目の病気
最終更新日:2024.04.26

まぶたが下がる眼瞼下垂とは?原因と対処方法を解説

この記事の監修者

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

まぶたが下がる眼瞼下垂とは?原因と対処方法を解説

目次

目が開きにくい、物が見えにくいといった症状は、眼瞼下垂(がんけんかすい)かもしれません。
眼瞼下垂は、上まぶたが下がることで黒目が隠れ、視野が狭くなったり見た目が悪くなったりする病気です。病状が進行すると、見えにくさや眼精疲労に伴う症状が原因で日常生活に支障をきたすことがあります。軽い症状に対しては自分でできる対処も存在しますが、重い症状に対しては基本的に手術が必要となります。

本記事では、眼瞼下垂とはどのような病気なのか、眼瞼下垂の原因や自分でできる対処方法ついて解説します。

眼瞼下垂とは
まぶたが下がってくる病気

眼瞼下垂の重症度イメージ

眼瞼下垂の「眼瞼(がんけん)」とは、まぶたを意味します。眼瞼下垂は、上まぶたの位置が通常よりも下がり、黒目が隠れることで上の方の視野が欠けたり、見た目が悪くなったりする病気です。病状が進行すると、見えにくさや眼精疲労に伴う症状が原因で日常生活に支障をきたすこともあります。

眼瞼下垂は、片目だけに起こる場合と両目ともに起こる場合があります。上まぶたがどの程度下がっているかによって、以下のように重症度が分類されます。

  • 軽 症:上まぶたが虹彩(黒目の茶色の部分)を超える位置まで下がっている
  • 中等症:上まぶたが瞳孔(黒目)を一部隠す位置まで下がっている
  • 重 症:上まぶたが瞳孔を半分以上隠す位置まで下がっている
眼瞼下垂の状態イメージ

上まぶたの動きには、上眼瞼挙筋(じょうがんけんきょきん)とミュラー筋という2種類の筋肉の収縮が関係しています。眼瞼下垂は、このどちらかの筋肉や、筋肉の動きを支配する神経、筋肉とまぶたをつなぐ腱膜(けんまく)と呼ばれる組織の機能が低下することで生じます。

眼瞼下垂の原因とは

生まれつき(先天性)

生まれつき起こる先天性の眼瞼下垂は、生後すぐから症状がみられます。主な原因は、まぶたを動かす上眼瞼挙筋の発達不全や、筋肉の動きを支配する神経の障害です。

症状がある側の目では下の方でしか物が見えないため、それを補おうとしてあごを上げた不自然な姿勢で前を見ようとしたり、眉毛を上げて無理やり見ようとしたりといった行動が見られるのが特徴です。

加齢

腱膜が加齢によってたるんでしまったイメージ図

生まれつきではなく、後天的に起こる眼瞼下垂の原因として多いのは加齢です。

まぶたは、上眼瞼挙筋やミュラー筋と呼ばれる筋肉が瞼板(けんばん)と呼ばれるまぶたの中心構造を引っ張り上げることで開きます。筋肉と瞼板は、腱膜と呼ばれる組織でつながっています。この腱膜が加齢によってたるんでしまうと、筋肉の力が瞼板に効果的に伝わらず、まぶたが上がりにくくなります。

ハードコンタクトレンズ

若い人でも、ハードコンタクトレンズが原因で眼瞼下垂を起こすことがあります。ハードコンタクトレンズの装用は、まぶたを動かす筋肉とまぶたをつなぐ腱膜に対して持続的な刺激を与えることが知られています。また、レンズの取り外しを行う際に上まぶたを強く引っ張る動作も、腱膜に対しては刺激となるでしょう。これらの刺激によって腱膜が損傷すると、筋肉の力が瞼板に効果的に伝わらず、眼瞼下垂が生じる可能性があります。

まぶたが下がるだけじゃない
眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂の症状

眼瞼下垂はまぶたが下がる病気ですが、発症すると以下のような症状も現れます。

  • 目が開きにくい
  • 物が見えにくい(上側の視野が欠ける)
  • 目が重い
  • 目が疲れやすい

また、額にしわが寄る、眉が上がる、二重の幅が広くなる、二重の線が乱れるといった見た目上の問題も知られています。

更に、眼瞼下垂が起こると狭い視野で無理に物を見ようとするため、目の負担が増えて眼精疲労を起こしやすくなります。その影響で肩こりや首の痛みなど、目以外の症状が見られる場合もあります。

自分でできるまぶたが下がってきた時の対処方法

症状が進行した眼瞼下垂の治療には、基本的に手術が必要になります。しかし、症状が軽く上まぶたの厚みも薄い軽度の眼瞼下垂は、まぶた用のテープや接着剤を使用して自分でも対処が可能です。
まぶた用のテープや接着剤は、二重まぶたを作るための美容目的で販売されており、ドラッグストアなどで購入できます。これらを使用して物理的にまぶたを上げることで、眼瞼下垂の症状が改善できる場合があります。

また、メガネのフレームにまぶたを上げるためのバネを取り付けた「クラッチメガネ」をかけるのも効果的です。クラッチメガネは、眼鏡店などで購入できます。

眼瞼下垂の手術方法

挙筋前転術

筋肉とまぶたをつなぐ腱膜の伸びが原因で起こっている眼瞼下垂に対しては、挙筋前転術と呼ばれる手術が行われます。

挙筋前転術は、二重の線に沿って切開し、伸びてしまった腱膜を前方に引っ張り、適切な目の開きが得られる位置でまぶたの内部に縫い付けて固定する手術です。手術によって腱膜の伸びが改善すると、筋肉の力がしっかりとまぶたに伝わるようになるため、目が開きやすくなります。

