目の病気
最終更新日:2022.10.04

麦粒腫(ものもらい)とは?原因・治療方法・霰粒腫との違いを分かりやすく解説

この記事の監修者

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

麦粒腫(ものもらい)とは?原因・治療方法・霰粒腫との違いを分かりやすく解説

目次

まぶたやまつ毛の付け根が赤く腫れ、ズキズキとした痛みや異物感が生じることはありませんか。こうした症状は、「麦粒腫(ものもらい)」かもしれません。麦粒腫は繰り返し発症することも多い眼疾患の一つです。

麦粒腫は放っておくと化膿してしまうこともあるため、自然治癒しなければ眼科で対処することが大切です。

この記事では、麦粒腫の原因や症状、治療法などをご紹介します。また、麦粒腫と似ている霰粒腫(さんりゅうしゅ)や区別の難しい腫瘍との違いも併せて参考にしてください。

麦粒腫(ものもらい・めばちこ)とは?どんな症状?

麦粒腫(ものもらい・めばちこ)できる場所と原因

麦粒腫は、目に起こる細菌感染の一種です。地域によっては「ものもらい」や「めばちこ」「めいぼ」とも呼ばれます。

麦粒腫の主な症状は、まぶたの一部の赤い腫れや痛み、痒みです。麦粒腫ができる場所によっては、瞬きのたびに目の表面をこするため、強い違和感や充血を伴います。さらに炎症が強くなると症状も悪化し、化膿して膿が出てくることもあります。

麦粒腫の原因は細菌感染で、いわゆる「汚れ」が目に入って起こります。そのため、基本的に人から人へ感染することはありません。

「外麦粒腫」と「内麦粒腫」のイメージ

麦粒腫は、「外麦粒腫」と「内麦粒腫」の2種類に分類できます。

外麦粒腫は、まつ毛の皮脂腺や汗腺(汗の出る部分)が細菌感染を起こしたものです。
一方で、内麦粒腫は、まぶたの裏にあるマイボーム腺(脂を分泌する腺)に細菌が感染したものです。

内麦粒腫は上下のまぶたの裏側に発症するため、瞬きをしたり目を動かしたりするだけでも、刺激に敏感な角膜をこすります。その結果、外麦粒腫より痛みや異物感が強く現れるのです。

麦粒腫(ものもらい)の
主な原因

麦粒腫は、まつ毛の皮脂腺や汗腺、まぶたのマイボーム腺が細菌感染を起こすことで発症します。
麦粒腫の原因となる細菌は、黄色ブドウ球菌など皮膚や髪に常在している菌です。

清潔でない手で目をこすったり、手洗いが不十分な状態でコンタクトレンズを装用したりすると細菌の感染を許してしまいます。そのほか、濃いアイメイクがマイボーム腺を塞ぎ、マイボーム腺内の脂が炎症を起こして麦粒腫が発生する可能性もあるのです。

また、皮膚の常在菌が原因であるため、ストレスや風邪などで免疫力が低下していると細菌感染しやすくなります。

麦粒腫(ものもらい)の
治療方法

麦粒腫は自然に治ることも多く、特別な治療をしなくても、目の周りを清潔にしていれば数日で治るケースもあります。

しかし、しばらく置いても治る気配がない、あるいは症状が悪化するようなら、抗菌点眼で対処することになります。抗菌点眼はドラッグストアでも購入できるため「眼科に行くよりまずは市販の目薬で」と考える人も多いでしょう。

市販の点眼薬は眼科の処方薬と異なり、効能が弱く、防腐剤が入っていることがあります。市販の点眼薬でも治らなければ、すみやかに眼科を受診してください。

眼科では、症状がひどい場合に抗菌の眼軟膏や抗生物質の内服薬を処方されることがあります。軟膏は点眼薬と違い、「つけるのに失敗した」「流れ出てしまった」ということがありません。より高い抗菌効果を期待できます。一方で、つける場所によっては目の表面にも付着するため、膜が張ったような見え方になることもあります。

目をこすらないようにしましょう。

麦粒腫の早期回復には、目を清潔に保つことが大切です。痒みや違和感が気になっても、目をこすらないようにしましょう。
前髪が目やまぶたにかかっている場合は、ヘアピンで留めるなど工夫してください。完治するまではアイメイクをしたりコンタクトレンズを使用したりすることも避けた方がよいでしょう。

化膿が進んでいる場合は?

化膿が進むと、自然と腫れた部分が破れて膿が出ることがあります。そうではない場合には患部を切開して膿を出す処置が必要です。
切開方法は麦粒腫の位置や大きさによって異なりますが、針やメスを使って小さな傷口を作り、そこから膿を排出するのが一般的です。
炎症がひどい場合はすぐに切開できないため、腫れが引いてから治療を行います。

自分で潰して膿を出すことは非常に危険ですので、必ず眼科を受診しましょう。

麦粒腫と似ている霰粒腫とは?

