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「メガネは視力が悪い人だけが使うもの」と思っている方も多いかもしれません。しかしメガネには視力を矯正するだけでなく、見え方のバランスや目に入る光を調整する役割もあるため、視力が良くてもメガネの使用が推奨される場合もあります。
今回は視力の測り方や視力1.5の見え方、視力が良くてもメガネが必要なケースについて説明します。普段からものの見え方が気になる方、メガネを使用するか悩んでいる方はぜひ最後までお読みください。
視力表とは
多くの方は健康診断やメガネ・コンタクトレンズを作成する時に、アルファベットの「C」のような輪が複数書かれた表を見たことがあるでしょう。この表は視力を測定するためのもので、「C」のような輪のことをランドルト環といいます。
視力を測定するにはEチャート、スネレン指標などの方法もありますが、日本ではランドルト環が広く普及しています。
一般的な視力表で測定できる視力は、0.1から2.0です。
視力1.0の次が1.1ではない理由
視力表を見ると、1.0までは0.1刻みですが1.0より上は1.2、1.5と飛び飛びの数字になっています。なぜ視力1.0の次は1.1ではないのでしょうか。
理由は視角と視力の関係にあります。まずは視角と視力、それぞれの定義について解説しましょう。
ランドルト環の隙間と目の中心が作る角度のことを視角といい、視角は1°の60分の1である1’(1分)で表される数値です。
視力は1÷視角(分)という式で計算されます。例えば視角が10分の時は1÷10=0.1となり視力は0.1、視角が1分の時は1÷1=1と計算されるため視力は1.0です。視角と視力は反比例の関係にあり、目で見える視角が小さいほど視力の数値は高くなります。
視力1.0の次が1.1ではなく1.2や1.5なのは、1.0以上の視力を測定する場合、視力表から測定できる視角の差に限りがあるためです。
同じ0.1の違いであっても、視力は高ければ高いほど差を区別するのが難しくなります。例えば視力0.1の人と0.2の人で見える視角の差は大きく、両者の差は視力検査で容易に区別できます。しかし視力1.0の人と視力1.1の人で見える視角の差は小さく、視力表で視角を測定しても正確に測定することが困難です。
視力1.5の見え方
一般的に視力の基準値は1.0(参考)とされており、運転免許を取得するには矯正視力を含めて両目0.7以上、片目0.3以上の視力が必要です。基本的に視力1.5の人は、裸眼でも日常生活や運転に支障を感じることなく過ごせます。
左が視力1.5の視界、右が視力0.01の視界を再現した写真です。視力1.5では視界が鮮明で、商品の区別も容易であることが分かります。
視力が1.5でも
メガネが必要なケース
原則として視力が1.0以上であれば矯正は必要ありませんが、視力が1.5でもメガネが推奨されるケースもあります。具体的には次のような場合にメガネが使用されます。
- 遠視の場合
- 乱視の場合
- 老眼の場合
- 左右で度数が異なる場合
- 斜視がある場合
- 眩しさを軽減したい場合
- 紫外線対策
- ほこり、花粉、ウイルス対策
- 精神的な原因で見えにくさを感じる場合
遠視の場合
遠視とは、遠くだけでなく近くも見えにくい状態です。
原因として眼球の長さが短いことや、角膜、水晶体の光を曲げる力が弱いことがあげられます。軽度の遠視であれば視力は高いこともあり、特に若い方は自覚症状を感じにくい傾向があります。
視力が1.5であっても日頃から目が疲れやすいと感じている場合、遠視の可能性があるため一度眼科を受診しましょう。メガネやコンタクトレンズを使うことで、目のピントを調節する際に余分な力を使わずにすむため目の疲れを軽減できる場合があります。
乱視の場合
片方の目でものを見た時に焦点が合わず、ものがだぶって見える症状です。軽度の乱視では自覚症状はありませんが、一定以上の乱視では遠くも近くも見えにくくなります。
角膜や水晶体などのカーブが方向によって異なる場合に乱視が生じます。一方向だけ過ごせます強いまたは弱いことで生じる乱視を正乱視といい、多数の方向に複雑にカーブの強弱が入り乱れた乱視を不正乱視といいます。正乱視は円柱レンズを使ったメガネにより矯正され、不正乱視ではコンタクトレンズが使用されます。
最近では手術により治療することもあります。
老眼の場合
老眼とはピントを合わせられる範囲が狭くなったり、ピントが合うのに時間がかかるようになることです。視力が良い人が老眼になった場合は手元がかすみ、見えにくい状態になります。10代後半を境にピントを調整する機能が低下し始めますが、老眼の自覚症状が出てくるのは30代から40代になってからと様々です。また、老眼は視力に関わらず起こります。
