
この記事の執筆者
眼とメガネの情報室
みるラボ編集部

目次
コンタクトレンズの
「度数」とは?
コンタクトレンズの度数とは、視力を矯正するために必要な力とその数値を意味します。
レンズの度数はD(ディオプター)という単位で表します。コンタクトレンズの箱を見ると、DあるいはPOWERの横に「-1.00」などと数字が表記されていますが、この数字がコンタクトレンズの度数です。
「-1.25」「-1.50」など度数は0.25刻みで用意されており、度数の前のプラスとマイナスはプラスが遠視用、マイナスが近視用のレンズであることを意味します。カラーコンタクトレンズなどで度なしの場合の表記は「±0.00D」です。
遠視も近視も、数字が大きいほど度数が強いことを意味します。たとえば「-5.00D」の近視レンズは「-2.50D」のレンズよりも近視の度数が強く「+3.00D」の遠視レンズは「+1.50D」のレンズよりも遠視の度数が強いということです。
また、遠視と近視はそれぞれ別のものであるため、プラス(遠視)の方がマイナス(近視)よりも度数が強いというわけではありません。
コンタクトレンズの度数には、近視や遠視を矯正する「SPH」(POWER/PWR/P/Dと記載がある場合があります)、乱視の度数を矯正する「CYL」、遠近両用コンタクトレンズの近用度数「ADD」の3つの種類があります。
球面度数 – SPH
球面度数は、遠視と近視を矯正するための度数で「SPH」と表されます。コンタクトレンズのパッケージには「POWER」「PWR」「P」「D」と記載されていることもありますが、同じ意味です。
物をクリアに見るためには網膜にピントを合わせる必要があります。
- 遠視 : 網膜よりも奥に結像している状態 使用するレンズ : プラス(+)
- 近視 : 網膜よりも手前に結像している状態 使用するレンズ : マイナス(−)
網膜にピントが合うよう「SPH」のレンズで結像する位置を補正する必要があります。
円柱度数 – CYL
円柱度数は、乱視を矯正するための度数で「CYL」と表されます。
- 乱視とは : 目の縦方向の屈折力と、横方向の屈折力に違いがあること※斜め方向に屈折力の違いが生じることもあります。
- 乱視の原因 : 目が完全な球体ではなく、楕円状になること
- 乱視の見え方 : 歪んで見える、二重に見えるなど
縦と横で光が結像する位置が異なるため、レンズで補正する必要があります。
加入度数 – ADD
加入度数とは、近くを見るために必要な度数で「ADD」と表されます。
人は近くの物にピントを合わせる際に、水晶体の厚みを調節しています。この機能が加齢とともに低下することを老眼といいます。老眼鏡や遠近両用コンタクトレンズでは、水晶体の代わりに近くにピントを合わせる度数が必要です。
加入度数は、元々の屈折値(遠視、近視など)や年齢に合わせて検査して決まります。
コンタクトレンズの度数に関する重要なポイント
コンタクトレンズの度数は、強ければ強いほど良く見えたり、視力が向上したりするわけではありません。適切な度数のコンタクトレンズを装用することによって、近視や遠視、乱視などの屈折異常が矯正され、良好な視力が得られるのです。
度数が強すぎる場合は、疲れ目などの原因になってしまいます。
コンタクトレンズの度数の計測方法とは?
コンタクトレンズの度数の計測方法には、他覚的屈折検査と自覚的屈折検査(視力検査)があります。
他覚的屈折検査

他覚的屈折検査では、検査機器で近視や遠視など屈折異常の大まかな度数や、目の表面の形を測定します。気球の写真が見える検査と言うと、ピンとくる方も多いかもしれません。目の表面の形は、コンタクトレンズのカーブ(ベースカーブ)を決める際の参考値となります。
自覚的屈折検査(視力検査)