麦粒腫と似ている霰粒腫とは?

霰粒腫は麦粒腫と症状がよく似ており、どちらも「ものもらい」と呼ばれるため、混同されやすい目の病気です。
麦粒腫は細菌感染によって起こる炎症ですが、霰粒腫は細菌感染を伴わない炎症性疾患です。

霰粒腫は、まぶたにあるマイボーム腺に何らかの原因で皮脂が詰まってしまい、「肉芽腫」と呼ばれるできものが発生している状態です。肉芽腫が発生すると慢性的な炎症が起こり、腫れや異物感などの症状が現れるようになります。

霰粒腫について詳しく知りたい方は、「霰粒腫(さんりゅうしゅ)とは?麦粒腫(ばくりゅうしゅ)との違いや治療法について解説」をご覧ください。

霰粒腫の主な症状

霰粒腫のできた際のイメージ

霰粒腫の主な症状は、まぶたの腫れや異物感です。まぶたにゴロゴロとしたしこりができますが、痛みはほとんどありません。徐々にしこりが大きくなると、角膜を圧迫したり視界の邪魔になったりして、見え方の質を低下させることがあります。

霰粒腫によってマイボーム腺が詰まると細菌感染が起こりやすくなり、内麦粒腫を併発する可能性もあります。

霰粒腫の治療方法

霰粒腫は、肉芽腫が小さければ自然に吸収されて消失するため、数週間は経過観察するようなケースもあります。しかし、肉芽腫が大きい場合には、肉芽腫を摘出する手術もしくは、肉芽腫の中に副腎皮質ステロイド薬を注射する治療が必要です。

また、霰粒腫から細菌感染を起こして炎症がある場合には、抗菌点眼薬や抗炎症薬を併用し、まずは炎症を抑えます。その後、手術で摘出するのか保存的に経過を見るのか医師が判断します。

最も気をつけたいのは「霰粒腫だと思っていたら悪性腫瘍だった」という事態です。霰粒腫のようなしこりが繰り返し発生する、あるいは高齢者によく発生する場合、悪性腫瘍の疑いがあります。

悪性腫瘍かどうか区別するためには、組織を採取して専門機関で調べてもらう必要があります。悪性腫瘍は命に関わることもあるため、まぶたのできものは自己判断せずに、必ず眼科で相談しましょう。

悪性腫瘍って何?
良性腫瘍との違い

腫瘍は良性と悪性の2種類に分けることができます。

悪性腫瘍はいわゆる「がん」のことを指すため、早期発見・早期治療を行うことが大切です。目の良性腫瘍と悪性腫瘍の特徴や原因についてご紹介します。

良性腫瘍の特徴

良性腫瘍の特徴

腫瘍とは、細胞の固まりです。良性腫瘍は周りの組織を押しのけるようにしながら増える「できもの」のことを指し、転移したり、ほかの細胞を壊しながら広がったりはしません。 
良性腫瘍には麦粒腫や霰粒腫、母斑(ほくろ)や脂漏性角化症(加齢性のイボ)などがあります。腫瘍の色は白色や赤色であることが多く、細胞内にメラニンを含んでいれば、褐色になることもあります。

良性腫瘍はほかの細胞に害を及ぼすことがないため、急を要する治療は不要です。多くは経過観察で様子を見ますが、外見上気になるようであれば切除する手術を行ないます。

悪性腫瘍の特徴

悪性腫瘍の特徴

悪性腫瘍とは「がん」のことを指し、目にも発症します。良性腫瘍とは異なり、悪性腫瘍の場合は放置すると重要な臓器へ飛んだり(転移)、周囲の細胞を壊して広がったり(浸潤)してしまいます。

目の悪性腫瘍が発生する場所は、まぶたや眼内、眼窩、結膜です。

まぶたに発症する悪性腫瘍は最も多く、基底細胞がん・脂腺がん・扁平上皮がんが挙げられます。特に、霰粒腫と非常によく似ている脂腺がんは、リンパ節に転移しやすいことで知られています。霰粒腫かと思ったら脂腺がんだったということにならないよう、まぶたの違和感があれば早めに眼科に行きましょう。

いずれにしても悪性腫瘍は命に関わる危険があるため、早期発見して治療をすることが大切です。

悪性腫瘍の原因と症状

悪性腫瘍は高齢者に見られることが多いですが、眼部腫瘍は乳幼児から若年層でもかかります。
目に悪性腫瘍が発生する原因は、喫煙や飲酒などの生活習慣や感染、遺伝などが一般的です。例えば小児に発生する網膜芽細胞腫は遺伝子異常が関係していると言われています。

目の悪性腫瘍の症状は、まぶたの腫れや目の痛み、視力低下などで、腫瘍が眼窩や副鼻腔にあれば眼球が飛び出たり、眼内にあれば瞳の色が白くなったりします。

目の悪性腫瘍をご存知ない方も多いため、良性腫瘍だと自己判断されてしまうケースも少なくありません。しかし、放置してしまうと悪性腫瘍は転移や浸潤して体にさまざまな悪影響を及ぼすことになります。眼球を失う、視力が戻らない、あるいは命に関わるといった結果をもたらすため、自己判断せずに眼科など医療機関で検査することをおすすめします。

麦粒腫の予防法は?

