
この記事の監修者
内野 美樹
ケイシン五反田アイクリニック 院長

目次
遠視は遠くも近くもピントが合わずぼやけて見える状態のことを言います。常に目の筋肉が頑張ってピントを合わせているため眼精疲労が起きることも。また子供の遠視を放置すると将来的に弱視になる可能性もあります。
遠視の症状や原因、治療法、セルフチェック項目まで解説します。
遠視とは

近視は近くのものが良く見える、遠視は遠くのものが良く見える、そう思っている人が多いと思います。眼鏡をかけていない身近な人が遠視と聞いて、裸眼で遠くが見えて羨ましいなと思った近視の人はどれほどいるでしょうか。しかし、遠視とは遠くのものが良く見えるわけではなく、遠くも近くもピントが合わずぼやけて見える状態のことを指します。
目の中で外からの光を感じ取り、画像や映像として認識する部分を網膜と言います。目はカメラの構造と似ており、フィルム部分が網膜に当たります。像が網膜上に結ぶと、モノをはっきり見ることができます。

近視は網膜より前に像を結ぶため、近くのモノが良く見えます。遠視は、近視とは逆に網膜より後ろに像を結びます。網膜より後ろにピントが合うと遠くも近くもよく見えません。モノをしっかり良く見ようと調節させて像を網膜上に結ぶため、常に目が頑張っている状態になります。
遠視の人はどの距離のモノを見るにもピントが合っていません。なにか見ようとするだけで目の筋肉が頑張って調節しピントを合わせるため、近視の人より目への負担は大きくなっています。
遠視の症状
遠視の目はボーッと見ていると遠くも近くもピントを合わせることができません。遠視に伴って現れる目の症状は、次のことが挙げられます。
(1)視力低下
若い人は遠視でも自分が遠視だと気づきにくいです。若いとピントを合わせる力も強く、無意識のうちに頑張ってピント調節をしているため視力が良い傾向にあります。しかし、遠視の程度によっては若年でも自力のピント調節だけではぼやけが生じ、視力が下がることもあります。また年齢を重ねるにつれてピント調節機能が衰えていき(老視)、網膜上に像を結ぶことが難しくなってきます。中高年になり、裸眼視力の低下で眼科に受診して初めて自分は遠視だったと知る人もいます。
(2)眼精疲労

遠視の目は遠くも近くもピントが合わないため、若年でも中高年でも常に目の筋肉が働きピント調節が行われます。遠くのモノより近くのモノを見ている時のほうが、さらに強い調節力が必要です。スマートフォンやタブレット端末のように近くを見る作業が多い場合、遠視の目は特に疲れやすくなります。疲れ目が悪化すると眼精疲労となり、頭痛や肩こりといった様々な症状も現れます。
遠視の原因
遠視は網膜の後方に像が結ぶため、遠くも近くもぼやけて見えます。遠視になる原因は2種類あります。
(1)目の長さが短い(軸性遠視)

正常な目の奥行の長さ(眼軸)は成人で約24mmと言われています。外からの光は目の角膜、水晶体という部分を経由して網膜上で結び、モノを像として認識できます。角膜、水晶体の光を曲げる力が正常でも、眼軸が24mmより短いと網膜の後方で像が結んでしまい遠視となります。人は誰しも生まれたときは目が小さいので遠視です。成長に伴い目が大きくなることで眼軸も伸びていき、近視となっていきます。眼軸が短ければ短いほど強度遠視となります。
(2)角膜、水晶体の光を曲げる力が弱い(屈折性遠視)