次に、視力検査を行います。他覚的屈折検査で得られたデータを参考に屈折異常を矯正し、良好な視力が得られる度数を詳しく検査します。
検査が終わったら、検査によって得られたデータを参考に、目に合ったコンタクトレンズ度数を決定します。実際にコンタクトレンズを装用し、着け心地やレンズが眼の形に合っているか(フィッティング)、見え方などを確認します。
初めてコンタクトレンズを購入する際は、どのようなコンタクトレンズであっても必ず眼科医の検診・処方が必要です。
インターネット通販や量販店などでは、コンタクトレンズを処方箋なしで気軽に購入できます。しかし、コンタクトレンズは視力矯正を目的とした「医療機器」であり、薬機法の改正によって「高度管理医療機器(クラスⅢ)」に分類されるようになりました。これは「不具合が起きた場合の人体に対するリスクが高い」とされるレベルで、人工心肺装置や心臓のペースメーカーなども該当します。
コンタクトレンズが高度管理医療機器となった背景には、コンタクトレンズの正しい知識を持たずに間違った使い方をして、眼に障害を起こす事例が増えたためと言われています。
コンタクトレンズはとても便利ですが直接眼に触れるため、使い方によっては眼障害などのリスクがあることをきちんと理解しておきましょう。正しい使い方を心がければリスクの心配はいりません。
メガネとコンタクトレンズの度数の違いとは
「メガネとコンタクトレンズの度数は同じなのか?」「メガネの度数をそのままコンタクトレンズに使ってもよいのか?」と疑問に思う方もいるでしょう。
メガネとコンタクトレンズでは度数が異なるため、メガネの度数をコンタクトレンズに利用することはできません。

その理由は、メガネとコンタクトレンズはそれぞれ眼の表面からレンズまでの距離(頂点間距離)が違うためです。頂点間距離によってレンズの矯正効果が変わってくるため、眼の表面に直接レンズを乗せるコンタクトレンズと、目からレンズまで距離があるメガネでは度数が異なるのです。
近視や遠視、乱視などの屈折異常の度数が強いほど、頂点間距離による屈折効果の変化は大きくなります。そのため、軽い近視など屈折異常が弱い場合は、メガネとコンタクトレンズの度数がほとんど同じになることもあります。
しかし、屈折異常が軽い場合も、実際にコンタクトレンズを装用しながらの度数調整が必要です。メガネの度数を参考に、自己判断でコンタクトレンズ度数を決めることは避けてください。
カラーコンタクトと通常のコンタクトの度数の違いとは

近年は、おしゃれ目的のためにカラーコンタクトレンズ(カラコン)を使用する人も増えています。カラコンと通常のコンタクトレンズの度数は異なるのでしょうか?
基本的には、カラコンと通常のコンタクトレンズの度数は同じです。しかし、レンズのデザインや種類によっては見え方が変わる場合があるため、カラコン購入時は改めて検査をするのが望ましいでしょう。
普段コンタクトレンズを使用しない方がカラコンを購入する場合、度なしか度ありか悩むかもしれませんが、必ず眼科や眼鏡店などで視力と度数を測定しましょう。
「最近見えにくいから、度数を入れてみようかな」と自己判断で度ありのカラコンを使用することは避けてください。
カラコンは処方箋なしでも気軽に購入できるため、カラコン装用による目のトラブルや眼障害が問題となっています。日本コンタクトレンズ学会のアンケート調査によると、カラコン装用によって眼障害を起こした内の約80%が、購入時に眼科を受診していないと回答しています。
度数に限度はあるのか?
コンタクトレンズにおける度数の限度は「レンズの製作範囲によるもの」と「眼の状態によるもの」があります。
ソフトコンタクトレンズの場合、レンズ製作範囲は近視で約-12.00D、遠視で約+5.00Dが一般的です。
コンタクトレンズもメガネと同じように、度数が強くなるとレンズが厚くなります。眼の上に直接乗せるコンタクトレンズは、厚くなりすぎると違和感を覚え、装用感が悪くなるため、上記のような製作範囲の上限があるのです。
ハードコンタクトレンズの場合は、遠視近視ともに約25.00Dまで強い度数が用意されています。
また、眼の状態によっても度数の限界があります。レンズの度数は視力検査などから得られたデータを参考に、近視や遠視などの屈折矯正を矯正するための度数を合わせます。
しかし、目の状態が悪かったり、病気などがあったりすると、いくら度数を合わせても良好な視力が得られない場合もあるのです。度数さえ強くすれば、どんな目でも良く見えるようになるわけではないことを理解しておきましょう。
視力と度数の関係性について

