この記事の執筆者
眼とメガネの情報室
みるラボ編集部
目次
遠近両用レンズは、1枚のレンズで遠くも近くも見ることができる大変便利なレンズです。しかし、「遠近両用レンズは使い方が難しい」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
確かに単焦点レンズと呼ばれる遠くまたは近く専用のレンズと比べると、使い方にコツが必要ですが、レンズの仕組みを理解して正しく使えば難しくはありません。
今回は、遠近両用レンズを検討している方や、実際に使ってみたものの、うまく使いこなせていないという方に向けて、遠近両用レンズの正しい使い方を解説します。
遠近両用レンズとは
遠近両用レンズは、レンズ上部に遠くを見るための度数、レンズ下部に近くを見るための度数が配置されており、上部から下部に緩やかに度数が変化するレンズです。
加齢によって眼のピントを合わせる機能が衰えてくると、手元が見えづらくなる老眼を自覚します。そのため、近くの距離に度数を合わせた老眼鏡が必要になるのです。
手元にしかピントが合わない老眼鏡で遠くを見るとぼやけてしまうため、日常生活において老眼鏡のかけ外し(あるいは鼻メガネ)や遠く用のメガネとのかけ替えが必要になってきます。
遠近両用レンズは1枚のレンズで遠くも近くも対応できるため、かけ外しや鼻メガネ、遠用メガネとのかけ替えなどの手間やわずらわしさから解放されます。
老眼対策用のレンズには、遠近両用タイプ以外にも、室内用の中近レンズ、奥行き感のある新しいタイプの老眼鏡とも言える近近レンズなど、使用環境に合わせたレンズがあります。
遠近両用レンズの仕組み
遠近両用レンズには、大きく分けて2つのタイプがあります。
1つは「累進レンズ」、もう1つは「二重焦点レンズ」です。
累進レンズ
累進レンズは、レンズ上部に遠くに合わせた遠用度数、下部に近くに合わせた近用度数が入っています。
遠用度数と近用度数は上下ではっきりと2分割されているわけではなく、遠用と近用の中間部分は、なだらかに度数の変化がつけられています。
この中間部分の構造により、遠くと近くだけでなく、室内のテレビなど中間距離を見る場面にもある程度対応することができます。
累進レンズは見た目が通常のレンズと変わらないため、周りからは遠近両用レンズとは分かりません。
このように累進レンズはメリットが多いですが、1枚のレンズ上でなだらかに度数が変化しているため、周辺部分に歪みが生じやすくなっています。
また、視線の動かし方によっては、歪みや視界の揺れなどの違和感があり、慣れるのにも時間を要することもデメリットの1つです。
現在、一般的に普及している遠近両用レンズは累進レンズです。
二重焦点レンズ
二重焦点レンズは、遠くを見るための度数のレンズに、近くを見るための小窓がついているレンズです。
小窓がはっきり見えるので、周りから遠近両用レンズとすぐにわかってしまうことがデメリットです。
しかし、レンズ周辺部分の歪みや見え方などの違和感が少なく、累進レンズよりも慣れやすいというメリットがあります。
今回の記事では、主に累進レンズの使い方について解説していきます。
各レンズのメリット・デメリット
累進レンズ
メリット
- 見た目では遠近両用レンズとわからない
- 中間距離にもある程度対応できる
デメリット
- 周辺部分に歪みが生じやすい
- 視線によって見え方に違和感があり慣れにくい
二重焦点レンズ
メリット
- 周辺部分の歪みがない
- 違和感が少なく、累進レンズよりも慣れやすい
デメリット
- 見た目で遠近両用レンズとわかってしまう
- 境目で見え方が急に変わる
基本的な遠近両用レンズの
使用方法
遠近両用レンズでは、レンズのどの部分で見るのかによって度数が変わります。視線の動かし方によって、見え方が変わってしまうのです。
そのため、遠近両用レンズを快適に使いこなすには、見たい距離に応じた正しい使い方・視線の動かし方を理解しておく必要があります。
遠くを見る場合
遠近両用レンズの遠用度数は、レンズ上部に配置されています。
少し大げさにいうと、やや顎を引いてレンズ上部で見るように意識すると良いでしょう。
左右や斜め方向に視線を動かす場合、レンズ上の遠用度数から外れてしまうため、見えずらさや違和感を自覚しやすくなります。視線だけを動かすのではなく、必ず顔も一緒に動かす習慣をつけましょう。
特に歩行時や外出時は視線の移動が多いため、慣れないうちは違和感からクラクラしてしまったり、頭痛を感じてしまうことがあります。
そんなときは早く慣れようと焦らずに、疲れを感じたら一度メガネを外して休憩するなど、少しずつ遠近両用レンズの使用時間を増やしていきましょう。
また、遠近両用レンズでは、通常のメガネ以上にレンズの角度や鼻パッドの位置などのフィッティングが重要になってきます。
「しっかり度数を合わせたはずなのに見えづらい」「なかなか遠近両用レンズに慣れない」という場合は、フィッティングが合っていない場合があるため、眼鏡店や眼科で相談してみましょう。
中間距離を見る場合
遠近両用レンズでも、中間距離部分で見ることによってある程度は対応できます。
しかし、遠近両用レンズは遠くと近くをメインに作られているため、レンズの中間距離部分はとても狭く、あくまでも補助的な役割です。
