目次
子供の近視が増加しており、世界的に問題になっています。近視になると生活で不便を感じるだけでなく、将来目の病気になるリスクにもつながります。目の病気が隠れている場合があるため、健診で視力の低下を指摘されたら、早めに眼科を受診しましょう。
また、子供の視力低下には、適切なメガネをかけて視力を矯正することが大切です。この記事では、子供の視力が低下する原因と予防法、メガネについて解説しています。「子供の近視が心配」「学校の健診で子供の視力が下がっていた」という方は、ぜひ参考にしてください。
子供の視力低下(近視)は
増加傾向
視力が低下している子供は、世界的に増加傾向にあります。日本でも、学校の健診で視力の低下を指摘される子供は珍しくありません。子供の近視の有病率は確かなデータはありませんが、裸眼視力が低下した子供の割合から、日本でも子供の近視は増加し続けていると考えられています。
グラフは、裸眼視力1.0未満の割合です。裸眼視力1.0未満の子供のうち、8~9割は近視と考えられています。
小学生~高校生において裸眼視力1.0未満の割合は年々大きくなっていることから、子供の近視が増加していることが推測できます。
また、令和4年度のデータを見ると、高校生で7割程度、中学生で6割程度、小学校で3割以上が裸眼視力1.0未満です。データより、学校の段階が進むにつれて近視の子供が増えていると考えられます。
子供の視力が低下する原因
子供の視力が低下する原因は、遺伝的要因と環境的要因の2種類です。
2つを明確に区別する方法はなく、多くの場合では両方が混在していると捉えられます。その中で、近年子供の近視が増えているのは、主に環境的要因によるものと考えられています。
遺伝的要因
遺伝は、親から子供へ外見や体質などの特徴が受け継がれることを指しますが、近視も遺伝し、親が近視の場合は子供も近視になりやすい傾向があります。
遺伝子は祖父母やその先祖から受け継いでおり、両親の視力が正常でも子供が近視にならないとは限りません。小学校に入る前の近視は、環境的要因よりも遺伝的要因が強く影響しています。目の病気を合併しやすい病的近視や、近視以外の病気が隠れている場合があるため、早い時期からの近視は注意が必要です。
環境的要因
小学校に入学してから起こる近視には、環境が大きく影響しており、これを「単純近視」と呼びます。
【環境的要因となる生活習慣の例】
- 屋外で過ごす時間の減少
- スマートフォンやパソコン、ゲームなどの電子機器を見る時間(スクリーンタイム)
- 勉強や読書など、手元を見続ける作業(近業)
現代社会では外で遊ぶ時間が少なくなり、スクリーンタイムが増加しています。小学校でもタブレットを使うなど、近視になりやすい生活習慣を避けるのは困難な環境です。
また、単純近視にも遺伝の影響があるとされており、近視の両親から生まれた子供は、環境要因も重なることで近視になりやすい傾向があります。親が近視の場合は、特に生活習慣に注意が必要です。
子供の視力がどれくらい低下したらメガネが必要?
