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モノを見るということは無意識にする行動で、症状が出て初めて気になってくるものです。
最近「モノが見えづらくなった」「眼精疲労が激しい」という方や「子供が読書している時の目線が少し変」と思う親御様はいらっしゃいませんか?
その症状は、疲れ目やクセではなく「両眼視(りょうがんし)」の機能に問題があることが原因かもしれません。
人の基本的な視力は9歳までに成熟すると言われており、幼少期に起きた両眼視の症状については早期治療が必要です。
この記事では、両眼視とはなにか、両眼視機能検査の内容と検査するメリット、自分でできるチェック方法などについて解説します。
当てはまる症状があるかぜひチェックしてみてください。
両眼視機能検査とは?
両眼視機能検査では、一般の視力検査とは違い、モノとの距離・高さ・位置などをどのように見ているのか、両目や片目で見た場合などをチェックしていきます。細かく検査すると、そのチェック項目は約20種類に及びます。
メガネやコンタクトレンズを装着し、片目ずつの視力検査では問題がないのに「モノが二重に見える」といった症状が改善しない場合に追加検査として行います。最近では一般の視力検査とともに両眼視機能検査をすることも増えてきています。
では、両眼視機能検査をすることでどんなメリットがあるのでしょうか?
両眼視機能を検査するメリット
両眼視機能検査をすることで得られるメリットは3つあります。
幼少期に早期発見で機能改善の可能性がある
幼少期に両眼視の機能に症状がある場合は、学習・運動など学校や生活環境の中でさまざまな問題が出てくる可能性があります。
特に9歳まではモノを見る機能が成熟していないため、早期発見することで機能訓練によって改善や正常な状態に近づけることができます。
社会生活への支障や身体症状の改善の可能性がある
成人後に両眼視の機能に症状が出た場合、機能そのものを元に戻すことは難しくなります。
しかし、モノが見えにくいことで生じる仕事や生活への支障を減らしたり、眼精疲労・肩こり・頭痛といった身体的な症状を改善することができます。
他の病気の早期発見と治療ができる
「モノが見えにくい」「二重に見える」といった症状は、視力の低下によるものだけではありません。
若年性の白内障や緑内障といった目の病気や、脳腫瘍や脳梗塞といった頭の病気によって見え方に異常が起きている場合に、早期発見・治療をすることができます。
このように検査を受けることで、症状が起きている原因を突き止め、早く対処することができます。
両眼視機能検査の具体的な内容を解説します。
どんな検査をするの?
両眼視機能検査の方法
目の検査と聞くと「一体どんなことをするんだろう?」と気になりますよね。ここでは、両眼視機能検査の方法や一般の視力検査との違いについて解説します。
まず、両眼視機能検査は何を検査するのか見ていきましょう。
( 画像出典:木村メガネ / 両眼視検査 https://kimuramegane.com/page1.html )
左右の目の視線のズレを検査
以下の項目をチェックしながら、右目と左目それぞれの動きの検査を行います。
- 利き目がどちらの目なのか
- 距離の違いによって目の向きがどのように変わるか
- 両目の動きが連動しているか
- 水平・垂直方向を見た時に動きに違いはあるか
- 距離感が違うものを見る時のピントの合わせ方に違いはあるか
目の動きと顔の動きの関係性の検査
モノを見る時に、顔が水平になっているか(傾いていないか)を検査します。
偏光レンズを使った見え方の検査
偏光レンズ(光が屈折して目の中に入ってくるようにつくられているレンズ)を使用した検査
- モノを見る時の両目の動きはどのようになっているか
- コの字型をしたマークを見て、左右差がないか
- 距離感の違うモノを見て、それぞれの遠近感を確認できるか
このように両眼視機能検査は、一般の視力検査とは内容が異なります。
一般の視力検査では近視・遠視・乱視など、度数や目の表面の湾曲・目の中のレンズの役割を担っている水晶体が光を通す角度などを検査します。この検査によりメガネやコンタクトレンズを使った視力の調整が必要か、視力を調整するために度数の調整をどのくらいするか、などが分かります。
しかし、一般の視力検査だけではモノを見る時の距離感・立体感や、目の動きなどを測定することができません。両眼視機能検査は、この一般の視力検査では分からない部分を検査しているのです。
また、一般の視力検査や両眼視機能検査の他にも、視力の検査方法がありますのでご紹介します。
両眼開放屈折検査と
両眼視機能検査の違い
両目を開けた状態で行う検査には、両眼視機能検査の他に「両眼視開放屈折検査(りょうがんしかいほうくっせつけんさ)」があります。
