目の病気
公開日:2022.06.02 / 最終更新日:2022.10.04

網膜色素変性症の症状や原因・遺伝率・治療方法を解説

この記事の監修者

原 修哉

原眼科クリニック 院長

網膜色素変性症の症状や原因・遺伝率・治療方法を解説

目次

網膜色素変性症は暗闇でものが見えにくくなったり(夜盲)、見える範囲(視野)が狭くなったりする病気です。日本における中途失明原因の上位であり、厚生労働省からも難病指定されているため「一度発病したら失明してしまう病気」だと思っている方もいるでしょう。
しかし、網膜色素変性症の進行は非常にゆっくりであり、発病したからといって必ずしも光を失うわけではありません。
この記事では、網膜色素変性症について原因や遺伝率、治療方法などを詳しく解説しています。

網膜色素変性症とは

網膜色素変性症とは、目の中で光を感じる組織(カメラに例えるとフィルムの役割を果たす部分)である「網膜」に異常が見られる遺伝性の病気です。厚生労働省から難病指定されています。発症年齢には個人差がありますが、一般的には20〜40代での発症が多いようです。

網膜色素変性症とは

網膜には多くの細胞がありますが、網膜色素変性症では視細胞と呼ばれる光を感じる細胞が障害されます。視細胞には錐体細胞と杆体細胞の2種類があり、錐体細胞は黄斑部と呼ばれる網膜の中心に多く集まって視力や色覚を担っています。

一方で杆体細胞は網膜の周辺に分布しており、周辺の視野や暗闇で光を感じる働きを担います。

網膜色素変性症では、まず杆体細胞から先に障害されるため夜盲の症状が先に現れることが多く、進行するにつれて周辺の視野が狭くなります。さらに進行すると錐体細胞が障害されて視力障害が起こるのです。

網膜色素変性症の主な症状

網膜色素変性症の主な症状は、夜間や暗闇でものが見えにくくなる「夜盲(鳥目)」です。その後、病気の進行と共に見える範囲が狭くなる「視野狭窄」や視力低下が起こります。

近年は夜でも明るい場所が多いため、夜盲は自覚せずに視野狭窄の症状で気付く人も増えています。視野が狭くなると足元が見えずつまづきやすくなったり、人混みで人にぶつかりやすくなったりします。

網膜色素変性症の視野

網膜色素変性症の視野変化のイメージ

網膜色素変性症では、見える範囲が周辺から中心に向かって狭くなる「視野狭窄」が起こります。図①は正常視野のイメージですが進行すると図②のように周辺部分が見えにくくなり、中心部10度くらいの視野(図③)になると視力も低下します。

網膜色素変性症が
悪化した場合の影響

網膜色素変性症は悪化するにつれて視野は狭くなり、中心部10度以内が障害されると視力が低下して最終的には光を失うこともあります。
網膜色素変性症が日本の失明原因においても常に上位であることは事実ですが、発病したからと言って必ずしも光を失うわけではありません。症状の進行は比較的ゆっくりで、数年単位で進行していきます。
視野が中心部10度以内になってからはさらにゆっくり進行するため、なかには80歳を過ぎてもある程度良好な視力を保っているケースもあります。

網膜色素変性症の原因

網膜色素変性症の原因は視細胞や網膜色素上皮細胞に存在する遺伝子の異常と言われています。
網膜色素変性症の原因となる遺伝子として、最も多いのは常染色体劣性遺伝で全体の35%を占めます。親子間ではなく兄弟姉妹間に同じ病気がある場合に疑われ、血族結婚などの場合は確率が上がります。
続いて多いのは常染色体優性遺伝です。全体の10%を占め、親子間で同じ病気がある場合に疑われます。両親からの遺伝子の内、どちらか一つにある変化によって起こります。
最も少ないのはX染色体劣性遺伝(X連鎖性遺伝)で、約5%と言われています。通常は男性に発症し、祖父が同じ病気を持っています。その娘(患者の母)は保因者となりますが、保因者は遺伝子異常は持っているものの発症せず自覚症状はありません。

網膜色素変性症と遺伝

網膜色素変性症は遺伝性の病気ですが、親子間で明らかな遺伝傾向が認められるのは全体の約半数で、残りの半数は遺伝傾向が証明されていません。遺伝形式も25%の確率で遺伝するものから50%の確率で遺伝するもの、特殊な遺伝形式のものまでさまざまです。

また、網膜色素変性症の発症率は人口あたり4,000~8,000人に1人と言われています。

網膜色素変性症の検査方法

網膜色素変性症に対しては、主に以下の検査が行われます。

視力検査

視力検査イメージ

網膜色素変性症では杆体細胞から障害されるため、錐体細胞の多く集まる中心部(黄斑部)の機能は初期~中期では維持されます。そのため、比較的病気が進行している場合でも視力は良好である場合が多いです。