子供がメガネをかける基準として、裸眼視力0.7以下(学校の視力検査ではC〜D)が目安になります。後ろの席から黒板が見えにくくなる程度の視力です。ただし、地域や学年によって状況や環境も異なるため、絶対的な基準はありません。
近視になっても手元は見えるため、日常生活で不便を感じていなければ、すぐにメガネをかける必要がない場合もあります。特に、小学校低学年のうちは大きな字を見ることが多いため、様子を見ても良いでしょう。
また、近視が軽度の場合には、黒板など遠くを見る時だけメガネをかける方法もあります。メガネをかけたり外したりしても、近視が進むことはありません。近視が進んだら、黒板を見る時と家庭用でメガネを使い分けると、目の負担を軽減できます。
子供用のメガネを購入する場合には、目の病気を確認する必要があるため、まずは眼鏡店ではなく眼科を受診すると安心です。また、一度メガネを購入してからも定期的に眼科で健診を受け、子供の成長に合わせてレンズ・フレームを調整しましょう。
子供の視力低下を日常生活で
予防するポイント
子供の近視には環境的要因が大きく関わっているため、視力低下を防ぐには、生活習慣がとても大切です。
特に最近では、子供がスマートフォンやタブレットを利用する時間が増えており、スクリーンタイムの管理も課題になっています。
屋外での活動時間を増やす
屋外活動が近視の発症を予防することが、科学的に証明されています。近視を予防するには、1日2時間屋外で活動する時間を確保することが理想的です。2時間連続で外にいる必要はなく、短時間の外遊びを組み合わせても問題ありません。
【屋外活動の例】
- ベランダや庭で過ごす
- 公園へ散歩に出かける
- 休み時間になるべく外で遊ぶ
- 屋外のスポーツに親しむ
両親がともに近視でも、屋外で遊ぶ時間が長ければ、子供が近視を発症するリスクが低下することが分かっています。帽子や日焼け止めなど、紫外線対策は十分に行い、積極的に外にいる時間を増やすことがおすすめです。
近業距離とスクリーンタイムを管理する
電子機器や教科書を見る、ノートに字を書くなど、近くを見て行う作業のことを近業(きんぎょう)といいます。近年では近業が増えることで、子供の近視が増加していると考えられています。
近業を行う際はものを見る距離と、見ている時間を管理しましょう。
【近業を行う際の注意点】
- 30cm以上離してものを見る
- 30分以上連続して近くを見続けない
- 20分に1回、20秒以上、20feet(約6m)遠くを眺めるようにする(20-20-20ルール)
学校の授業では黒板を使っているため、近業が続くことはあまりないと考えられます。しかし、自宅で学習や電子機器の使用をする際、ついつい手元を長時間見続けてしまうこともあるでしょう。近業を行う際は、注意点を参考になるべく目に負担をかけない工夫が大切です。
適切な明るさと姿勢を保つ
子供の視力低下を防ぐには、部屋の環境も大切です。暗い環境で近業を行ったり、姿勢が悪く画面を顔に近付けすぎたりすると、目の疲れにつながります。
読書や書き物をする時は、十分な明るさ(照度計で200ルクス以上)を保ちましょう。また、画面に照明などが映り込む場合は、反射防止フィルムを使う方法もあります。
【視力低下を防ぐための正しい姿勢】
- 顔を画面から30cm以上離す
- 電子機器を使う時、目線は画面に対して垂直になるよう調節する
- 背筋を伸ばして座る
- 椅子に深く座り、両足を床につける
- 机はひじが直角になる高さに、椅子はひざが直角になる高さに調節する
質の良い睡眠をとる
視力の低下を防ぐには、睡眠の質も大切です。日頃から夜ふかしをせず、十分な睡眠を確保しましょう。
近視の方を対象にした調査によると、近視が強い子供は、そうでない子供と比べて就寝時間が遅く、睡眠時間が短いことが分かっています。
また、睡眠時間だけでなく寝る前の過ごし方にも注意が必要です。ベッドに入る1時間前には、スマートフォンやパソコン、ゲームを使わないようにしましょう。電子機器が発するブルーライトは、睡眠を司るホルモン・メラトニンの分泌に影響を与え、睡眠の質に影響を与えると考えられています。
学校健診で視力低下を指摘されたら早めの眼科受診を
学校健診で視力低下を指摘されたら、早めに眼科を受診してください。健診では目の詳しい状態までを調べることはできません。眼科では視力測定に加えて、斜視や弱視などの目の病気がないか検査してもらえます。
近視を矯正するためにメガネやコンタクトレンズを使う際も、安全に使うために眼科で処方せんを発行してもらいましょう。また、一部の眼科では、近視の進行に対する治療法を実施していますが、現時点において、日本では認可承認を受けておらず、有効性や安全性がまだ十分に確立されていません。
近視の進行を遅らせる可能性があると考えられている治療法
低濃度アトロピン点眼
通常より低い濃度のアトロピンを点眼する
オルソケラトロジー
ハードコンタクトレンズを睡眠時に装着して、一時的に角膜の形を変える
多焦点ソフトコンタクトレンズ
遠近両用コンタクトレンズを使って近視の進行へ影響を与える
レッドライト治療法(red light therapy)
1日2回、赤色光を覗き込む治療法
近視管理用メガネ
周辺部に特殊な光学設計を施した多焦点レンズを使用したメガネ。多分割レンズなどが代表的で、近視の進行への効果が期待されている
子供の視力低下に関する
よくある質問
子供が近視になった時、メガネやコンタクトレンズの使い方について疑問を持つ方も多いでしょう。また、将来の視力が心配になる方もいるかもしれません。ここでは子供の視力低下について、よくある質問をまとめました。
Q.子供の視力が低下した際に見られるサインは?
