この記事の執筆者
眼とメガネの情報室
みるラボ編集部
目次
メガネを作る時、レンズのコーティングにさまざま種類があって、自分にはどのコーティングが必要なのか悩んでしまいますよね。または、メガネのコーティングが剥がれてきてどのように対処すればよいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。一度コーティングが剥がれると、復活させることができないため、メガネの取り扱いには注意が必要です。
この記事では、メガネレンズのコーティングの仕組みと役割について解説した上で、コーティングの種類や剥がれてしまう原因とその対処法、コーティングが長持ちするお手入れ方法を紹介します。
本記事を読むと、自分に合ったコーティングを選べるようになり、コーティングの剥がれを防いで、レンズを長持ちさせることができるでしょう。
メガネのコーティングとは
メガネのコーティングとはレンズの表面に薄い膜を作り、レンズの性能を向上させる加工のことです。
メガネレンズの素材にはプラスチックとガラスがありますが、現在は軽くて割れにくいプラスチックレンズが主流です。プラスチックレンズはガラスレンズに比べてキズがつきやすいため、表面に「コーティング」を付着させて保護する必要があります。
一般的なメガネのプラスチックレンズの場合、レンズ表面には極薄いコート膜からなる三層構造のコーティングが施されています。まずレンズ基材の真上にキズをつきにくくするハードコートが施されます。その上に光の反射を抑えて視界をクリアする反射防止コート、一番外側には水を弾いて汚れの付着を防ぐ撥水コートという順に、コーティングを重ねます。
コーティングにはメガネレンズを保護する役割がありますが、取り扱い方法を誤るとコーティングが剥がれたり、キズがついてしまったりします。
一度傷めてしまうと修復はできないため、レンズを丸ごと交換しなくてはなりません。また、見た目に変化がなくても、メガネレンズのコーティングの寿命は2年程度と言われています。
レンズのコーティングはデリケートです。その性質を理解して、少しでも長く快適に使えるように、丁寧に取り扱いましょう。
メガネコーティングの種類
メガネレンズのコーティングにはさまざまな種類があります。それぞれの特徴を解説します。
撥水・汚れ防止機能コーティング
「撥水・汚れ防止機能コーティング」は、撥水性(水をはじく性能)を維持したまま、汚れを拭き取りやすくするコーティングです。メイクや皮脂の汚れなど、日常生活でメガネレンズが汚れる場面は数え切れません。メガネを快適に使うために必須のコーティングです。
メガネレンズを水に濡れたまま放置していると、乾燥した時に水分に含まれる汚れ成分がレンズ表面に残ってしまい、水やけ(シミ)が発生します。水がついたらすぐに拭き取らなくてはいけません。水をはじく撥水コートを施していれば、比較的レンズ表面に水滴が残りにくく、拭き取りやすくなります。
レンズ表面の摩擦係数が小さく、汚れやホコリが付着しにくいためお手入れも簡単です。ゴシゴシ擦らなくても、軽く拭き取るだけで汚れを簡単に落とすことができます。摩擦によるキズもつきにくく、レンズが長持ちします。
耐傷機能コーティング
プラスチック素材のレンズは軽くて割れにくいというメリットがある反面、非常に傷つきやすいです。その弱点を補うため、「耐傷機能コーティング」が欠かせません。
「耐傷機能コーティング」は、日常の擦れや傷に強い表面処理を加えたコートです。標準的なハードコートに重ねて施し、傷がつきにくい性能を向上させます。
摩擦によるキズからレンズ表面を守る効果が高いため、屋外などレンズにホコリがつきやすい環境で過ごすことが多い方に、特におすすめのコーティングです。
必ずキズがつかなくなるというものではありませんが、普段メガネをケースに収納する習慣がなかったり、ついお手入れが雑になりがちという方には、耐傷機能コートは必要不可欠でしょう。
静電気防止コーティング
プラスチックは比較的静電気を帯びやすい性質があり、空気中のホコリや花粉を引き寄せます。
プラスチック素材のメガネレンズを使用していると、レンズを拭くだけで静電気が発生します。ホコリや花粉など異物がついたままレンズを乾拭きすると、摩擦でレンズ表面にキズがついてしまいます。
静電気の発生を防止する「静電気防止コーティング」は、静電気の発生を抑制し、レンズにホコリや花粉を付着しにくくする効果があります。
