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花粉症をはじめとするアレルギー性結膜炎。目のかゆみや充血など、つらい症状に悩む人も多いのではないでしょうか。
近年では、日本人の約4人に1人が花粉症、約2人に1人が何かしらのアレルギー疾患を持っていると報告されており、アレルギーは身近な疾患と言えます。
この記事では、アレルギー性結膜炎について原因や症状、治療法を詳しく解説しています。花粉症の予防法についてもまとめているため、アレルギー性結膜炎に悩んでいる人はぜひ参考にしてみてください。
アレルギー性結膜炎とは?
アレルギー性結膜炎とは、花粉やハウスダストなどのアレルゲン(アレルギー反応を引き起こす原因物質)によって結膜に炎症を引き起こす病気です。アレルギー性結膜炎の症状は、目のかゆみや充血、異物感などがあります。
代表的なものは花粉症など特定の時期だけ症状が出る季節性アレルギー性結膜炎ですが、1年を通して症状が出る通年性アレルギー性結膜炎、またソフトコンタクト使用者に見られる巨大乳頭結膜炎もアレルギー性結膜炎の一つです。
アレルギーとは?
アレルギーとは、体内に侵入した異物に対して体が起こす過敏な反応です。
わたしたちの体には、細菌やウイルスなどの異物から身を守るための「免疫」という仕組みがあります。免疫機能とは、体にとって害のあるものを排除しようとする働きです。
細菌やウイルス以外にも、花粉やハウスダストなど特定の抗原(アレルゲン)を害があるものとみなしてしまうことがあります。その結果、免疫機能が抗原に対して過剰に反応し、体にさまざまなアレルギー症状を引き起こしてしまうのです。
アレルギーを引き起こす「アレルゲン」の種類
わたしたちの身の回りには、さまざまなアレルゲンがあります。ここ数十年、日本人の生活環境・習慣の変化によって、アレルギー疾患で悩む人は増加し続けています。
アレルゲンとして代表的なものは、ホコリ、カビ、ダニなどといったハウスダスト、スギやブタクサなどの花粉、犬や猫などペットの毛、卵や乳、小麦などの食物、ラテックス(ゴム)、ヨードなどがあります。
アレルゲンの中でも、特にアレルギー性結膜炎の原因となるものは図の通りです。
アレルギー性結膜炎の種類と原因
アレルギー性結膜炎は、原因や種類によって以下の4つに分類されます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
花粉症(季節性アレルギー性結膜炎)
花粉症とは、植物の花粉がアレルゲンとなって起こるアレルギーです。代表的な花粉は春先に多いスギ(1~5月)とヒノキ(3~5月)、秋に多いブタクサ(8~10月)です。
花粉そのものに毒性はありませんが、花粉症の人の体内に入ると害のあるものとしてみなされ、免疫機能が過剰に反応してしまうことが原因でアレルギー症状が起こります。
主な症状は、ひどい目のかゆみや充血、涙目などで、花粉症患者の約7割がくしゃみや鼻水、鼻づまりなどといったアレルギー性鼻炎も併発します。
花粉症は毎年決まった時期に症状が現れるため、季節性アレルギー性結膜炎とも呼ばれます。
花粉が本格的に飛び始める前から抗アレルギー薬を点眼することで、症状を軽減させることが可能です。
通年性アレルギー性結膜炎
通年性アレルギー性結膜炎は季節性とは異なり、アレルゲンが1年を通して存在します。そのため症状が長引き、アレルギーが慢性化しやすいと言われています。
アレルゲンはホコリやダニなどのハウスダスト、ペットなど動物の毛やフケなど常に身の回りにある物がほとんどです。そのため、こまめに掃除をしてホコリを除去するなど、環境を整えてアレルゲンを除去していくことが予防の上で重要となります。
近年の住宅は気密性が高く通気性が悪いため、ダニにとっては過ごしやすい環境です。こまめな換気や、部屋を清潔に保つことを意識しましょう。
症状は花粉症と同様で、ひどい目のかゆみや充血、涙目などです。多くの場合、くしゃみや鼻水、鼻づまりなどといったアレルギー性鼻炎の症状も伴います。
春季カタル
春季カタルとは、アレルギー性結膜炎の重症型です。小学生から中学生の男児に多く発症することから、若年者という意味で「春季」という病名がついています。症状は1年を通して見られますが、春や秋に悪化して冬に軽減する季節変動の傾向があります。
原因は他のアレルギー性結膜炎と同じくハウスダストや花粉、ペットの毛などですが、喘息やアトピー体質などアトピー性疾患の既往や家族歴も関係があると考えられています。
症状は強い目のかゆみと充血、流涙などです。上まぶた裏の結膜に石垣状の凹凸ができるため、異物感が強く角膜をこすって傷付けてしまうこともあります。炎症が悪化すると角膜が混濁し、視力障害を起こします。
春季カタルは、成長して思春期を迎えるとともに自然寛解する傾向がありますが、なかには大人になっても治らないケースも見られます。
巨大乳頭結膜炎
巨大乳頭結膜炎は、上まぶたの裏側にボツボツとした大きな乳頭が形成されて結膜に炎症を起こしている状態です。
主にコンタクトレンズ使用者において、レンズに付着したたんぱく汚れや摩擦が原因となってアレルギー反応が起こります。アトピー性皮膚炎がある人は粘膜が弱いため、巨大乳頭結膜炎が起こりやすいと言われています。
症状は、ゴロゴロと強い異物感、目のかゆみ、充血などです。炎症が悪化するとまぶた全体が腫れたり、乳頭と角膜がこすれて角膜が傷付いてしまったりすることもあります。