麦粒腫は日常の心がけにより予防できます。麦粒腫が繰り返し起こらないように、手指の清潔を心掛け、免疫力を高める工夫をしましょう。

方法① 不潔な手で目を触らない

こまめに手を洗い、不潔な手で目をこすらないようにしましょう。

麦粒腫は手指から細菌が目に入ってしまい、細菌感染から発生します。こまめに手を洗い、不潔な手で目をこすらないようにしましょう。お子さんの場合は外遊び後の手洗いを徹底し、習慣づけることで感染を防ぎやすくなります。

また、コンタクトレンズの脱着時には必ず手を洗うようにしてください。汚い手のままコンタクトレンズに触れると、細菌だけでなくアカントアメーバなどの微生物感染を起こし、重篤な視力障害が起こる可能性もあります。

方法② 健康体を維持する

健康体を維持する

健康で免疫機能が正常な場合、免疫が細菌と戦ってくれるため、目に細菌が侵入しても細菌感染は起こりづらいです。

しかし、免疫機能が低下していると感染が起こりやすくなってしまいます。高齢者や病気の人だけではなく、ストレスや疲労が溜まっている人は注意が必要です。日頃から睡眠や食事をしっかり管理し、免疫を低下させないようにしましょう。

方法③ アイメイクに注意する

アイメイクの際には注意する

まつ毛の内側までアイメイクをすると、マイボーム腺が塞がれて麦粒腫や霰粒腫が起こりやすくなります。また、メイクを綺麗に落とさずに寝てしまうことも麦粒腫を引き起こす原因です。目の周りは清潔を保つことを日頃から心掛けましょう。

まつ毛エクステもマイボーム腺を塞ぎやすくなり、目の清潔が保ちにくくなるので注意が必要です。

まとめ

今回は、麦粒腫(ものもらい)についてご紹介しました。麦粒腫は目の周りが不衛生な状態でできやすい良性腫瘍です。麦粒腫は自然治癒することも多い眼疾患の一つですが、悪化すると痛みが強くなり、治るまでの時間も要するため、かなりのストレスとなります。市販薬では治りきらないこともあるため、早めの眼科受診が必要です。
今回の記事を参考にして対処や予防を行ない、目の健康を維持しましょう。

メガネ、目の情報は眼とメガネの情報室 みるラボ

眼とメガネの情報室 みるラボでは、メガネや目に関するさまざまな情報をご紹介しています。ドライアイ眼精疲労など身近な目の病気から、加齢黄斑変性などあまり聞きなれない病気まで解説しています。
今回、記事内で簡単にご紹介した霰粒腫については「霰粒腫(さんりゅうしゅ)とは?麦粒腫(ばくりゅうしゅ)との違いや治療法について解説」で詳しく解説しているので、そちらも併せてご覧ください。
気になる症状があれば、眼とメガネの情報室 みるラボをチェックしてみましょう。

監修者プロフィール

内野 美樹

ケイシン五反田アイクリニック 院長

HP:https://www.keishin-eye.com/

山梨医科大学 医学部卒業後、慶應義塾大学 眼科学教室入局。米・ハーバード大学 公衆衛生学修士取得。慶應義塾大学 眼科学教室 特任講師。
眼科のなかでも「ドライアイ」を中心にした角膜の疾患を専門とする。日本におけるドライアイについての疫学研究の第一人者であり、近年増えている長時間のパソコン作業によるVDT(Visual Display Terminal)症候群などの研究を行っており、日本のドライアイの有病率、パソコン使用時間とドライアイとの関係について世界で初めて証明した。ドライアイにつながる危険因子を研究し、ドライアイ診断に関する国際的な基準づくりにも携わる。
予防医療の啓蒙活動にも力を入れ、『しまじろうとEye Care Book』幼稚園や保育園の先生の目の教科書となるような『子どもの目見守りサポートBook』を作成。
目の健康について学び、セルフケアができるよう、『ナカナイ涙』などのWebサイトの監修も手掛ける。

【所属学会】
日本眼科学会 / 日本眼科医会 / 日本角膜学会 / 小児眼科学会 / 日本弱視斜視学会 / ドライアイ研究会

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