そもそもホコリや花粉がつきにくくなれば、お手入れが簡単になり、レンズを傷める可能性を軽減できます。
レンズ表面に大量のホコリがついたままにしていると、視界不良の原因にもなります。クリアな視界を保つためにも、静電気防止コーティングは有効です。
曇り防止コーティング
寒い時期にメガネとマスクを一緒につけた状態で屋外で過ごすと、メガネが真っ白になる、という経験をされた方も多いと思います。マスクの隙間から漏れ出た温かい呼気が、冬の寒い空気で冷えたレンズに触れ、温度差により水蒸気が水滴に変化し、レンズ表面に付着してレンズが曇ってしまいます。
「曇り防止コーティング(防曇コート)」には、レンズ両面に吸水性の高い膜をコーティングすることにより、高い曇り止め効果を発揮するメンテナンスフリーのタイプと、レンズ表面に付着した水滴を膜状に変化させることで曇りを防ぐ、メンテナンスが必要なタイプの2種類があります。
製造しているレンズメーカーによって、販売されているタイプが異なります。使用方法などを確認して、自分に合ったタイプを選びましょう。
ブルーライト(可視光短波長光)カットコーティング
「ブルーライトカットコーティング」は、パソコンやスマートフォン、テレビやLEDライトなどから発せられる、ブルーライト(可視光短波長光)をカットするコーティングです。
ブルーライトをカットするレンズにはさまざまなタイプがあり、レンズ表面で青い光を反射するコーティングが施されている製品や、レンズ自体が着色されている製品などがあります。
ブルーライトは、可視光線(人の目で見える光)の中でも特に強いエネルギーを持つ短い波長の光です。人によっては眩しさやチラつきを感じます。像がにじんでくっきりと見えなかったり、目の疲れの原因になることもあります。
「ブルーライトカットコーティング」が施されたメガネをかけることで、これらの目の負担を軽減することができます。
ブルーライトをカットしたPCメガネについて詳しく知りたい方は「PCメガネの効果や選び方のポイント!疲れ目対策につながるメガネを紹介」のコラムを参考にしてください。
裏面反射UVカットコーティング
従来のメガネレンズに施されているUVカットコーティングは、UVの約7割を吸収、約3割を反射する仕様で、レンズ裏面で反射した残り約3割のUVが目に届いてしまっていました。そのレンズ裏面に反射して目に届くUVを約95%カットし、全方位から目を保護するコーティングが、「裏面反射UVカットコーティング」です。
紫外線は雪目や結膜炎、白内障といった眼病の原因となるだけでなく、目から入った紫外線を脳が感知してメラニン色素を作ることにより、肌の日焼けをも引き起こします。また、目の周辺は皮膚が薄いため、紫外線が当たることでシミやソバカスが発生しやすいです。
目の健康だけでなく、美容が気になる方にもおすすめしたいコーティングです。
ミラーコーティング
「ミラーコーティング」は、その名の通りレンズ表面が鏡のように光を反射するコーティングです。レンズ表面で光が反射するため遮光性が高く、眩しさをしっかりと抑えられるためレジャーシーンにおすすめです。
自分の目が透けて見えなくなるため、気が散らず、集中力を保てるとアスリートに人気です。対人型のスポーツであれば、視線の動きや表情を読まれにくくなることもメリットに挙げられます。
シルバー、ゴールドなどミラーの色も複数あり、下地となるレンズカラーとの組み合わせで印象が大きく変わるなど、ファッション性の高さも魅力です。
ミラーコーティングの反射の強さも、ハードやソフトなどからお好みで選ぶことができます。
ミラーコーティングはスポーツサングラスによく使われています。スポーツサングラスについて詳しく知りたい方は「スポーツサングラスの最適な選び方を種類別・シーン別にご紹介!」のコラムをご覧ください。
メガネのコーティングが
剥がれたときは・・・
レンズの表面に細かいヒビのようなものが無数にあったり、ウロコのように剥がれていたりする場合は、残念ですがコーティングが傷んでしまっています。
メガネのコーティングは、とても薄い膜が何層にも重なっているため、一度剥がれてしまったりキズがついてしまった場合には、修理することができません。レンズ自体を丸ごと交換することになります。
そのまま使い続けると剥がれ落ちたコーティングの破片が目に入ったり、視界不良の原因となったりするため、早急に新しいレンズに取り替えましょう。