正常な眼軸にも関わらず、角膜や水晶体の力が弱いと網膜の後ろで像が結ぶため遠視になります。軸性遠視より屈折性遠視の方が頻度が少ないと言われています。
子供の遠視

子供は遠視があるにも関わらず、見逃されることがしばしばあります。なぜなら子供はピントを合わせる調節力がとても強いため、視力低下が見られないためです。遠視の目は常にピントを合わせる筋肉が働いているため、子供でも眼精疲労の症状が現れることがあります。長時間宿題や読書ができない、何をするにも集中力が続かないといった些細なことから実は遠視だったと発覚することもあります。子供の遠視で注意すべき症状は眼精疲労の他に次のものが挙げられます。
(1)目が内に寄る(斜視)
遠くのものをみるときの目の位置はまっすぐ、近くのものを見るときは若干寄り目になることが正常です。遠視の度数が強いと、遠くも近くも見るときもの正常な人より強い調節力が働くため、目が内に寄ってしまいます。目が内に寄る内斜視が子供の頃から常に生じていると、両目で見る機能が発達しなくなるため早期治療が大切になります。
(2)視力が上がらない(弱視)

弱視とは眼鏡をかけても視力が1.0まで見えない状態のことをいいます。近視は近くにピントが合っているため弱視になりにくいですが、遠視は遠くも近くもピントが合う位置がないため弱視になりやすいです。遠視が強ければ強いほど、ピントが合いにくく弱視になる可能性があります。子供のうちに遠視を発見して、適切な度数の眼鏡をかけることが必要になります。
遠視の治療
遠視は眼鏡やコンタクトレンズを使用することが治療になります。しかしコンタクトレンズは近視と異なり、遠視の度数の種類が少ないため、使用には注意が必要です。 大人の遠視は主に老視の影響で手元が見えにくいという訴えが多いです。手元やパソコン作業の距離に合わせた老眼鏡を作製します。遠くが見えづらい人は遠くが見えるような度数の眼鏡や遠近両用眼鏡を作製します。しかし大人になって初めて眼鏡をかけるという人は、使用方法にコツが必要な遠近両用眼鏡は難しいことがあります。 子供の遠視治療の第一選択は眼鏡です。眼科でサイプレジンという調節力を麻痺させる作用がある点眼をして本来の遠視度数を引き出し、眼鏡を合わせます。適切な度数の眼鏡をかけることで斜視の改善や弱視の治療になるため早期の治療が大切です。
あなたは大丈夫?
遠視セルフチェック
遠視は近視と異なり、大人も子供も見えにくいといった自覚症状が少ないです。特に子供は生まれてからずっと遠くも近くもぼやける見え方のため、それが正常と思い見えづらいと訴えることは少ないと言われています。自分が遠視であるかどうか、自分の子供が遠視であるかどうかのチェック項目を次に紹介します。
(1)大人の遠視セルフチェック

- ずっと視力は1.2や1.5と言われていた
- 視力低下の訴えで眼科を受診した記憶がない
- 裸眼で近くを見る作業を続けると目の疲れがひどい
- 目の疲れ以外に肩こりや頭痛がある
- 年齢40代前半で近くの文字のピントが合いにくくなった
(2)子供の遠視セルフチェック

- 3歳児半健診の視力検査が上手くできなかったが経過観察と言われた
- 読書やお絵かきなど手元の作業が長時間続かない
- なにかやるにも飽きっぽく落ち着きがない
- 遠くにあるポスターの文字や置き物は見えている様子だ
- どちらかの目が内に寄っている気がする
これらの項目はあくまでもセルフチェックに過ぎませんが、少しでも引っかかる項目があったら眼科の受診をおすすめします。
気になることがあるなら病院へ
遠視は自覚症状が少なく、大人になって眼科を受診した時に初めて遠視だったと指摘される人も少なくありません。強い遠視があるにも関わらず、治療されずに大人まで至ると眼鏡をかけても視力が上がらない弱視になってしまいます。視力が発達途中である子供のうちに、可能であれば小学生に上がる前の幼少期のうちに度数の合った眼鏡をかけて治療を開始することが必要です。
遠視は早期発見、早期治療がとても大切です。少しでも自分自身や自分の子供の見え方に違和感を覚えたら、一度眼科を受診しましょう。