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近くは見えるのに遠くが見えにくくなる症状を近視といいます。近年では若年層を中心に近視と診断される人は増え続けています。同じ近視でも年代によって老眼が入ってくるので度数を合わせて対策する必要があります。このような近視の原因や回復方法について解説します。
近視とは
近視とは近くは見えるのに遠くが見えにくくなる症状を指します。
遠くを見る時に目を細めないと見えないなどの症状は近視がおこっている可能性があります。なぜ遠くが見えにくくなるかというと、網膜より手前で焦点を合わせてしまうことでピントがずれているからです。このように遠くが見えにくくなることを近視と呼びますが、すべての近視が同じ原因ではありません。
近視の分類
近視は網膜より手前で焦点が合うことでおこる状態ですが、生活環境を整えたりすることで改善できる「仮性近視」と、遺伝や眼球の長さが原因で屈折異常をおこす「真性近視」があります。
仮性近視
調節筋肉の緊張が原因する場合には緊張をほぐす目薬やトレーニングも有効です。
真性近視
眼軸長(眼球の長さ)によって焦点が合わなくなるためメガネなどで屈折を補正する必要があります。
近視の原因
近視で悩まされる人は年々増えていますが、これは生活環境によるものが大きいと考えられています。最近遠くが見えにくくなった…と感じる人は近視の症状が進んでいる可能性もありますので早めに治療やメガネなどの度数を合わせることが必要です。近視になる原因は様々あると言われていますが、遺伝などの先天性のものと生活環境の影響による後天性のものでは、治療方法も変わるので自分の近視がどれにあたるのかを知るのはとても大切なことです。
近視になる先天性要因
遺伝によるものもありますが、遺伝によらなくても眼軸長(眼球の長さ)が長い場合は近視になります。ただし、子供の頃は毛様体筋(ピントを合わせる筋肉)の調節力が強いため近視を隠す傾向があるので、目を細めるなどの症状が見られたら近視を疑って診察をうけることが望ましいです。
近視になる後天性要因
年々遠くが見えなくなってきた場合などは後天的な生活環境などの要因が大きく関わっています。特にスマートフォンやタブレット端末などの要因は大きいと言われており、手元に近い状態で長い時間ピントを合わせることで、眼の緊張状態を維持させ、環境に順応しようと眼が長くなる傾向もあると言われています。
また、パソコンを常時使用する職業も増え、室内で作業する時間が長くなっているのも原因の一つと考えられます。人によっては近視が進行し、メガネの度数を頻繁に変える必要があることもあるため、定期的な検査が必要なこともあります。
近視の治療
近視だと診断された場合には治療としてメガネやコンタクトレンズを処方されることが多いです。
近視の傾向があっても、眼軸長(眼の長さ)が正常な場合には毛様体筋の異常な緊張で近視の症状が出ている場合があります。このような場合には緊張をほぐす目薬や、遠くを見るのと同じ効果のある機械で毛様体をリラックスさせるトレーニングを行うことで改善が期待できることがあります。
近視の治療の種類
近視の治療には以下のような方法があります。
メガネ
メガネで視力が問題なく回復する場合には一番手軽で簡単な治療方法です。
左右差が大きい場合や乱視がきつい場合にはメガネで矯正しても歩きにくかったり階段が歪んでしまうこともあるので、医師の指導のもとで慣らしてから処方を受けるのが一番安全です。
近視だけでなく年齢によっては老眼が入ってくることで、手元も見えにくくなってきます。その場合、単純に遠くを見やすくすれば良いといった問題ではなくなるため、自分の年齢や生活スタイルに合わせて、近視だけのメガネや遠近両用といったメガネを選びましょう。
コンタクトレンズ
メガネが窮屈に感じる人や近視の度数が強い人はコンタクトレンズを選ぶ場合もあります。一日で使い捨てのコンタクトレンズなど、衛生的にも安心して使えるコンタクトレンズが増えてきました。
度数が強いとメガネでは歪みが生じてしまい不快に感じる人もいますが、コンタクトレンズは眼球に直接レンズを入れるため、歪みなどが生じなくなります。
また、近視の度数が左右で大きく違う場合などにもメガネよりも見やすく矯正することができます。
老眼が入ってくる年齢にも対応できるような遠近両用のコンタクトレンズが増えてきたので選択肢が広がり便利になっています。
目薬による投薬
比較的軽度の近視や、仮性近視の場合には有効な治療方法です。
近視になりたての軽度な場合は眼軸長(眼の長さ)には異常がないにもかかわらず近視の症状が出ることがあります。これは水晶体(眼のレンズの厚さ)を調節する毛様体筋の緊張によって厚みを維持してしまうことが原因です。緊張が続くと目の長さを合わせようと順応してしまうことになるので、早期に毛様体筋の緊張をほぐす目薬を使用したほうがいいでしょう。