遠方メインで生活されている場合は遠近両用レンズで問題ありませんが、在宅ワークや内勤など、室内での作業が多い場合は、中近両用レンズがおすすめです。
中近両用レンズは、別名「室内用レンズ」とも言われ、デスクから窓・テレビなど、室内範囲での使用を想定したレンズです。
遠用部分は非常に狭く、中間距離部分と近用部分をメインに作られています。
そのため、車の運転などには向きませんが、度数の変化は遠近両用よりも小さく、歪みや違和感は少なくなります。
デスクワークなどで長時間机に向かうシーンというよりは、室内で忙しく動き回るようなシーンで活躍します。
遠くをはっきり見るための度数は、室内においては強すぎる場合もあります。ご自宅や室内で中近両用レンズを使用することは、眼に対する負担軽減にもなるでしょう。
手元を見る場合
遠近両用レンズの近用度数は、レンズ下部に配置されています。
手元を見る場合は、視線を落としてレンズ下部を通して見るようにしましょう。やや顎を前に突き出すようなイメージです。
視線ではなく顔ごと下に向けてしまうと、遠用部分を通して見ることになってしまうため、手元がぼやけてしまいます。
遠近両用レンズの近用部分は、
- お買い物時に値札を見る
- 運転時にメーターを見る
- スマホを見る
など、あくまでも日常生活のなかで補助的に手元を見ることを目的に作られています。
つまり、長時間のデスクワークや手芸などの細かい作業といった、近くをずっと見続けるシーンには向きません。見づらさや、眼精疲労の原因となることもあります。
長時間の近方作業には、単焦点の老眼鏡、あるいは近近両用レンズがおすすめです。
近近両用レンズは、ほぼ近方メインですが、レンズ上部に少し中間距離の度数が入っています。レンズ上で度数の変化が少ないため、歪みや違和感はほとんどありません。
老眼鏡は一定の距離しかピントが合いませんが、近近両用レンズでは視線の使い方によって手元の見たいものだけでなく、デスクいっぱいを見渡すことができます。
例えば、ノートパソコンの前に資料を置いて、それぞれを交互に見ながらデスクワークをする場合を考えてみましょう。手元の資料とノートパソコンの距離は少し異なります。
老眼鏡の場合は、資料にピントを合わせるとパソコンの画面が少しぼやける可能性があります。しかし、近近両用であれば資料もパソコン画面もはっきりと見え、デスク全体を良好な視界で見渡すことが可能です。
シーン別遠近両用レンズの
正しい使い方
日常生活では、遠近両用レンズの使用方法に注意やコツが必要なシーンがあります。
ここでは、それぞれのシーンにおいて、遠近両用レンズの正しい使い方を解説します。
階段を降りるシーン
遠近両用レンズで階段を降りる際、足元が見えづらく危ない思いをした方もいるかもしれません。
階段を降りる場合、視線だけを落として足元を見ると、レンズ下部の近用部で見ることになってしまい足元にピントが合いません。
視線だけではなく顔ごと下を向き、レンズ上部の遠用部を通して足元を見る必要があります。
慣れるまでは、少しおおげさなくらい顎をぐっと引いて、レンズの上部で見るように意識するといいでしょう。また、転倒を防ぐため、遠近両用レンズで階段を降りる際は手すりをしっかりと持って、ゆっくり降りることをおすすめします。
新聞を手に持って読むシーン
新聞を手に持った状態で立てて読む場合、目の前にある新聞を遠用部分で見ることになってしまい、ぼやけてしまいます。
遠近両用レンズで新聞を読む場合は、新聞を立てずに横に寝かせたり、机に置いて読むようにすると近用部分で見やすくなります。
どうしても新聞を立てた状態で読みたい場合は、顎をぐっと前に出し視線をレンズ下部にずらしましょう。
車を運転するシーン
運転時は、サイドミラーや周辺の様子を見るなど、視線の移動が多いシーンです。
左右の視線移動により、周辺の歪みを感じることがあります。
しっかりと遠用部分で見るようにやや顎を引き、サイドミラーや対象物は眼で追うのではなく、首を回して顔ごと動かして見るように心がけましょう。
遠近両用レンズを正しく使用して、ストレスフリーに
遠近両用レンズは、1枚で遠くも近くも対応でき、メガネのかけ外しやかけ替えといったわずらわしさからも解放される、大変便利なレンズです。
レンズの上部に遠用度数、レンズの下部に近用度数が配置されているため、遠くを見る場合はやや顎を引いて視線を上に、近くを見る場合はやや顎を出して視線を下にすることを意識しましょう。
在宅ワークや内勤などの室内作業や、デスクワークや手芸など長時間手元を見続ける場合は、中近両用レンズや近近両用レンズもおすすめです。
またアシストタイプという、近くをみる力をサポートするレンズもあります。近くを見続ける現代人向けの若い世代でも利用できるレンズで、こちらのレンズを老眼初期から利用することもおすすめです。老眼初期からこのようなレンズを使う事で、疲れ眼対策はもちろん、遠近両用レンズをはじめ、累進レンズの目の使い方に早く慣れて、老眼が進んでからのメガネレンズ選びもスムーズになることが多いです。
老眼の度数が進行すると遠近両用レンズ1本よりは、服や靴と同様に、目的にあわせたメガネレンズを掛けかえることで、より快適に過ごすことができるでしょう。
遠近両用レンズの仕組みや使い方のコツを正しく理解して、快適に使いこなしましょう。