両眼視機能検査
両眼視機能検査は目の動きやモノの距離感・立体感など「両目でモノを見た時に頭の中でどのように認識しているかが分かる検査」です。一方、両眼視開放屈折検査は「メガネやコンタクトレンズで調整する度数がより正確に分かる検査」です。
両眼視開放屈折検査
両眼視開放屈折検査は片目ずつ測定する一般的な視力検査とは違い、両目を開けた状態で行う検査です。この検査のメリットは、両目を開けた状態で検査することでより日常的な視界を再現できるという点です。
片目ずつ行う視力検査で「近視」の結果が出ても、両眼視開放屈折検査を行うと「遠視」ということがあります。「視界がぼやける」という目の症状は同じでも、原因が全く違うことがあるのです。この検査を行うことで、より正確に視力を測定することができます。
同じ視力の検査という分類でも、検査で確認したい見え方に違いがあります。
こんなに視力検査の種類があると「検査をしてもらうのが億劫」という方もいらっしゃるかもしれません。次に、ご自宅で簡単にチェックできる方法をご紹介します。
自分で両眼視機能検査を
する方法
両眼視の機能が低下しているかどうか、自分でチェックしてみましょう。
身体に出ている症状でチェック
身体に出ている症状から、自分で両眼視機能検査をすることができます。以下の症状について自分に当てはまるものがあるか確認しましょう。
- 写真に写っている姿を見ると顔がいつも傾いている
- 慢性的な眼精疲労・肩こり・頭痛がある
- 人混みに出ると車酔いのような症状が出る
- 物にぶつかりやすい
- 既往歴に脳に障害が出るような病気や事故がある
モノの見え方でチェック
以下のようなモノの見え方がある方は注意しましょう。
- モノが二重に見える(文字・時計・道路のセンターライン・月など)
- 読書すると字がちらついて見えたり、行を間違えることがある
- モノとの距離感がつかみにくい(取りそこなう・ボールを使ったスポーツが苦手など)
他の人にチェックしてもらう
なかなか自分では分かりにくいという方は、他の人にチェックしてもらうという方法もあります。
両目を開けた状態で上下・左右・斜めなど、対象物を動かしながら見ていきます。この時に左右の目が連動して動いているかなど、目の動きを他の人にチェックしてもらいましょう。
チェックで該当する項目があった方は、両眼視機能検査を受けてみることをおすすめします。
両眼視を矯正する
「プリズムメガネ」が便利?
もし両眼視機能に症状があると分かった場合は、「プリズムメガネ」という特殊なレンズを使用して眼位矯正を行います。プリズムメガネとはどういうものか、使うことで得られるメリットについて解説します。
プリズムメガネとは
両眼視を矯正するメガネは「プリズムメガネ」や「深視力メガネ」などと呼ばれています。
近視や遠視のメガネに使用されているレンズは凹凸の形をしています。一方、プリズムメガネのレンズは三角形に近い形をしています。この独特の形によって目に入ってくる光の角度を変え、モノを見えやすくしているのです。
( 写真出典 : やまぐち眼科 / 斜視 | 診療内容 https://yamaguchi-eye-clinic.com/medical/squint/ )
プリズムメガネのメリット
両眼視に症状がある場合、矯正しなければ常にズレた状態でモノを見ていることになります。そのような状態では、お子様の勉強・車の運転・日常の生活に支障が出たり、眼精疲労・肩こり・頭痛など身体的な症状が出てくることがあります。
プリズムメガネを使って見え方を変えることで、これらの問題・症状の改善が期待できます。
また、プリズムメガネを使い続けることによって、目を動かす筋肉をトレーニングする事も可能になります。
まとめ
今回は両眼視とはなにか、両眼視機能検査の内容と検査するメリット、自分でできるチェック方法などについて解説しました。
両眼視が私たちの生活の中でとても大切であることが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
慢性的な眼精疲労や肩こりなどを抱えている方や、お子様の視力について気になる親御様は、両眼視機能検査を受けてみることで解決につながるかもしれません。
両眼視機能検査は「視能訓練士」がいる眼科にて行ってください。
メガネ、目の情報は眼とメガネの情報室 みるラボ
眼とメガネの情報室 みるラボは「見る」についての悩みを持っている方に向けて、メガネ・コンタクトレンズをはじめ目の病気・目の悩みなどの情報や解決策をご紹介しているサイトです。
近視や乱視、網膜剥離や緑内障といった両眼視機能に関係する目の症状や病気について、詳しくご紹介している記事もあります。本記事とともに合わせてお読みいただくことで、よりご理解いただけるはずです。