近視の予防
近視になってしまうとメガネやコンタクトレンズがないと視力が出なくなってしまいます。また、近視が進行し度数が上がるとメガネやコンタクトレンズの度数も変える必要があるので進行を抑える予防をしていきたいものです。
メガネやコンタクトレンズによる予防
累進屈折力レンズ眼鏡や多焦点ソフトコンタクトレンズといった特殊なレンズによって網膜周辺の焦点ボケを軽減させ、眼軸が長くなるのを防ぐ方法ですが、一般的な治療方法としてはあまり利用されていません。
オルソケラトロジーによる予防
睡眠中にハードコンタクトレンズを入れて角膜の形を矯正する方法です。角膜の形を変えることでピントを合わせるようにすることで眼軸長(眼の長さ)が伸びることを防ぎます。
この方法も治療するクリニックや病院が限定されるので一般的に普及しているとは言えません。ハードコンタクトレンズを入れたまま就寝するので、しっかりした医師の管理下でないと安全に行えない予防策となります。
近視を進行させないための予防
軽度な近視を自覚したら適正な度数のメガネなどで矯正する必要があります。矯正せずに無理にピントを合わせようとすることは近視を早める原因になるので気をつけてください。
長時間ピントを近距離で合わせないように気をつける、適度に遠くを見て目の緊張を和らげる、など視力の低下を防ぐ生活を心がけましょう。
低濃度アトロピン
「低濃度アトロピン0.01点眼薬(アトロピン配合)」は、近視の進行を平均60%軽減させ、日中の光のまぶしさに影響を与えない治療法と言われています。また、目の遠近調節機能(手元を見る作業)に殆ど影響を与えないのですが、毎日必ず就寝前に1滴点眼する必要があります。
近視の予防は近視になる前に対策が必要なので早期の発見が重要です。ほとんどの場合は眼軸長(眼の長さ)を伸ばさないための予防策となります。
近視になってしまってからも、度数を進行させないように予防することで強度な近視を防ぐことができます。
どのくらいからメガネが必要?
子供の頃は調節力が強く隠れた近視が多くなるため、薬剤を用いて本来の自分の視力を調べるの必要があります。最近では子供でもパソコンやゲーム機などで近距離を見る時間が長いことで、小学生から近視と診断されるケースが増えています。
黒板が見えにくいなど日常生活に支障をきたすので、適正な度数のメガネなどで矯正する必要があります。見えにくいな…と自覚したら検査を受けてみましょう。
メガネが必要な視力とは?
視力は片眼ずつ測定しますが、生活に必要な見え方は両眼視(両目で見る視力)です。しかし、両眼で度数の差がある場合には両眼視でカバーできない見え方をすることもあるので検査が必要です。
- 視力測定で1.0〜1.5
メガネなどは必要ありません。 - 視力測定で0.7〜0.9
少し遠方が見えにくくなっている可能性があります。両眼で見えていても片目では見えていないこともあるので、検査が必要です。 - 視力測定で0.3〜0.6
必要に応じてメガネが必要です。運転免許の取得や更新では片眼0.3以上、両眼で0.7以上必要です。満たない場合にはメガネやコンタクトレンズでの矯正が必要です。教室の一番うしろから黒板を見える視力も0.7以上と言われていますから、遠さに応じてメガネを用意しましょう。 - 視力測定で0.2以下
メガネなしでは遠方がぼやけて見えない視力です。裸眼では日常生活にも支障をきたすので必ずメガネを用意してください。
メガネは視力検査だけで作れる?
屈折度の単位をジオプトリー(記号はD)で表します。
- -3.00Dまでを
弱度近視 - -3.00D~-6.00Dを
中程度近視 - -6.00D以上を
強度近視
と分類します。
この屈折度は他覚的に機械で判断される度数で、自覚的に測定する視力検査の数値ではありません。眼科などで視力測定をする際にはこのジオプトリーを元に矯正するので、近視の程度がわかります。
視力検査だけではメガネの適切な度数を判断できないので、このジオプトリーを用いてどの度数が最適に見えるか、無理なく視力が出る度数はいくらかを判断します。
気になることがあるなら病院へ
近視は近年でも増え続けている病気で現代病とも言われています。近視になりやすい環境が多くなりメガネなどを必要とする人が多くなったことで販売店も増えました。
メガネだけなら販売店で簡単に買えるので便利ですが、見えにくさの中には近視だけでなく病気が潜んでいる場合もあります。眼(特に眼底)は細かい神経や血管なども多く病気を発見しやすい場所とも言われているので定期的に眼科などの専門医に診てもらうことは大切です。
ただの近視と思わず、気になることがあったりいつもと調子が違うなどの違和感を感じたら病院へ受診するようにしましょう。