眼底検査

眼底検査では写真のように特徴的な色素沈着や視神経の萎縮、網膜血管が細くなるなどの初見が見られます。

正常眼底

(画像出典:網膜色素変性症 – 福永眼科医院 / 網膜色素変性症 http://www.fukunaga-ganka.jp/15295681203864

網膜色素変性症の眼底

(画像出典:網膜色素変性症 – 福永眼科医院 / 網膜色素変性症 http://www.fukunaga-ganka.jp/15295681203864

視野検査

視野検査

見える範囲(視野)の広さを調べて視野狭窄の程度を判断する検査です。病気の進行具合を把握する上で重要な検査です。

網膜電図(ERG)

光の刺激に対する網膜の電気信号を調べる検査で、診断の確定に用いられます。網膜色素変性症では初期から電位の低下が見られ、進行と共に消失します。

網膜色素変性症の治療方法

網膜色素変性症の治療方法や進行を確実に止める方法は、残念ながらまだ確立されていません。ここからは、網膜色素変性症において現在行われている対処的な治療方法を紹介します。

また、網膜色素変性症の人は白内障緑内障を併発しやすいと言われています。中でも白内障は手術によって治療可能なため、視力低下に影響している場合は改善が期待できます。

強い光を避ける

強い光を避ける

視細胞は強い光を長時間受け続けると、寿命が短くなることが動物実験で分かっています。そのため強い光を避けることで視細胞を守り、症状の進行を遅らせる可能性が期待できます。

普段からサングラスをかけるようにすると光から目を守るだけでなく、病気によるまぶしさも軽減できるためおすすめです。

薬を処方してもらう

薬を処方してもらう

対処療法として、医師から薬が処方される場合があります。

ビタミンAや暗順応改善薬は症状の進行を遅らせると言われていますが、その効果は明らかではありません。また、網膜循環改善薬によって視野が少し広がったり明るくなったりする場合もありますが、すべての人に当てはまるわけではありません。

ロービジョンケア

遮光眼鏡

ロービジョンケアとは日常生活において視力や視野が不十分な場合、補助具などを利用しながら残された機能(視力や視野)を最大限に使ってより良く見えるように工夫することです。

具体的には文字を読みやすくするための拡大鏡や、まぶしさの要因となる波長をカットする特殊なサングラス(遮光眼鏡)などの処方を医師の指示のもとで行います。

視力や視野などの視覚障害を持つ場合は、これらの補助具を購入する際に費用の一部として公的な補助を受けられる制度があります。
例えば遮光眼鏡の場合、補助が受けられる対象は以下の通りです。

  • 羞明(まぶしさ)を来していること
  • 羞明の軽減に、眼鏡・遮光用の装用より優先される治療法がないこと
  • 補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定、処方であること

補助金額は自治体によって異なるため、詳しくは最寄りの福祉事務局にご相談ください。

網膜色素変性症の治療後

網膜色素変性症の進行はとてもゆっくりですが、少しずつ悪化していきます。定期的な検査や診察を欠かさずに、自身の病状を経過観察することがとても大切です。

根本的な治療は確立されていませんが、悲観的になったり慌てたりする必要はありません。視力や視野から病気の進行具合をしっかりと把握しましょう。そこから将来の見え方や状況を予測して準備ができれば、残された視機能で工夫しながら日常生活や社会生活を送ることができます。

まとめ

網膜色素変性症は暗いところで見えにくくなったり、視野が狭くなったりといった症状が現れる病気です。原因は視細胞などに存在する遺伝子の異常と言われており、多くは遺伝性で起こります。
根本的な治療方法はまだ確立されていませんが、進行スピードはとてもゆっくりで高齢になっても実用的な視力を保つこともあります。定期検診を欠かさずに自身の病状を把握することが大切です。
また「夜間や暗闇で見えにくい」「視野が狭くなった気がする」などという症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

目の病気を知るなら眼とメガネの情報室 みるラボ

眼とメガネの情報室 みるラボでは「見る」ことに関してさまざまな悩みを持つ方へ向けて、情報や解決策などを発信しているサイトです。目の病気をはじめ、視力検査やメガネなどについての記事を数多く掲載しています。「見る」ことに関する疑問を解決するためにぜひご活用ください。

網膜色素変性症に合併しやすい白内障緑内障、強い光を避けるためのサングラス(偏光レンズ調光レンズ)やカラーレンズについて詳しくまとめた記事もあります。本記事と併せて確認することでより理解が深まるはずです。

監修者プロフィール

原 修哉

原眼科クリニック 院長

HP:https://www.haraganka.jp/

名古屋大学医学部卒業後、名古屋市の中京病院へ入局し13年勤務。その期間中に、ハイデルベルク大学(ドイツ)へ留学。
大雄会第一病院 診療部長として7年の勤務を通じて、地域の重症例、難疾患、専門性の高い疾患などの医療に携わり、白内障手術、緑内障手術、角膜移植、屈折矯正手術、結膜手術など10,000件以上執刀。
現在は、原眼科クリニックを開業し、地域住民のかかりつけ医として地域医療にも貢献している。

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