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健康診断などで視力検査を受ける機会は多いものの、眼底検査や眼圧検査を受けたことがある方は少ないのではないでしょうか?
「視力検査はいつもA判定だし、自分の目は健康のはず」と思っている方もいらっしゃるかもしれませんが、視力検査で確認できる情報は、目に関する情報の一部にすぎません。目の病気には加齢とともに発症のリスクが高まるものが多いため、特に40歳を過ぎた人は、視力検査以外にも「眼底検査」や「眼圧検査」といった専門的な検査を追加で受けるのがおすすめです。
この記事では、40歳を過ぎたら眼底検査や眼圧検査を受けた方がいい理由や、40歳以降に気を付けたい目の病気について解説します。
40歳を過ぎたら眼底検査を
定期的に受けよう
何らかの原因で視力や視野といった目の機能に障害が起こり、日常生活に支障が出ている状態を「視覚障害」といいます。下のグラフは、日本の各年齢層において、視覚障害を持つ人の人数をグラフで示したものです。このグラフから、高齢になればなるほど視覚障害を持つ人の割合が高くなっていることが分かります。
(グラフ出典:平成18年度身体障害児・者実態調査結果【厚生労働省】より引用し作図)
視覚障害の原因となる病気
一言で視覚障害といっても、視覚障害の背景にある病気は人によってさまざまです。日本で視覚障害の原因となっている病気を、視覚障害を持つ人に占める割合の多い順に、ランキング形式で紹介します。
第1位 緑内障
第2位 網膜色素変性症
第3位 糖尿病網膜症
第4位 黄斑変性
緑内障は、男女どちらの性別でも共通して最多となっています。緑内障は、適切な治療が行われずに病状が悪化すると、最悪の場合は失明してしまう可能性のある病気です。患者数が多いのに加え、初期には自覚症状がないことも多く、病状が進んでから発見されることも多いため、視覚障害の原因として最も多くなっています。
(出典:岡山大学「2019年視覚障害の原因疾患の全国調査」)
白内障や網膜剥離も注意
4位までのランキングには入らないものの、「白内障」や「網膜剥離」といった病気が視覚障害の原因となることもあります。視覚障害を起こす病気のなかには年齢とともに発症リスクが上昇するものが多くあり、白内障や網膜剥離もそのひとつです。たとえば、緑内障や白内障は40代以降に、黄斑変性や網膜剥離は50代以降に少しずつ発症リスクが上昇することが知られています。そのため、高齢になればなるほど視覚障害を持つ人の割合が高くなっているというわけです。
40歳から発症のリスクがある
病気とは?
緑内障
緑内障では、目の内側から外側へ向けてかかる圧力である「眼圧」が高まることで、目から入手した情報を脳へ伝えるための「視神経」が圧迫され、視野が欠ける、部分的に見えなくなるといった症状が出ます。発症してすぐは、少し視野が狭くなったとしても自分では気づかないことも多く、自覚症状が出たときには末期の状態というケースも珍しくありません。
白内障
白内障は、目の中でレンズの役割を持つ「水晶体」が白く濁り、ものがかすんだり、二重に見えたり、まぶしさを感じやすくなったり、視力が低下したりする病気です。主な原因は加齢で、老化現象の一つとされています。病気の進行具合は個人差が大きく、早い人では40代から水晶体が濁り始めることがあります。
黄斑変性
網膜の中心部分にある「黄斑」が変性することで、視野の中心が歪んで見えたり、暗く見えたりする病気です。黄斑は視力を保つために重要な役割を担っているため、病気が進行すると徐々に視力が低下し、回復が難しくなります。黄斑変性の原因はいくつかありますが、特に加齢が原因で起こる黄斑変性のことを「加齢黄斑変性」といい、黄斑変性の大多数を占めています。
網膜剥離
網膜剥離は、何らかの原因で目の中にある「網膜」が剥がれて孔(あな)が開くことで、視野が欠ける、視力が低下するといった症状が出る病気です。特に20代と50代の人に多い病気で、20代など若い人で起こる網膜剝離は強い近視が原因であることが多いのに対し、50代以降で起こる網膜剝離は加齢が主な原因とされています。
病気の早期発見に大切な検査
人は、普段の生活の中で入手する情報の大半を視覚から得ています。そのため、年齢を重ねても生活の質を高く保つためには、視覚障害の原因となりやすい病気を早期発見し、適切な治療を受け、快適な視力や視野を維持していくことが重要です。
健康診断で実施される目の検査は、一般的に視力を確認するための「視力検査」のみ行われます。しかし、目の病気を早期発見するためには、視力検査だけでは不十分です。日常生活で少しでも気になる症状があるときは、早めに眼科を受診するよう心がけましょう。
また、目の病気のリスクが上がり始める40歳以降は特に、「眼底検査」や「眼圧検査」といった検査を定期的に受けるのがおすすめです。これらの検査は眼科で受けるほか、健康診断のオプションや人間ドックなどで受けると良いでしょう。
眼底検査とは?