前頭筋吊り上げ術

まぶたを持ち上げる上眼瞼挙筋の機能低下や、上眼瞼挙筋を制御する神経の麻痺が原因で起こっている眼瞼下垂に対しては、前頭筋吊り上げ術と呼ばれる手術が行われます。

前頭筋吊り上げ術は、眉毛のあたりからまぶたの内部にかけて医療用の糸や太ももから採取した筋膜を移植し、額の筋肉である前頭筋とまぶたをつなぐ手術です。上眼瞼挙筋の代わりに、額の筋肉の力を利用してまぶたを開くことができるようになります。

余剰皮膚切除術

余剰皮膚切除術イメージ

筋肉や神経に異常がないにもかかわらず生じている眼瞼下垂に対しては、余剰皮膚切除術と呼ばれる手術が行われます。

余剰皮膚切除術は、たるんで余った皮膚を二重のラインや眉毛の下のラインで切除する手術です。余分な皮膚がなくなることで、まぶたの下がりが改善します。

まぶたが下がってくる病気は
眼瞼下垂だけじゃない

重症筋無力症や眼瞼皮膚弛緩症など、眼瞼下垂以外の病気が原因でまぶたが下がる場合もあります。これらの病気は眼瞼下垂と間違われやすく、発症に気づくのが遅れることもあるため注意が必要です。

重症筋無力症

重症筋無力症は、本来であれば細菌やウイルスから体を守るはずの免疫システムが、誤って自分自身を攻撃してしまうことで起こる「自己免疫疾患」の一つです。

重症筋無力症を発症すると、免疫システムの異常によって目を動かす神経や筋肉に障害が起こる場合があります。この影響で、眼瞼下垂と同じようにまぶたが下がったり、左右の目が違う方向を向いて物が二重に見えたりすることがあります。

また、重症筋無力症と同じように筋肉の障害による病気には、外眼筋ミオバチーや筋緊張性ジストロフィーなどもあります。

重症筋無力症を疑う症状がある場合は、神経内科を受診してください。

眼瞼皮膚弛緩症

眼瞼皮膚弛緩症も、眼瞼下垂と間違われやすい病気です。

加齢などが原因でまぶたの皮膚がたるみ、まぶたが下がったように見えるのが眼瞼皮膚弛緩症です。眼瞼下垂ではまぶたのふちごと下がるのに対し、眼瞼皮膚弛緩症ではまぶたのふちは正常で、たるんだ皮膚だけがふちを覆うように垂れ下がるのが特徴です。高齢者では、眼瞼下垂と同時に起こることもあります。

神経原性

動眼神経麻痺やHorner(ホルネル)症候群など、神経の障害が原因である場合もあります。まぶたを動かす上眼瞼挙筋は「動眼神経」という神経が正常な働きをすることで動きます。しかし、外傷や病気によって動眼神経が損傷すると、上眼瞼挙筋が働かずまぶたが下がってしまうのです。

心因性

ストレスや心理的な影響で、体の様々な部分に影響がでることがあります。目に起こる障害で多いのが心因性視力障害ですが、そのひとつの症状としてまぶたが下がることがあります。

続発性

眼瞼腫瘍、眼窩腫瘍、眼窩内炎症性疾患の症状としても生じることがあります。眼瞼腫瘍はまぶたにできるイボやほくろであることが多いですが、稀に悪性の場合もあります。気になる症状がある場合には、まずは眼科を受診しましょう。

まぶたや目周りが気になる時は
早めの受診を

まぶたや目周りが気になる女性

眼瞼下垂は見た目の問題だけと誤解されがちですが、病状が進行すると見えにくさや眼精疲労が原因で日常生活に支障をきたしてしまうこともあります。

軽い症状はまぶた用のテープや接着剤を使用して自分で対処できる場合もありますが、重い症状の改善には基本的に手術が必要となります。まぶた用のテープや接着剤を使用してもまぶたや目の周りが気になる、周りの人から違和感を指摘されたといった場合は、早めに眼科を受診し医師の診察を受けましょう。

まとめ

眼瞼下垂は、上まぶたが下がることで視野が狭くなったり外見が悪くなったりする病気です。病状が進むと日常生活に支障をきたすこともあるため、見た目の問題だからと放置せず、適切な治療を受けることが重要です。

軽い症状はまぶた用のテープや接着剤を使用して改善できることもありますが、重い症状の改善には基本的に手術が必要になります。まぶたや目の周りが気になったり、周りの人から違和感を指摘されたりした場合は早めに眼科を受診し、目の健康を守りましょう。

監修者プロフィール

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

HP:https://www.keishin-eye.com/

山梨医科大学 医学部卒業後、慶應義塾大学 眼科学教室入局。米・ハーバード大学 公衆衛生学修士取得。慶應義塾大学 眼科学教室 特任講師。
眼科のなかでも「ドライアイ」を中心にした角膜の疾患を専門とする。日本におけるドライアイについての疫学研究の第一人者であり、近年増えている長時間のパソコン作業によるVDT(Visual Display Terminal)症候群などの研究を行っており、日本のドライアイの有病率、パソコン使用時間とドライアイとの関係について世界で初めて証明した。ドライアイにつながる危険因子を研究し、ドライアイ診断に関する国際的な基準づくりにも携わる。
予防医療の啓蒙活動にも力を入れ、『しまじろうとEye Care Book』幼稚園や保育園の先生の目の教科書となるような『子どもの目見守りサポートBook』を作成。
目の健康について学び、セルフケアができるよう、『ナカナイ涙』などのWebサイトの監修も手掛ける。

【所属学会】
日本眼科学会 / 日本眼科医会 / 日本角膜学会 / 小児眼科学会 / 日本弱視斜視学会 / ドライアイ研究会

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