは

光の三原色

色とは赤、緑、青の3つの組み合わせで作られています。光の三原色と呼ばれているもので、すべての色はこの3つの色から成り立っています。
眼の機能の一つである色覚という働きは色を判別する感覚のことをいいます。網膜にある「視細胞」が色や光を感じ取る重要な機能を担っており、この機能の程度によっては、ある色を識別しづらくなったり、識別できなくなることがあります。
最近ではこれらの色の識別に関する症状は「色覚異常」と呼ばれています。以前はある色を識別しにくい状態を「色弱」、ある色を識別しない状態を「色盲」と呼んでいました。
色覚異常とは3つの色を識別する視細胞は存在しているものの、このどれかの色の識別機能が弱くなった状態を指し、細かな色の判断が通常より難しくなります。色覚異常は3つの型に分類され、赤、緑、青のどの色に対して弱いかで分けられます。
実際に人がどのような色で見えているかを知ることは難しく、微妙に違った色で見えていることは珍しくありません。色覚異常の人の中には、色の識別機能の程度によっては普段の生活で困ることのない人もいます。細かいテストなどを実施することで、見えにくい色が見つかることがあります。
程度の軽い色覚異常の場合、色の識別が違うだけでモノを見る感覚は普通と変わらないため、生活に支障をきたすことは少ないです。反対に、明らかに見える色が人と違うといった程度の重い色覚異常の場合、生活に支障を起こさないように対策をすることが大事です。

色覚異常の種類

ある特定の色を“識別しにくい”色覚異常は、大きく3つの型に分類されます。

1型3色覚(P型)

赤色に対する視細胞の機能が十分に働かない状態

2型3色覚(D型)

緑色に対する視細胞の機能が十分に働かない状態

3型3色覚(T型)

青色に対する視細胞の機能が十分に働かない状態

ある特定の色を“識別しない”色覚異常は、大きく3つの型に分類されます。

1型2色覚(P型)

赤色に対する視細胞の機能がない状態

2型2色覚(D型)

緑色に対する視細胞の機能がない状態

3型2色覚(T型)

青色に対する視細胞の機能がない状態

色覚異常の見え方イメージ

一般的に多いのは1型と2型と言われており、3型は少ないと報告されています。
色の組み合わせによって見えにくい、判別できないなど、人によって見え方が違うので、どの色に対して弱いのかなど自分の見え方の特徴を知っておくことで対策も取りやすくなります。

先天性色覚異常

先天性の色覚異常は男性の発生率が高く、日本人では男性の5%、女性は0.2%ほどと報告されており、決して珍しい症状ではありません。程度が軽い場合は、本人が気がついていない事もあり、特別な検査をしない限り分かりません。
両眼性で左右に同じように色覚の異常が出ますが、その他の視覚機能に問題はありません。悪化することもありません。また、生まれつきなので自覚することなく、指摘を受けて色覚異常を認識することが多いようです。
色覚異常で多く見られるのは1型と2型で、この2つの型が先天赤緑色覚異常で一番多く見られるパターンです。おおよそ6割の色覚異常はこのタイプとも言われています。

原因

先天性の色覚異常は、多くの場合は遺伝子による遺伝が原因で、両親共にまたは両親のどちらかが色覚異常の遺伝子を保因していると考えられています。
男性が持つ染色体は(XY)で、一つしかないX染色体に色覚異常の遺伝子があれば発症しますが、女性の持つ染色体は(XX)なので、X染色体の一つだけに遺伝子があっても発症しません。その女性は保因者となるために子供が色覚異常を発症する可能性が多くなります。女性は発症しないので色覚異常にはなりませんが、保因者とされる数は10人に1人とも言われています。

治療

先天性の色覚異常には有効な治療方法はありません。自身が色覚異常だと認識するきっかけがあれば、どのタイプで何色に弱いのかなどを知ることによって普段の生活で不自由の少ない状態に改善していくことができます。
治療法はありませんが、色覚異常での色の見え方を補正してくれるレンズが入った色覚補正メガネというものがあります。取り扱う眼鏡店も増えていますが、価格は普通のメガネよりは少し高めです。軽度の色覚異常ならあまりメリットを感じない人もいるようですが、苦手な色を補正することでこれまでに見たことのなかった色が感じられるなど新しい見え方で喜ばれる人もいます。

日常生活での注意点

どの色に弱いかと、どのような状況で困るのかを知っていれば、対策ができます。以下のような状況では注意をしましょう。

緑黒板での赤チョークが見えにくい
  • 色で判別する路線図などはわかりにくい
  • 緑黒板での赤チョークが見えにくい(特に重要という意味なのに 困る)
  • 注意書きのはずの赤文字が黒く見える
  • 焼き肉が焼けているのかわからず生に近い状態で食べてしまう
  • 色鉛筆やクレヨンは色だけでは判断しにくい(色使いがおかしい と言われる)
  • カードゲームなどで色に意味があるゲームは難しい(UNOなど)
  • カレンダーの休日(祝日)を見落としがち
  • スポーツでのユニフォームの色が識別できないのでわかりにくい (サッカーなど)
  • 色をつなげて消すゲームは苦手

