目次
「視力0.1と言われたけど、どれくらい悪いのかよくわからない」と気になっている方のために、視力0.1が示す意味や、視力0.1以下の見え方、矯正方法などを詳しく解説します。
視力回復のトレーニングも併せて紹介していますので、興味のある方はぜひ試してみてください。
視力0.1はどのくらい悪い?
視力0.1とは5mの距離から、視力表の一番上の輪(ランドルト環)の切れ目がギリギリ見える視力のことです。視力表の一番上にあるため「一番視力が悪い」という印象があります。しかし、実際は、視力0.1は屈折度数にすると、近視の場合₋2Dあたりであることが多く、₋2Dは「弱度近視」にあたります。
「裸眼視力0.1」と聞くと「ものすごく目が悪い」ように聞こえますが、更に目の悪い人からすると「ものすごく悪い」とは言えません。なぜなら、0.1より0.05の方が悪く、最終的には0.01、またはそれすらも見えない状態の視力の人もいるからです。
弱度近視の次は「中等度近視」「強度近視」と続き、屈折度数が上がるにつれ、裸眼視力は簡単に0.1を下回ります。
つまり、裸眼視力0.1はまだ弱い近視であり、これまで目が良かった方からすると「すごく悪くなった」印象がありますが、強度近視の方にしてみれば「そこまで悪くはない」と言えます。
視力0.1以下の人は
どのくらいいるの?
約4500人を対象としたアンケート結果によると、視力0.1以下の人の割合は30代以下で約45%、40代で約43%、60代で約23%いることがわかりました。
調査結果では視力低下が近視、遠視、乱視のいずれかであることは明記されていませんが、日本では近視の割合が高いことから、回答者の多くが近視だと考えられます。
若年層が高齢層より2倍も多く視力低下を抱えている原因としては、スマートフォンやパソコンなどのデジタルデバイスの普及と、使用時間の長さが影響している可能性が考えられます。
近くを見続ける時間が長時間にわたると、目の筋肉が緊張して「仮性近視」を発症します。仮性近視は、一時的な近視でありトレーニングなどで改善が見込まれます。
一方、眼球の奥行きの長さが伸びて、トレーニングでは元には戻らない「軸性近視」になることもあります。大部分の近視は軸性近視にあたります。
(出典:@nifty何でも調査団 / 目についてのアンケート・ランキング https://chosa.nifty.com/medical/chosa_report_A20140411/1/index.html)
視力0.1の見え方とは
視力には「裸眼視力」と「矯正視力」があり、「視力0.1」がどちらを指すかによって状況がまったく異なります。
裸眼視力とはメガネなど何もしないままの素の視力のことで「裸眼視力0.1」であっても、正常であればメガネをかけると1.0以上の視力が出ます。
矯正視力とは、メガネやコンタクトレンズなどを使った状態での視力のことで「矯正視力0.1」とは「眼鏡をかけても0.1以上視力が上がらない」ことを指します。
裸眼視力0.1の場合
健康な人の裸眼視力0.1の見え方は、対象物がそのまま少しぼやけた見え方をします。
軽度近視なので物の形や色彩、遠くから来る車や自転車も認識できますが、鮮明には見えないため、とっさの判断力の低下につながります。
ほとんどの人がメガネやコンタクトレンズの常用者である一方で、年齢や職業によっては室内では裸眼で過ごす人もいます。
矯正視力0.1の場合
矯正視力が0.1の場合は「弱視」であり、専門的な治療や補助が必要となります。
両眼の矯正視力が0.1以下となった場合は視覚の障害者等級に該当するほどで、健康な人の「裸眼視力0.1」とはまるで違います。
また、単に視力が低下しているだけというより、視野の異常を伴っていることも多く、同じ矯正視力0.1でも病態によってかなりの個人差があります。
視力0.1以下の測定方法は?
視力の測定方法をご紹介します。
用意するもの:
- 直径7.5cm、太さ1.5cm、切れ目の幅1.5cmのランドルト環(手作りでも可)
- 直線5mのスペース
- メジャー
測定方法
- ランドルト環を5m先に設置
- 5mの距離を保ったまま、片目を手で覆う
- ランドルト環の切れ目がギリギリ判別できるところまでゆっくり近づく
- ギリギリ判別できた距離から視力値がわかる(図参照)
測定時の注意点としては、目を細めないように気をつけることです。目を細めると物が鮮明に映りやすくなり、本来見えないはずの切れ目まで見えてしまいます。
0.01以下を測定する方法もありますが、一般的な方ではまず必要ありません。もし0.01も見えない場合は、すぐに眼科を受診しましょう。
なお、視力0.1以下の測り方は裸眼視力であっても矯正視力であっても同じです。『視力検査とは?やり方から適切な頻度、考えられる病気まで解説!』も併せてご覧ください。
視力0.1の人の矯正方法は?
