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「健診で遠視の疑いといわれたけど、遠視ってそもそもどんな状態?」とお悩みの保護者も多いことでしょう。近視に比べ話題にもあがりにくいのも、遠視の理解がまだ広まっていない原因の一つかもしれません。
遠視の程度によってはメガネがいる・いらないと、かなりの幅があります。適切な対処をしないと勉強に支障が出たり弱視になったりと、子供の成長を妨げる要因にもなります。
今回は子供の遠視について、注意すべき点や対処方法を解説します。
遠視とは?
遠視とはそもそもどのような状態で、弱視とどのような関係性を持っているかを解説します。
遠視の状態について
遠視とは、目がリラックスしている状態のとき、見たい物の映像が、網膜の後ろで焦点を結ぶ目のことです。
物をはっきりと見るためには必ず「網膜の上で焦点を結ぶ」必要があります。網膜の後ろで焦点が合ってしまう遠視は、網膜の上に焦点を移動させるために、「調節力」という力を使います。
調節力とは目の筋肉を使い、水晶体を膨らませ、焦点の位置を前に持ってくる働きのことです。遠視の子供は目を開けている間、ずっと調節力を使い続けているので、遠視が強いほど疲れやすく、集中力が続きにくいといった特徴があります。
疲れて調節力が落ちたり、調節力でカバーしきれないほどの強い遠視だったりすると、裸眼では遠くも近くもぼやけて見えないという状態になります。
遠視を放置すると弱視のリスクが高まる
遠視が軽くても調節力が弱い、または調節力が正常でも遠視が強い状況で、物がはっきり見えない状態が続くと、弱視になる可能性があります。
弱視とは「メガネをかけても視力が1.0に満たないこと」を指します。正常であれば裸眼で0.6でも、メガネをかければ1.0以上は見えますが、弱視だとメガネをしても視力が伸びません。
図のように、視覚の成長は1歳半頃をピークに徐々に遅くなり、8歳頃に完成します。成長が著しい間に、脳に「はっきり物を見る」ことを学習させなければ、視覚の機能はぼやけた見え方のまま止まってしまうのです。
( 画像出典:日本弱視斜視学会 / 弱視 https://www.jasa-web.jp/general/medical-list/amblyopia )
子供の遠視は
周囲の大人が注意する
子供の遠視は周囲の大人が観察し、発見しないとなかなか見つかりません。
子供は遠視であることに気づけない
遠視は眼球が小さいと起こるため、眼球の発達が未成熟な乳幼児の大半は遠視です。成長に伴って眼球が大きくなると、遠視が取れて正視や近視化していきます。
遠視の対処をしていないせいで視界がぼやけていても、子供は自分の見え方以外を知らないので、自ら「見えづらい」と訴えることが少ないです。
一方、大人はつい近視に意識を奪われがちであり、遠視の理解や知識が少ないことも遠視の発見を妨げているかもしれません。遠視の発見には、普段からの子供の様子を注意深く観察することが大切です。
子供の遠視を見つけるには?
子供の遠視を見つけるためには、大前提として健診を受けることが挙げられます。
子供の眼科健診としては、3歳児健診、就学時健診、学校健診があり、特に重要なのは3歳児健診です。視覚の成長が著しい時期であり、遠視や弱視が疑われた場合、適切な対処や治療をすれば正常視力を取り戻せる可能性があります。
3歳でも3歳0か月と3歳9か月では発達レベルが変わるため、間をとって3歳6か月頃に一次検査(家庭)を行なうのが望ましいです。保護者が検査するので、うまくいったか自信がない場合は正直に記載し、二次検査へ進みましょう。
就学時健診は小学校に入学する直前で行なわれます。義務制ではないので、受診会場へ連れて行くという保護者の協力が必要です。
3歳児健診で見逃された遠視や弱視がこのタイミングで発見されることも少なくありません。就学時健診の年齢は6歳であり、弱視がわかった場合、完治の難易度が上がることが予測されます。
小学校に入ってからは年1~2回行なわれる学校健診が遠視や弱視の発見につながりますが、弱視の可能性があっても年齢的に手遅れになってしまうこともあります。
健診以外に自宅で子供を観察する際に、以下のポイントに注意してみてください。
- 頭痛を訴えていないか
- 眼精疲労を訴えていないか
- よく目をこすっていないか
- すぐ眠くなることはないか
- 本の読み間違いが多くないか
- 見るときに顔を傾けていないか
いずれにしても、健診で遠視や弱視の疑いがあったり、日常生活で「おかしいな?」と思うことがあれば、直ちに眼科を受診すべきでしょう。
遠視以外の子供の目の病気
遠視に合併した斜視や、遠視のほかに乱視が物を見る機能の発達を邪魔することがあります。遠視と斜視や乱視の関係についてそれぞれ詳しく解説します。
斜視
遠視に合併する斜視として、調節性内斜視があります。遠視は物を見るために調節力を使いますが、人間の目はもともと「調節力を使うと寄り目になる」という性質を持っています。
常に調節力を使い続ける遠視では、寄り目のコントロールがしにくくなり、内斜視を誘発しやすくなるのです。
調節性内斜視になると両目からの情報が均等に脳へ届かないため、物を立体的に見る機能が育たなくなってしまいます。弱視と同じく、視覚の発達期に治療しなければいけません。
( 写真出典 : やまぐち眼科 / 斜視 | 診療内容 https://yamaguchi-eye-clinic.com/medical/squint/ )
乱視
遠視や近視といった屈折異常と呼ばれる疾患には、乱視も含まれています。乱視とは、目の中に焦点が二つ以上ある状態で、物がブレて見えることです。
角膜や水晶体といった、光の通り道が歪んでいるために起こる屈折異常であり、乱視は誰でも少なからず持っています。程度が弱ければ特に心配はいりません。
しかし、乱視が強いほどブレが大きくなり鮮明に見えないため、強度乱視が疑われる場合は8歳頃までに治療しなければ弱視になる可能性があります。
子供の遠視に対処するには
遠視の子供には、近視の子供と同じように、メガネをかけさせることで対処ができます。
子供の遠視はメガネで対処する
子供の遠視は遠視用のメガネを装用します。遠視用のメガネは近視用と異なり、中心が膨らんだ凸(とつ)レンズを使用します。
凸レンズは「調節」と同じく、焦点を前方へ移動させる働きがあり、調節力を使わなくても網膜の上に焦点を結ばせることが可能です。
遠視用のメガネをかければ、楽に物を見ることができるため、集中力が続きやすくなり、学習への影響を心配しなくて済むようになります。
また、頭痛や眼精疲労の軽減にもつながるので、日常生活における子供の負担を減らす効果も期待できます。
子供のメガネを作るには精密な検査が必要
子供のメガネを作るのには直接眼鏡店に行くのではなく、まず眼科を受診しましょう。
子供全般、特に遠視の子供は、視力検査で調節力の影響を受けやすいという問題があります。子供の視力検査は調節力を取り除いて行なうのが原則ですが、そのためには調節麻痺薬という点眼をしなければいけません。
点眼は眼科でしか行なえないため、正確な屈折度数を検査するためにも、最初に眼科を受診し、メガネの処方箋をもらってください。