近視になると、近くのものははっきり見えますが、遠くのものはぼやけて見えます。また、ピントを合わせにくいため、目の疲れを感じやすくなりますが、子供自身が正確に訴えることは難しい場合が多いです。
以下のサインが見られたら、視力が低下している可能性があるため、サインを見逃さないようにしましょう。
- 顔を近付けてものを見る
- 黒板やテレビを見る時、目を細める
- まばたきが多い、目をしょぼしょぼさせる
- 目を擦る
Q.子供の視力が自然に回復する可能性はある?
一度近視になると、基本的に自然には回復しません。よって視力が低下する前に生活習慣を改善して、近視を予防することが大切です。
ただしスマートフォンやタブレットを長時間視聴していると、一時的に近視に似た症状を起こすことがあります(仮性近視)。手元にピントが合った状態が続いた結果、目の筋肉が緊張して遠くにピントを合わせにくくなるためです。仮性近視の場合は、目を休めれば回復します。
Q.一度メガネをかけると視力低下が進行するのは本当?
現代の医学では、適切な度数のメガネをかけた方がよいと考えられています。
以前は「メガネをかけると近視が進む」と考えられていました。しかし、逆にメガネをかけずにいると、網膜への像がぼやけて近視が進むという意見もあります。
メガネの度が強すぎると近視が進みやすくなるため、授業中など必要な時に十分見える程度のメガネを使用しましょう。
Q.子供は何歳からコンタクトレンズを使用できる?
コンタクトレンズに明確な年齢制限はありません。しかし、コンタクトレンズは目に直接装用するため、管理が難しい医療機器です。誤った方法で使用すると、目の病気の原因になります。中学生~高校生など、ある程度の年齢に達してからの使用が安全です。
例えば、装用している際に目の痛みや見えにくさを感じた時にも、その場で取り外す必要があります。自分で外せないと、目に障害を起こす可能性があるため危険です。コンタクトレンズは、自己管理や判断ができる年齢になってからがおすすめです。
Q.子供の視力が低下した場合、近視以外にどのようなことが考えられる?
近視以外でも、遠視・乱視などの屈折異常により視力が低下している場合もあります。
- 近視 : 近くははっきり見えるが、遠くがぼやけて見える。
- 遠視 : 近く、遠くの両方がぼやけて見える。子供は調整力が強いため、視力に異常が見られない場合も。
- 乱視 : 角膜や水晶体の歪みにより、像がぼやけて見える。
これらの場合も、レンズにより視力を矯正することができます。
また、上記に加えて、稀に以下のような目の病気も視力低下を引き起こすことがあります。
- 弱視
- 白内障
- 緑内障
- ぶどう膜炎
- 網膜剥離
特に視力が急激に低下した場合、重篤な病気が考えられます。違和感を覚えたら速やかに眼科を受診しましょう。
まとめ
今回は子供の視力低下について解説しました。
子供の近視は年々増加しています。原因として屋外活動の減少や、スマートフォン・タブレットの普及が考えられています。
外遊びや近業、スクリーンタイムの管理など、日頃の生活習慣から視力低下を予防しましょう。
また、学校の健診で視力の低下を指摘されたら、近視が進行しているかもしれません。眼科を受診して目の病気がないか確認してもらい、必要に応じてメガネで視力を矯正しましょう。