視力0.1の人の矯正方法としては、メガネ、コンタクトレンズといった従来のやり方のほか、ICLやレーシックといった手術を行うやり方があります。
屈折度数(近視や乱視、遠視の度数)の程度にもよりますが、
メガネ > コンタクトレンズ > ICL > レーシック
の順に、誰でも使えるものから適応者が限られるものを並べました。
メガネを使用する
メガネを使用するという選択は最も基本的かつ安全な方法です。眼球に触れていないため、ドライアイや感染症を引き起こすこともないので、視力の悪い人にはまずメガネの処方を行います。
近視のレンズは焦点を後ろへ下げる役割、遠視のレンズは焦点を前に結ぶ役割、というように、近視眼や遠視眼の「不足分」を補ってくれるのがメガネです。
視力が悪いまま放置していて初めてメガネをかける場合、慣れにくさも考えられます。メガネが初めての人は弱めの度数のメガネから始めるのがよいでしょう。
コンタクトレンズを使用する
コンタクトレンズを用いて視力矯正をするメリットは、以下が挙げられます。
- 視界が広いこと
- 視力矯正力が高いこと
- 外見を損なわないこと
メガネは構造上どうしてもフレームが視界の邪魔になりますが、コンタクトレンズであれば全部の視野が遮られることがありません。
レンズが目にくっついているため、メガネのような歪みや揺れもなく、メガネよりも高い矯正視力が出ることがあります。
また、近視だと眼が小さく映ってしまうメガネと異なり、コンタクトレンズであればどれだけ強度近視であっても外見は変わりません。
ただし、手指の汚れや不十分な手入れによって眼感染症を引き起こしやすく、深刻な障害が残ることもあります。
ICLで矯正する
ICL(Implantable Contact Lens)は屈折矯正手術の一つです。
角膜と白目の間に小さな切込みを入れ、小さく折りたたまれた超薄型のレンズ(ICL)を挿入します。ICLは虹彩と水晶体の間に入り、自動的に広がります。目の内圧によって切開創(傷口)は自然とふさがるため、縫合の必要がありません。強度の近視や乱視、遠視にも対応しています。
基本的にICLは入れっぱなしで、お手入れの必要がありませんが、レンズを取り出して元の状態に戻すことも可能です。将来白内障になった時は取り出して、白内障治療のための眼内レンズを入れ直すことができます。ICLを取り出したら、眼球を元の状態に戻せるのがICLを使った手術の最大のメリットです。
レーシックに比べ、近視の戻り(術後に視力が以前の状態に戻ってしまう事)が少ないのも特徴です。
ただし、健康保険の適応にはならないため、かなり高額な治療費がかかります。また、安全性が高いとはいえ手術なので、炎症や感染症によるリスクがあることは否定できません。どこで治療を受けるか、どんなリスクがあるかはしっかりと調べ、よく検討しましょう。
(画像出典:武蔵野タワーズゆかり眼科 / ICL 【眼内コンタクトレンズ】費用と特徴 https://yukari-ganka.jp/icl/)
レーシックで矯正する
レーシックは長年行われてきた屈折矯正手術の一つです。
角膜の一部をめくり、フラップという小さな円状のふたを作ります。近視の場合は、フラップをめくった後の残りの角膜の層にレーザーを照射し、事前に計算された量だけ角膜を削って薄くします。
近視とは異なる形でレーザー照射し、角膜の屈折力を変えるのが遠視治療です。そのほか、老視治療のための遠近両用レーシックも存在しています。
レーシックはICLより安価に受けられることもあり、現在はポピュラーな治療法ですが、ICLに比べて手術を受けるための制限が多いのも特徴です。
強度近視や強度遠視であったり、屈折の程度は強くなくても角膜が薄かったり、既に眼疾患を抱えているという人は適応にならない可能性があります。
また、一度治療した後に角膜が再生し近視が少し戻ってしまうことがある、というのもよく聞く話です。
手術方法
- ベッドに横になり、麻酔を点眼した後、フェムトセカンドレーザーでフラップを作成します。照射時間は、片眼約15秒です。
- フラップをめくります。
- エキシマレーザーを照射し、角膜を削ります。照射時間は矯正度数によって変わります。
- フラップを戻して、角膜をきれいに整え、自然に定着させます。診察後、回復室で10分間休憩を取って終了です。
(出典 : レーシック – アイケアクリニック総合サイト https://eye-care-clinic.jp/treatment-lasik)
ICLとレーシックの矯正方法の違い
ICL(アイシーエル)
- 手術方法:眼内レンズを移植し視力矯正
- 近視の戻り:近視の戻りが少ない
- 見え方の質:クリアで色鮮やかな見え方
- 矯正可能視力:強度近視や乱視・遠視も対応可
- 術後のリスク:元に戻せる
レーシック
- 手術方法:角膜をレーザーで削り視力矯正
- 近視の戻り:近視の戻りの可能性あり
- 見え方の質:角膜を削るために収差が増える
- 矯正可能視力:矯正できる近視の強度に上限あり
- 術後のリスク:元に戻せない
(出典 : ICL専門サイト アイケアクリニック https://icl.eye-care-clinic.jp/)
視力が悪いまま矯正しないと
どうなる?