治療は抗アレルギー薬、抗炎症薬に加えて、コンタクトレンズ装用者はコンタクトレンズの装用をしばらく中止します。
2週間以上の交換型ソフトコンタクトレンズやハードコンタクトレンズを使用している場合、汚れのたまらない1日使い捨てタイプのコンタクトレンズに変更することで再発防止につながります。
アレルギー性結膜炎の症状
アレルギー性結膜炎の症状は、充血、目やに、涙目、異物感など一般的な結膜炎の症状に加えて、思わず目をこすりたくなるほどの強いかゆみが特徴です。
目を強くこすってしまうと充血が進み、痛みや白目のむくみなども引き起こします。
花粉症などによるアレルギー性結膜炎では、くしゃみや鼻づまりなどといった症状を伴う場合もあります。
アレルギー性結膜炎の検査方法
アレルギー性結膜炎に必要な検査は、問診と細隙灯顕微鏡です。目のかゆみなどの症状や結膜の状態(アレルギー反応が起きているかどうか)から判断します。
さらに、必要であれば血液検査などでアレルゲンを調べることも可能です。血液中の抗体濃度を測定することによって、どのアレルゲンに対して反応しているかが分かります。
アレルゲンが特定できればうまく避けるための予防策が立てられるため、今後のアレルギー対策や治療にも役立つでしょう。
アレルギー性結膜炎の治療方法
アレルギー性結膜炎の治療では、かゆみや充血などの症状を軽減させる目的で抗アレルギー薬を点眼します。抗アレルギー薬は症状を引き起こすヒスタミンを抑える働きがあるためです。
抗アレルギー薬にて効果が見られない場合や、重症の場合はステロイド薬を点眼します。ステロイド薬は抗アレルギー薬と比べて効果が強く即効性もありますが、副作用として眼圧が上昇する可能性があるため注意が必要です。医師からの指示を守り、定期的に通院して眼圧を確認してもらいましょう。
春季カタルの場合は、免疫抑制点眼薬を用いて治療します。
アレルギー性結膜炎の代表的な症状として目のかゆみがありますが、かゆくても擦らないように注意してください。目を擦れば擦るほどヒスタミンという物質が放出されて、かゆみや炎症が悪化してしまうためです。
かゆみがひどい場合は冷たいタオルで目を冷やしたり、専用の洗眼液で目を洗ったりすると軽減させることができます。
アレルギー性結膜炎の予防方法
花粉症の場合は、花粉シーズンの前から抗アレルギー点眼を開始しておくことで、症状が軽くなったり花粉症の期間が短縮されたりといった効果が期待できます。
また、メガネなどの着用で花粉の侵入を防ぐ、ハウスダストが発生しないように部屋を清潔に保つ、動物を屋内で飼わないなどアレルゲンを避けることはアレルギー性結膜炎予防のために重要です。
コンタクトレンズを使用している場合は、毎日交換する1日使い捨てタイプにすることで症状が軽減する場合もあります。
花粉症はメガネを付けるだけでも軽減される
気軽にできる花粉症対策として「メガネを付ける」という方法があります。普通のメガネを付けるだけでも、メガネなしの状態と比較して60~70%の花粉が防げることが分かっています。
目は直接外界と接している器官であり、結膜は免疫細胞や毛細血管が多く炎症を起こしやすい構造です。そのため、メガネによって目に入る花粉の量を減らすことは、花粉症の軽減につながると言えるでしょう。
また、最も花粉ブロック効果が高いフード付きタイプの花粉症用メガネでは、最大94%の花粉をカットできます。症状がひどい人や花粉対策に力を入れたい人は、フード付きタイプを選ぶと良いでしょう。
視力がよい人は度なしメガネやサングラス、普段はコンタクトレンズを使用している人も、花粉症の時期はメガネに切り替えることをおすすめします。目とコンタクトレンズの間に花粉が入り込み、摩擦によってアレルギー性結膜炎の症状が悪化してしまう可能性があるためです。
「どうしてもメガネに抵抗がある」という人は、外出時だけでもサングラスなどを付けて花粉を防ぎましょう。
花粉が付きにくいレンズもおすすめ
普通のメガネでも花粉の侵入はある程度防げますが、花粉症対策には表面に花粉が付きにくい加工が施されたレンズもおすすめです。
「帯電(静電気)防止機能付きレンズ」は静電気の発生を抑えることにより、花粉やホコリがレンズに付着しにくい構造になっています。見た目は普通のメガネと変わらないため、フード付きタイプの花粉症用メガネに抵抗があるという人は取り入れてみてはいかがでしょうか。
普段使用しているメガネを帯電防止機能付きレンズに交換すれば花粉シーズン以外にも使えて、ブルーライトカット機能などをつけることもできます。
花粉対策としては、レンズの洗浄も大切です。外出から帰ったらレンズを水で洗い流して花粉を落としましょう。水分をティッシュなどで拭き取った後に、専用のレンズクリーナーを使用すれば皮脂汚れなどもすっきり落とせます。
レンズをお湯やせっけんなどで洗うとレンズのコーティング剥がれや傷みの原因となるため、必ず水や専用クリーナーで洗うようにしてください。
まとめ
アレルギー性結膜炎は、花粉やハウスダストなどのアレルゲンによって、結膜に炎症を引き起こす病気です。目を擦りたくなるような強いかゆみが特徴で、他にも充血や涙などの症状が見られます。
治療は主に抗アレルギー薬などの点眼が行われますが、生活環境を整えてアレルゲンを除去することもアレルギー性結膜炎を予防する上で重要です。
花粉症の場合は、普通のメガネを付けるだけでも目に入る花粉の量を減らして症状を軽減することができるため、外出時はメガネやサングラスを付けることをおすすめします。