眼底検査は、眼底カメラや眼底鏡で眼の奥にある血管、網膜、視神経などを見ることで、病気の兆候を確認する検査です。緑内障や黄斑変性、糖尿病網膜症といった視覚障害の原因にもなりうる病気を早期に発見するのに役立ちます。
検査の内容・目的
- 眼底鏡や眼底カメラを使い、網膜や眼底にある血管、視神経などの状態を確認し、病気を早期に発見する
検査で何が分かるか
- 網膜の状態
- 眼底出血があるか
- 視神経の状態
- 高血圧、糖尿病、高脂血症などが原因で起こる血管の異常(動脈硬化)
発見できる主な病気
- 緑内障
- 黄斑変性
- 糖尿病網膜症
- 網膜剥離
- 網膜血管の動脈硬化や閉塞
検査のメリット
- 自覚症状のない初期段階で病気を早期発見できる
- 定期的に検査を受けることで病気の進行状況を確認できる
- 検査に痛みがない
検査のデメリット
- 瞳孔を開く目薬(散瞳薬)を使用して検査する場合、検査に時間がかかる
- 散瞳薬を使用して検査する場合、検査後しばらくは見えにくい状態が続き、車や自転車の運転ができない
- 散瞳薬の副作用が出る可能性がある
眼圧検査とは?
眼圧は、眼圧検査によって測定できます。定期的に眼圧を測定することで、緑内障などの眼圧が関係する病気の早期発見につながります。
検査の内容・目的
- 目の表面に空気を吹きつけて眼圧を測定し、病気を早期に発見する
検査で何が分かるか
- 眼圧の数値
発見できる主な病気
- 網膜剥離
- 緑内障
- 高眼圧症
検査のメリット
- 自覚症状のない初期の段階で病気を発見できる
- 短時間で検査が終わり、その場で数値を確認できる
- 定期的に検査を受けることで、病気の進行状況を確認できる
- 薬を使わずに検査できる
- 検査に痛みがない
- 検査後すぐにいつも通りの生活を送ることができる
検査のデメリット
- 発見できる病気が限定的
まとめ
40歳を過ぎたら眼底検査や眼圧検査を受けた方がいい理由や、気を付けたい目の病気について解説しました。
加齢に伴って年々気になるお肌のゆらぎや、髪の悩み、更年期障害など、目に見える不調や劣化は意識しても、「目の老化」までは気にしない人も多いのではないでしょうか?
目の病気の中には、緑内障、白内障、黄斑変性、網膜剥離のように、年齢とともに発症リスクが高まるものが多くあります。発症してすぐには自覚症状が出にくい病気も多く、自分では発症に気づかないまま病状が進行してしまうケースもあります。
読書や料理、手芸、インターネット閲覧、映画やドラマの鑑賞など、目を使った趣味を長く楽しむためには、健康な目が欠かせません。40歳を過ぎたら眼底検査や眼圧検査を定期的に受け、病気を早期発見・早期治療することで、目のトラブルを防ぎましょう。