視力が悪いまま矯正しないと、日常生活に支障をきたすだけでなく、身の安全を守るためにも不自由を感じるようになります。
例えば、学生は教室の前の席に座らないと黒板が見えません。0.1以下の視力であれば、一番前の席に座ってもしっかり黒板は見えないでしょう。車の運転をする人も、普通免許に必要な両眼0.7、二種免許に必要な両眼0.8の視力を維持できなければ、免許の更新ができません。
スポーツ選手やスポーツが趣味という人も、活動に影響が出ます。現役の警察官やパイロットであれば職を失う可能性もある上、警察官やパイロットになりたいと思っている人はそもそも採用基準に合格できません。
一方で、あまり外出しない高齢者の場合、近視による視力低下があっても、意外と困っていないケースもあります。近視は焦点が手元にあるため、室内で近くを見る生活をしている分には不自由を感じず、メガネなしの生活ができる人もいるのです。
いずれにしても、若く活動的な人は視力低下に応じて、きちんと視力矯正が必要です。
視力回復の
トレーニングはある?
視力を現状より少しでも改善させる方法として、視力回復のトレーニングはいくつか存在しています。ただし視力回復トレーニングが適応となるケースは次のような人に限られています。
- 目の病気がない人
- 疲れ目による視力低下がある人
- 軽い老眼が始まったばかりの人
- 乾き目による視力低下がある人
視力回復のトレーニングは、目の疲労を軽減すること、涙液を補完することによって、軽度の視力低下を回復させるものなので、眼疾患を治したり、強度近視が治ったりすることはありません。
また、トレーニングのデメリットとしては、次のようなことが起こる可能性があります。
- やりすぎると疲れてしまい、かえって視力低下を招く恐れがある
- やりすぎると眼精疲労や頭痛の原因になる
- 慣れないまま続けているとストレスの原因になる
何回か行ってみて、眼痛や疲れを感じるようであれば無理に続けない方がよいでしょう。
遠近トレーニング
使用するもの:
- 指またはペン先
トレーニングのやり方:
- 遠くの一点を見る(ビルや木など決める)
- 目の前に指を一本立てる
- 遠くの一点と手前の指を3秒ごと、交互に見る
- 「遠く→近く」で1セット
- 1日2回、各3セットずつ行う
遠くと近くを交互に見て、目の筋肉の緊張をほぐすトレーニングです。遠くと近く、なんとなく視線を動かすだけでは効果がありませんので、それぞれの対象物にしっかりと焦点を当てて見ることが肝心です。
立体視トレーニング
使用するもの:
- スマートフォンアプリ
- 3Dで見える本など
トレーニングのやり方:
- スマートフォンの立体視アプリを起動し、画像を表示する
- 画面を注視し、立体視を完成させる
- 立体視を完成させたまま、見えるギリギリまで遠ざける
- そのまま10秒キープ
- 1日に朝夕2回実施
高校生154人を対象とした実験結果で、実際に視力が回復した例です。立体視は高度な目の機能であり、寄り目をするための目の筋肉や立体的に見るための脳のトレーニングにもなります。
まばたきトレーニング
使用するもの:
- 特になし
トレーニングのやり方:
- 普通に目を閉じ、2秒経ってから開ける
- 再び普通に目を閉じ、2秒間静止する
- そのままギュッと目を閉じたまま更に2秒間静止する
- 両眼を開ける
- 20分おきに1日20回繰り返す
視力回復というより、目の乾きを改善するためのトレーニングです。目の乾きがひどい場合、目の表面はきれいに光を通すことができず、視力低下を引き起こすことがあります。ドライアイ対策として涙を補完できれば、視力が回復する可能性があります。
まとめ
裸眼視力0.1は軽度近視であり、メガネのレンズも薄くて済むので、それほど悲観する状態ではありません。しかし裸眼では運転もできず日常生活に不便を感じることが多いはずです。
メガネやコンタクトレンズ、近視矯正手術を利用するなどして、正しく視力矯正を行いましょう。
また、目の筋肉の緊張から来る視力低下であれば、緊張をほぐすトレーニングを行うと視力が回復する可能性もあります。
今のご自分の視力低下が何によるものなのか、どのように対処すればいいのか、迷ったら一度眼科で相談してみてください。
参考文献
出典:アンケート・ランキング : 何でも調査団(@niftyニュース)
https://chosa.nifty.com/index.html出典:ICL専門サイト アイケアクリニック
https://icl.eye-care-clinic.jp/出典:アイケアクリニック総合サイト
https://eye-care-clinic.jp/出典:Dry Eye Sufferers Try This! Blinking Exercises and an App – SkyVision Centers
https://skyvisioncenters.com/blog/dry-eye-sufferers-try-blinking-exercises-app/