老眼を放っておくと眼精疲労の原因になるので、老眼鏡による矯正が推奨されます。同じ老眼鏡であっても、生活スタイルや用途によって最適なレンズは異なります。メガネを作りたい場合は仕事内容や使用する場面を具体的に話した上で、自分に合ったメガネを処方してもらいましょう。
また、老眼が疑われる場合でも、ほかの病気が隠れている場合があります。老眼かなと思っても、自己判断せず一度眼科を受診しましょう。
左右で度数が異なる場合
視力が良くても片目に乱視や近視があり、左右の目で度数やピントの位置に差があるケースではメガネが必要です。屈折の左右差により眼の器質的な病気が無いにも関わらず発育過程で片目が正常な視力を獲得できずにいる状態のことを不同視弱視といいます。
片目の視力は正常に発達しているため自覚症状に乏しく、片目ずつの視力検査や屈折検査で発見されます。左右の視力差を改善するためにメガネを使用することがあります。
治療には必要に応じて、メガネのほかに視力の良い方の目を隠す訓練(健眼遮閉)を行ったり、アトロピンという目薬を使ったりします。
斜視がある場合
通常、人の目は左右で同じところを向いていますが、斜視になると両目で同時に同じ方向を向けません。遠視や眼球を動かすための筋肉の付着部の異常のほか、視力が高くても脳や神経など目以外の病気が原因で斜視が起こることもあります。
斜視を自分で調べることは難しく、眼科で検査を受けて診断されます。斜視は目の向く方向や発症する時期によって複数のタイプに分けられ、原因や発症年齢によって対策が異なる病気です。治療方法には手術や原因となる疾患の治療に加え、メガネによる矯正を行う場合があります。
( 写真出典 : やまぐち眼科 / 斜視 | 診療内容 https://yamaguchi-eye-clinic.com/medical/squint/ )
眩しさを軽減したい場合
視力が良く、普段ものがはっきり見えていても、スマホやパソコンのディスプレイの眩しさが気になる方もいるでしょう。また、レジャーに出かけた際に海面の反射や雪山の眩しさを軽減したい時もあるかもしれません。
一部のメガネ販売店では、偏光レンズや調光レンズなどの特殊なレンズを扱っています。これらのレンズは一部の光を遮り、コントラストを調節して眩しさを軽減します。商品によって用途は異なるため、ご自身のニーズに合わせて使用しましょう。
紫外線対策
紫外線が強い時期や日差しが強い場所で過ごす場合、目の紫外線対策としてメガネを使用することもあります。
紫外線は皮膚だけでなく目にもダメージを与え、白内障を進行させることが知られています。白内障を発症すれば水晶体が白く濁り、現時点で視力が良くても次第にものが見えにくくなってしまいます。
日差しが強い時は日傘や帽子と一緒にUVカットレンズの入ったメガネやサングラスを使用し、目を紫外線から守りましょう。
ほこり、花粉、ウイルス対策
見え方に問題がなくても、ほこりや花粉、ウイルスなどの異物から目を守りたい時にメガネを使用することがあります。ほこりや花粉は目に入るとアレルギーの原因になり、ウイルスが目に入れば感染症のリスクにもつながります。
特に花粉症の方は、花粉の飛散量が多いシーズンだけでもメガネの使用がおすすめです。花粉用のメガネもありますが、通常のメガネを使用するだけでも花粉が目に入りにくくなります。
精神的な原因で見えにくさを感じる場合
目に問題がなくても、ストレスなど精神的な原因により見えにくくなることがあります。これは心因性視力障害といわれ、特に8~12歳の子供によく見られます。
ささいな環境の変化や人間関係がきっかけで起こることもあり、要因は様々です。目には異常がなく一時的な症状で、ほとんどの人は長期的な経過観察で改善します。治療には目薬のほか、本人の希望があれば度のないメガネをかける場合もあります。
視力が良くても眼科の受診が
必要なケースは?
視力が良くても以下のような症状がある場合は、眼科の受診をおすすめします。
- 目の充血
- 目の痛み、痒み
- 見えにくい部分がある
- ものが歪んで見える
- 目がゴロゴロする
- ものがかすんで見える
- 右目と左目で見え方が大きく異なる
- 異常に眩しく感じる
- 最近、急に見えづらく感じる
- 手元が見えづらい
一部の疾患は自覚症状がないまま進行します。早期に発見するためにも、視力に関わらず定期的に眼科で健診を受けましょう。
まとめ
今回は視力1.5の見え方と、視力が良くてもメガネが必要なケースについて解説しました。視力が良くてもほかのところに問題があり、メガネによる矯正が必要な人もいます。見えづらさや目の疲れなど気になる点があれば、一度眼科を受診しましょう。
また、メガネは視力を改善するだけでなく、紫外線カットや眩しさの軽減など様々な働きがあります。ご自身の悩みやニーズに合わせてメガネを選び、より快適な生活を送りましょう。