「視力」と「度数」はよく混同されやすいですが、まったく別のものです。
視力とは、物を見るために必要な目の能力のことを意味します。「視力0.5」「視力1.2」などと小数で表し、数値が1に近いほど視力が良く、0に近いほど視力が悪いという意味です。
視力にはメガネなどで矯正して良く見える状態である矯正視力と、何も装用していない裸眼視力があります。眼科やメガネ店においては多くの場合「視力」というと「矯正視力」のことを指します。
一方、度数とは近視や遠視といった屈折異常を矯正し、良好な視力を得るために必要なレンズの強さを意味しています。
視力と度数には関連がありますが、視力から度数を、度数から視力を計算して導き出すことはできません。また、同じ視力の人が2人いたとしても、それぞれの度数は同じとは限りません。人によって近視や遠視などの屈折異常はもちろん、眼の形状などの構造にも違いがあるためです。
自分の視力や度数を正しく知るためには、眼科や眼鏡店で検査を受ける必要があります。
遠近両用の場合に重要な度数

コンタクトレンズにも、メガネと同じように遠近両用タイプがあります。1枚のレンズに遠くを見るための度数と近くを見るための度数が配置されており、老眼鏡などがなくても自然に遠くと近くを見ることができます。
遠近両用コンタクトレンズの度数において、重要なのは加入度数です。
遠くを見るために必要な度数と近くを見るために必要な度数は異なります。加入度数とは、遠近における度数の差のことです。遠近両用レンズには、遠くを見るための度数に加入度数として近くを見るための度数が入っているのです。
加入度数は、多くの製品で「ADD」という表記となっており「ADD+1.25D」などと表記されます。数値が大きくなるほど、加入度数が強い(遠くと近くの差が大きい)という意味です。
適切な加入度数は年齢や目の度数などによっても異なるため、眼科での検査によって適切な加入度数を決定します。
また、遠近両用コンタクトレンズは通常のコンタクトレンズよりもやや見え方の質が低下する場合もあるため、実際に試して見え方を確認しながらレンズを選ぶことをおすすめします。
乱視の場合に重要な度数
乱視用コンタクトレンズの度数において重要なのは、乱視度数と乱視軸です。これらが合っていないと見えにくさやクラクラするなどの不具合が生じるため、しっかりと調整することが大切です。
そもそも乱視とは、目の表面の形状にやや歪みがある状態で、二重にぼやけたりにじんだりといった見え方が起こります。歪みによって視界が特定の方向にぶれてしまうため、ぶれを調整するために乱視度数と乱視軸を合わせることが必要になるのです。
乱視度数は一般的に「CYL」と表記し、乱視度数は「CYL-1.25D」などと表します。度数の数字が大きいほど、乱視が強いということを意味しています。
乱視軸は、特定の方向にぶれた視界を調整するために必要な角度を0~180度で表しています。一般的に乱視軸は「AXIS」と表記され、「AXIS 180°」などと表します。
ソフトコンタクトレンズの場合は矯正できる乱視度数に限界があるため、乱視が強い人は乱視矯正効果が高いハードコンタクトレンズを選んだ方がよい場合もあります。
度数の合わないコンタクトレンズを使用するとどうなるのか

度数の合わないコンタクトを使用していると、疲れ目、頭痛、肩こり、吐き気など様々な症状を引き起こす可能性があります。
特に注意が必要なのは、目の度数に対してレンズの度数が強すぎる「過矯正」という状態です。過矯正は目のピント合わせを行う筋肉に大きな負担がかかり、視力低下の原因となることもあります。疲れ目がひどい場合は、過矯正が原因かもしれません。
また、片目だけ度数が合っていない場合も要注意です。人間の目は、左右それぞれの情報を脳で立体映像として処理します。そのため、左右の見え方のバランスが悪くなると、脳内でうまく処理できず目や体の不調が生じてしまうのです。
コンタクトレンズの度数が合わないことによって目を酷使したり、はっきりと見えずストレスを感じたりすると、副交感神経に影響を与えて寝付けなくなってしまうこともあります。
「度数が合っていないけど、もったいないのでそのまま使っている」「度数が分からないので適当に選んでいる」という人は、一度眼科や眼鏡店でしっかりと視力や度数の検査を受けることをおすすめします。
まとめ
コンタクトレンズの度数や視力との関係を正しく理解することは、自分に合った度数のレンズを選ぶ上で大切です。
近年はコンタクトレンズを処方箋なしでも気軽に購入できることが増えてきましたが、視力矯正のための医療機器です。「不具合があった場合、人体に与えるリスクが高い」とされる高度管理医療機器(クラスⅢ)にも分類されており、間違った使い方は眼障害のリスクを高めてしまいます。
コンタクトレンズはきちんと検査を受けた上で処方してもらい、自己判断で度数を選ぶことは避けてください。
自分に合った度数のコンタクトを装用して、大切な目を守りましょう。