これらのように日常生活で普通だと思うことが、色覚異常の人にとっては困った問題となっていることは多くあるようです。

色覚異常に配慮されて改善されたケースなども多く存在します。例えば任天堂のニンテンドーDSの充電残量を示す色が「赤と黃緑」から「赤と青」に変わっています。また、最近のスマートフォンには見分けがつきやすくなるようなフィルターが用意されています。 このように色の見え方が異なる人にも配慮された考え方を「カラーユニバーサルデザイン」と呼びます。

後天性色覚異常

先天性の色覚異常は生まれ持ったものですが、後天性の色覚異常は本来色を識別することができたにも関わらず、見え方や色の判別がしにくい、またはできなくなった状態を指します。

原因

後天性色覚異常の原因には、加齢、病気、ストレスが考えられます。

病気

眼の病気や全身の病気でも色覚に異常をきたす場合もあります。白内障、網膜の疾患、緑内障、視神経の疾患、脳にできる病気などで、色覚異常を発症することもあります。
脳の後頭葉と呼ばれる部分で色の判断を司っていますが、脳梗塞などで疾患を起こすと見える色に異常を起こすことがあります。急に色がモノクロに見える場合などは脳の疾患を疑う必要があるでしょう。
加齢による白内障は多くの方が体験するもので、白髪と同じように早くに症状が出る人もいれば、あまり症状が出ない人もいます。白内障は今では日帰りで手術ができるほど治療しやすい疾患です。
緑内障は多くの場合は眼圧が高くなって視神経を圧迫する疾患ですが、こちらは色覚異常だけでなく視野狭窄を引き起こしてしまい、欠けた視野は戻らないとされています。失明の危険のある疾患ですので、診断を受けて点眼治療などを早く行う必要があります。

ストレス

成長期の女性に多いとされているのがストレス性の色覚異常です。女性に色覚異常が発症する確率はとても低いので、成長期に急に色が判別しにくくなった場合などは、心因性の場合も考えて心のケアとしてのアプローチが必要かもしれません。

症状がゆっくり進む場合は、知らないうちに病気が進行することも十分に考えられます。少しでも見え方に異常を感じたら、専門機関で診断を受けることをおすすめします。

日常生活での注意点

加齢からくる白内障が原因の色覚異常は、ゆっくりと進んでいくため、気がついていない場合もあります。生活に差し障りない場合がほとんどですが、危険な事故に繋がる事もあるため、注意が必要です。

正常な見え方・高齢者の見え方例

よくあげられる危険は、高齢者の家庭で火災の事故が多い原因とも言われる「炎」を見分ける色の変化です。ガスコンロなどの青白い炎を認識しにくくなることで実際より小さく見えてしまい、衣類に着火したり、放置して火災を起こすことが多くなると言われています。炎による事故は大変多くなっているので、高齢者が扱う火器類は注意が必要です。
対策としては、部屋の照明の明るさを変えることで見やすくなることが分かっています。見やすくなるおすすめの電球は、明るい「昼光色」です。比較的すぐにできる対策法なので危ないと感じたことがある方はすぐにでも試してみてください。

また、「最近、化粧が濃くなった、と言われる」、「部屋の中で選んだ服が外に出ると思った色と違っていた」という場合も、加齢による色のフィルターがかかっているかもしれません。
明るさの対策で見えている色と実際の色の差を少なくすることで、危険を減らすことにつながります。

色覚異常の検査

色覚異常の度合によっては、検査をしなければ本人も気づいていない事があり、年代によっては色覚異常検査を受けていない人もいるかもしれません。

色覚異常検査の歴史

石原式色覚異常検査表

以前は小学校などで健康診断の際に「石原式色覚異常検査表」といった検査方法によって色覚異常の有る無しを検査していました。この検査は、カラーの丸がたくさん配置されており、その中に書かれている数字や模様が判別できるかどうかのテストです。年代によっては記憶にある人も多いでしょう。
この一般的に行われていた検査は、2003年に定期検診の項目から削除されました。これは、多くの場合は色覚異常でも日常生活や学校生活を問題なく送ることができることや、色覚異常があってもそれは個性という配慮の指導をしていることと反するためだとされています。

この検査が廃止されたことで色覚異常を持っていることに気がつくことなく進学や就職の時期を迎え、その際の検査によって判明し、夢破れるといった事例も少なくないようです。警察官やパイロットなど職種によっては、安全性のために色覚異常が不利になる業種があるからです。
これらのことを踏まえて、プライバシーに最大限の配慮をしながら、2016年より色覚異常検査が教育現場で再開されました。