メガネレンズの交換は、購入したお店に相談するのが一番スムーズです。購入したお店以外でもレンズ交換をしてくれることはありますが、特殊なメガネフレームだったり、フレーム自体も傷んでいたりといった場合は、対応ができない場合もあります。レンズの価格も店舗によって異なりますので、まずはスタッフに相談してみましょう。
メガネのコーティングが
剥がれる原因と対処法
メガネのコーティングが剥がれる原因と対処法について解説します。
水やけ
メガネレンズに水分が付着したまま放置していると、水やけ(シミ)が発生します。コーティングが剥がれる原因になるので、撥水コートを施していても油断せず、メガネが濡れてしまったらすぐに水分を拭き取るようにしましょう。
化学反応
レンズに整髪料や化粧品、中性以外の洗剤、有機溶剤などが付着すると、化学反応が起きてレンズのコーティングが溶けてしまうことがあります。メガネを消毒しようとアルコールを使用するのも厳禁です。
化学製品や薬品などが付着した場合は、すぐに水で洗い流して拭き取ってください。
キズ
ホコリなどの異物が付着したレンズをそのまま乾拭きすると、摩擦でレンズ表面にキズがつき、そこからコーティングが剥がれてしまいます。レンズを拭くときは先に水洗いする習慣をつけましょう。
レンズを下にして置く、ケースを使わずにカバンに入れるなどの、物理的な衝撃も避けるようにしてください。
クラック
メガネレンズの素材であるプラスチックは、熱されると膨張するという特性があります。しかし、レンズ表面のコーティングは変化しないため、膨張と収縮に対応できず、クラック(ひび割れ)が発生します。
メガネをお湯につけたり、ストーブなど高温になるものに近づけないようにしましょう。
メガネのコーティングを
傷つけないお手入れ方法
メガネのコーティングはデリケートです。たとえキズ防止コートを施していたとしても、丁寧に扱わなくてはいけません。
ここではメガネのコーティングを傷つけないお手入れ方法を紹介します。
水で洗う
ホコリなどの異物がレンズ表面に付着した状態で乾拭きすると、コーティングの剥がれやキズの原因になります。まずは水で汚れを洗い流し、ティッシュなどで水気をやさしく拭き取った後、メガネ拭きで拭き上げましょう。
メガネ専用のクリーナーでお手入れ
メガネ専用のクリーナーは、フレームやレンズのコーティングが傷まないように成分が配慮されています。
毎日のメガネのお手入れとして、水洗いをした後、メガネ専用のクリーナーをレンズ両面に吹き掛け、指で汚れと馴染ませた後、ティッシュでクリーナーを拭き取り、清潔なメガネ拭きで拭き上げましょう。
中性洗剤でお手入れ
メガネ専用のクリーナーでは落ちないほど頑固な汚れには、水で薄めた中性洗剤を使いましょう。レンズ表面に一滴ずつ垂らして、全体に指で薄く塗り広げて汚れを浮かせ、水で洗い流し、水気を拭き取ってください。
手洗い石鹸や、中性以外の洗剤はコーティングを劣化させる原因になるため厳禁です。
店舗でクリーニングを依頼
自分でメガネをクリーニングするのが面倒であったり、出先でメガネを汚してしまったりといった場合には、眼鏡店に持ち込んでクリーニングを依頼するのもよいでしょう。
購入したお店であれば一緒にメンテナンスもしてもらえるので、メガネを長持ちさせるためにも、定期的にクリーニングサービスを利用するのもおすすめです。
メガネレンズにキズがついた時の対処法については「メガネレンズの傷は自分で直せない!お店に頼んだ方が安心な理由を解説」の記事で詳しく解説していますので、併せてご確認ください。
まとめ
今回はメガネレンズのコーティングについてご紹介しました。
コーティングにはさまざまな種類があり、レンズにキズがつきにくいようにしたり、お手入れを簡単にしたり、目を保護したりと、私たちのメガネにまつわる悩みを解決してくれます。
メガネのコーティングはデリケートです。誤った取り扱いをしてしまうと、コーティングが剥がれてしまうこともあります。一度剥がれてしまったコーティングを修復することはできません。この記事で紹介したメガネのコーティングを傷つけないお手入れ方法を実践すれば、コーティングを長持ちさせることができます。ぜひ参考にしてみてください。
参考文献
出典 : オプティカルカラー協会 メガネの正しい取り扱い方
http://oca-arriate.jp/handling/index.html出典 : オプティカルカラー協会 メガネレンズについて
http://oca-arriate.jp/lens/index.html