色覚異常検査の種類

色覚異常の程度に応じて以下のような検査が行われます。

  • 石原式色覚異常検査表
  • SPP標準色覚検査表第1部(第2部は後天性用)
  • パネルD-15テスト
  • アロマノスコープ

色覚異常の場合、
区別が付けづらい色

色覚異常はいくつかの型に分類され、それぞれに見え方が異なります。

色覚異常の種類による見え方の違いの例

色覚異常の種類による見え方の違いの例

多くの場合は赤色と緑色、黄色と黄緑色の見分けがつきにくく、同じ色として認識してしまいます。細かく色分けされた色鉛筆やクレヨンは判別できなくなります。このことで幼少期に色覚異常を疑う場合も多いようです。
見やすい色は青と黄色などの配色で区別がつきやすくなります。これは青色に対する認識が敏感に感じられることと、赤や緑を配色していないので見やすく判別しやすいためです。また、赤色をオレンジ寄りに変えることで見やすくなる場合も多くなります。

1型の人は赤に弱いので、黒板の赤い文字などはとても見にくいとされています。特に学校などでは多く使われる赤いチョークが見えないことで困った経験をされる方が多くいます。グラフでも赤色で分けられた部分が見えない、そもそも赤色が分からないから赤い文字の部分を読んでくださいといった質問は困るなどの声が聞かれます。赤色の部分をオレンジ色に変えることで見やすくなることがわかっているので利用することも多くなりました。
3型は、少ないパターンですが青色に弱い色覚異常です。この場合には赤色や緑色は通常と同じように見えますが、緑色から青色にかけての識別が難しくなります。黄色と白の区別がつきにくくなる傾向も多く見られます。

見えにくい色は?

一つの色に対して識別が弱くなることで見えにくくなる色が出てきます。区別がつきにくい配色と区別がつきやすい配色の例を挙げますが、程度によって違うこともあります。

区別がつきにくい配色
  • 茶色と緑色
  • 緑色と灰色や黒色
  • 赤色と黒色
  • オレンジ色と黄緑色
  • ピンク色と白色
  • 水色とピンク色(パステルカラー)
  • 青色と紫色
区別がつきやすい配色
  • 黄色と黒色
  • 黄色と青色
  • 青色と白色
  • 黒色と白色
  • 同色の濃淡(薄い緑色と濃い緑色)

全てに該当する人もいれば、いくつかしか当てはまらない人もいるため、程度の違いは人それぞれということを理解しておきましょう。また、カラーチャートなどでの見え方は人によって違いが出てくるため、正確に判断することは難しいとされています。
自分の色覚が正常かどうかを知りたい場合、簡単にインターネットでテストができるサイトが多く存在しています。眼科医の監修のもとでできるテストなども多いので、試してみてください。判断が微妙な場合は、眼科医の診断を受けましょう。
最近は色覚異常の人にも優しい、カラーユニバーサルデザインが使用されている場所も増えてきました。特に役所や公共の場所などでは色分けだけでなく、記号や文字でしっかりと併記されていることが多いです。

気になることがあるなら病院へ

先天性の色覚異常は遺伝によるもので男性に多くみられる症状です。この場合の色覚異常は現在の医療では治療することができません。
後天性の色覚異常は進行を抑えたり治療できるといった点が大きく違います。後天性には視力の低下を伴ったり、片方だけに現れるといったこともあります。
加齢によるものなら様子を見ながら経過観察することが大切ですし、網膜に病気が発生していることで進行している場合もあります。緑内障など、最悪の場合に失明するといった危険な病気もあるので、少しでも見え方や色の違いを感じたら医師の診察を受けるようにしてください。

監修者プロフィール

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

HP:https://www.keishin-eye.com/

山梨医科大学 医学部卒業後、慶應義塾大学 眼科学教室入局。米・ハーバード大学 公衆衛生学修士取得。慶應義塾大学 眼科学教室 特任講師。
眼科のなかでも「ドライアイ」を中心にした角膜の疾患を専門とする。日本におけるドライアイについての疫学研究の第一人者であり、近年増えている長時間のパソコン作業によるVDT(Visual Display Terminal)症候群などの研究を行っており、日本のドライアイの有病率、パソコン使用時間とドライアイとの関係について世界で初めて証明した。ドライアイにつながる危険因子を研究し、ドライアイ診断に関する国際的な基準づくりにも携わる。
予防医療の啓蒙活動にも力を入れ、『しまじろうとEye Care Book』幼稚園や保育園の先生の目の教科書となるような『子どもの目見守りサポートBook』を作成。
目の健康について学び、セルフケアができるよう、『ナカナイ涙』などのWebサイトの監修も手掛ける。

【所属学会】
日本眼科学会 / 日本眼科医会 / 日本角膜学会 / 小児眼科学会 / 日本弱視斜視学会 / ドライアイ研究会

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